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68,北条尊人、やらかす。

 

 死体の正体をアーダから聞く。


「そうか。アーダ、お前がなぁ……」


 なんか知らんがゴキブリがやたらいるので、殺虫スキルで始末しておいた。

 とにかく、しみじみと思う


「すべての元凶がこうして死んだのかぁ」


 痴漢冤罪のJKの死体を眺めていると、ふいに沙羅の顔が見たくなった。痴漢冤罪の件で別れた元妻のことだ。

 さっそく〈探索サーチ地球規模(テラ)バージョン〉で探す。ところが一向に見つからない。


〔〈探索サーチ〉が効かないのか?〕


〔あ、それは死にましたね〕


 おれの脳内に戻ってきたイチゴが、そう言う。


〔は?〕


〔ですから〈探索サーチ地球規模(テラ)バージョン〉に反応なしということは、タケト様の元奥さんは死んだということですよ。ご愁傷さまでーす〕


〔……そうか〕


 驚くことではないはずだ。今回のモンスター地上侵攻事件によって、大量の犠牲者が出たわけだしな。その中に沙羅がいたとしても、おかしな話ではない。ただその可能性は考えてもみなかった。


〔大丈夫ですか、タケト様?〕


〔イチゴ。ちょっと一人にさせてくれ〕


〔了解です。アーダさんの脳内で遊んできますね〕


〔ああ悪いな〕


 さて。

 ここでおれの記憶は途切れる。


 あとで分かったことだが、その夜、おれは自分自身に〈泥酔(ドランク)〉のスキルをかけていたらしい。つまり、死ぬほど酔っぱらった。沙羅の死は、やはりショックだったようだな。


 そして──朝。

 二日酔いとともに目覚める。

 ベッドから起き上がったとたん、頭がくらくらした。


「くそ、頭痛が痛い」


 何となく隣を見やったら、ドロシーが気持ちよそうに寝ている。


「…………………いやいや、さすがに酔いの勢いがあったからって、そんなバカなことをするはずが」


 ドロシーにかかっていたシーツを持ち上げてみる。

 うーん。一糸も纏わぬ姿。つまり裸だねドロシーさん。ついでにおれも裸だったね。


 服着てから、現実逃避で二度寝した。


 次に目覚めたとき、ドロシーの姿はなかった。そうか。悪い夢だったんだ。

 ホッとして寝室から出ると、通路を生まれたままの姿のドロシーが歩いてきた。おれと目があうと、頬を染めながら、


「尊人さん、昨夜は激しかったですね。わたくし、壊れてしまうかと思いましたわ」


「……………せめて服を着てこい」


 その後、イチゴが脳内に戻ってくる。

 このとき知ったのだが、イチゴはおれの記憶を見ることができるようだ。


 なぜ分かったかといえば、開口一番。


〔あータケト様、ドロシーとファックしたんですか。お盛んですねぇ〕


 コイツ……オブラートに包め。


〔……なんでおれが覚えていないことを、お前は分かるんだよ〕


〔タケト様からしたら〈泥酔(ドランク)〉スキルで記憶が飛んだのかもしれませんがね。わたしは、そんな記憶もちゃんと確認できるのですよ。案内係ですし〕


〔…………やっぱ、ヤッちゃったのかぁ。人類の敵№1な女と………神よ!〕

 

 無信仰でも「神よ」と言いたくなるときって、あるよね。


〔まぁまぁ、いいじゃないですかぁ~。ドロシーは美女なんですし~。頭のネジが100本は外れた大量破壊女ですけど〕


〔慰めになってないぞ。だいたい、どうせヤッちゃうなら記憶有りのままでいて欲しかった。なんも覚えてないって、意味ねぇだろうが〕


〔知らんですよ〕


 服を着たドロシーが戻ってきたのと、アーダが様子を見に来たのが同時だった。


 ドロシーを視認するなり、アーダはチェーンソーを召喚。


「貴様、なぜここにいる! 師匠に倒され、カード化されたのではなかったのか!!」


「尊人さんがわたくしのカード化を解いてくださったのですよ。そして昨夜は……ふふふ、お楽しみでした」


 アーダが激昂する。


「貴様、師匠を侮辱する気か! 師匠が貴様のような女と褥を共にするはずがあるまい!」


 アーダがこちらを向いたので、おれはつい視線をそらした。


「……師匠?」


「アーダ──許せ。ヒトは道を踏み外すものだ。しゃーない」


「師匠ぉぉぉぉぉぉ!!!」


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― 新着の感想 ―
[良い点] 「師匠ぉぉぉぉぉぉ!!!」 もう草しか生えない
[一言] 物語の発端となる痴漢冤罪とダンジョン発生の舞台裏もあらかた読者に開示され、 地球を覆ったダンジョンやモンスターもあらかた駆逐された。 理由はどうあれ、一時はアポカリプスを迎えた地球の平和は取…
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