表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

82/188

75,この世界は理不尽で回っている。

 


 ──阿木組の皆さんの視点──


 組長の阿木、討ち死に。


 阿木組の組員である塚元は、気づけば叫んでいた。


「阿木のオヤジ~!!」


 フロアボス格のモンスターさえも楽々と殴り殺していた阿木が、まさかこんな女に負けるなんて。


 すると阿木組の若頭、相島が前に出る。


「おい塚元ぁ、こんなことで動揺してんじゃねぇ! 阿木のオヤジに笑われんぞ!」


「あ、相島の兄貴……」


「オヤジの仇は、オレが討ったる!!」


 塚元はハッとした。そうだ。阿木組はオヤジだけの組ではない。全員が武闘派なのだ。


 たとえば相島の兄貴もそうだ。

 相島はもともと飛太刃流の免許皆伝者。

 さらにダンジョン完全攻略によって、《真空の剣(バキュソード)》というスキルを獲得している。これは真空状態の刀身を作り出すスキルだ。


 回避不能な刀身と、飛太刃流の技。この二つがあわさった相島の戦闘力は、阿木にも匹敵する。


 塚元は希望とともに確信する。


(相島の兄貴なら、オヤジの仇を取ってくれるはずだ!! 頼むぜ、兄貴ぃぃぃぃ!!!)


 敵の女──アーダと対峙する相島。

 両手が握るのは、刀身のない柄のみ。否、すでに《真空の剣(バキュソード)》は発動され、真空状態の刀身ができあがっている。


「クソ女ぁ! オヤジの仇だぁラクに死ねると思うなよぉぉぉ! 手足を斬り落としてから、阿木組のオ〇ホがわりに飼ってやるよ!!」


 アーダが欠伸あくびする。


「脅し文句が長い」


「舐めんじゃねぇぇえ! 《八双八陣》!!!」


 塚元は驚嘆する。相島はさっそく奥義を使ってきたのだ。

《八双八陣》。一度の斬撃で8回分の斬撃効果を及ぼす技。この奥義を回避することは不可能だ!


 アーダの右手にチェーンソーが飛んできて、


「その技だが、これのことか? 《最小の殺戮(ミニマムジェノサイド)》」


 チェーンソーが振るわれる。

 たった一度振るっただけなのに、100もの斬撃が発生。


《八双八陣》の8回分は相殺され──さらに残った92回分の斬撃が相島を襲う。


「いぃぃいイイいぃいぎギゃァァぁぁぁぁあああああああああああああああぁぁ…………!!!」


 バラバラの肉塊がぼとぼとと落ちる。相島の残骸だった。


「あ、相島の兄貴ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!」


「すまんな。92回分余計だったか」


 若頭補佐である堂上が怒声をあげる。


「おのれぇぇぇぇ!! オヤジだけでなく兄貴までぇぇぇよくもぉぉぉぉぉ!!」


 塚元はハッとした。そうだ。まだ阿木組は終わったわけではない。

 

 堂上の怪力スキルは、阿木と相島にも匹敵する戦闘力。何といっても、あのドラゴンを素手で絞め殺したのは、この堂上なのだから。


(あんたが最後の希望です、堂上の兄貴ぃぃぃぃぃ!!)


 するとアーダが顔をしかめて、堂上を指さす。


「貴様、口臭がきついぞ。不快だ、死ね──《破壊蜂起デストラクション・アブライジング》」


 チェーンソーが振るわれ、禍々しい暗黒エネルギー斬撃が発射される。

 それは堂上を跡形もなく消し飛ばし──その後ろにいた組員も巻き込んでいく。


「うわぁぁぁぁぁぁぁあ!」


 塚元は近くの部屋に飛び込むことで、《破壊蜂起デストラクション・アブライジング》の暗黒エネルギー斬撃を回避した。


「な、な、なんなんだ、これは、これはぁぁぁあ」


 廊下に戻ると、死体しか残っていなかった。まだ死体があるだけマシなほう。堂上のように肉片さえ残っていない者もいるのだ。


 いや、まだ生きている者がいた。


「それで勝ったつもりか!」


 阿木組の金庫番の和田だ。右手で眼鏡をくいっと上げて、


「僕はオヤジたちとは違って、武闘派ではない。だからこそ、この僕に勝機がある!」


 塚元はハッとした。

 そうだ。和田のスキルは複雑怪奇。スキル内容を理解するだけで頭を使うが、そのぶん頭脳派の和田にはあっている。


「行くぞ、《貯蓄遊──」


「話が長い」


 アーダが和田の腹を蹴とばす。

 すると蹴りの衝撃波が背面にまで走って、裂け目をつくる。そこから和田の内臓が噴き出た。


「うぎゃぁぁ……………!!」


 和田は自慢のスキルを出すこともなく、死んでしまった。


「こ、こ、こんなことが………こんなことがあっていいのかぁぁぁあ!」


 這いつくばっていた塚元が見上げると、アーダが見下ろしていた。慈悲の欠片もない眼で。


「貴様が最後だな」


「た、た、助けて……」


 ここでアーダからの問いかけは、塚元の常識を超えていた。


「好きなポケモンはなんだ?」


「は………はい?」


「いいか。私はいま『好きなポケモンのリスト』を作っている。貴様がこのリストの中のポケモンを答えたら、命だけは助けてやる」


 塚元は思い出す。はじめてプレイしたポケモンは、4作目の『ダイヤモンド』だった。

 そのとき最初に選んだポケモンの名が、自然と口から出ていた。


「ナ、ナエ〇ル……」


 可愛いポケモンだ。

 きっとこのアーダという敵も、好きなはず。


 ところが──


「ナエ〇ルだと? そんなポケモン、知らんぞ」


「そ、そんなはずがない! だ、だって『ダイヤモンド・パール』で最初の3匹の一匹なのに!」


「『ダイヤモンド・パール』だと? 私はまだ『赤・緑』だ! ポケモンも150匹までしか知るわけがないだろうがぁぁぁぁぁあ!!」


「ぎゃぁぁああああ!!!」


 そしてチェーンソーが振り下ろされる。


 塚元は真っ二つにされ命を落とす瞬間、心の中で叫んでいた。


(理不尽すぎるぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!)



気に入って頂けましたら、ブクマと、この下にある[★★★★★]で応援して頂けると嬉しいです。励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] ぶっちゃけ、初代の方が平和だった、続編が出るたびタイプ相性とか出てきて覚えるのがおっくうになる。 ポケモンアイドルって言ったら、ラプラスでしょ。
[良い点] やっぱポケモンは初代を前提に会話しないとな、命にかかわる大事なルールだ NDSでやってた所までは記憶に有りますが、はて?どこまで追いかけていたか、最近はとんとわかりません 思い出せるのは…
[良い点] あかみどり [一言] しょきもん選ばない時点でギルティですね。 しょうがない。 ちなみにポッポを選ぶ私は生き残れたでしょうか? (ドキドキ
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ