62,ホウジョウタケト被害者の会。
──犯罪組織:主席会談の方々──
各国の犯罪組織も、今は協調性が必要とされるご時世。
犯罪組織のトップによる会談は、これで12回目。
今回の議題は、【変転】によって地上に出てきたモンスターについてー──ではなく、ダイヤを求めて殺戮を繰り返している男について。
その男は、まず上海の〈死亡塔〉を壊滅させた。
その後、しばらくのあいだ活動を休止していたが──
先日、こんどはモスクワに現れ〈冬宮殿〉を攻撃。
何十人もの構成員が、生きたまま皮を剥がされる事態に陥った。
主席会談ではこの男を、【鬼畜】と名付けている。
やっていることが、犯罪組織も引くレベルなので。
〈冬宮殿〉主席:「おい、いい加減にしろよ。〈龍頭〉と〈四会〉、貴様らのせいで俺たちが被害を受けているんだぞ」
〈龍頭〉主席:「なぜ我々の責任になる?」
〈四会〉主席:「そうだ、そうだ!」
〈冬宮殿〉主席:「もとはといえば、〈死亡塔〉のバカどもがダイヤを盗み出したのが原因だろうが。つまり、貴様ら中国人の失態だ」
〈龍頭〉主席:「〈死亡塔〉は上海を縄張りにしていたんだ。一方、我々の縄張りは福建と香港。距離的にどれだけ離れていると思うんだ。別の国のようなものだ」
〈四会〉主席:「そうだ、そうだ!」
〈666フッド〉主席:「まてよ。責任問題の話なら、【鬼畜】を産んだ国の責任だろ。なぁ、〈佐東会〉さん?」
〈佐東会〉主席:「いやぁ、そんなこと言われましても。知りませんよ、あんな【鬼畜】を産んだつもりないですよ日本も」
〈聖ダークサイドムーン騎士団〉主席:「騒ぐほどのことではない。〈死亡塔〉が盗み、取引の支払いとして〈冬宮殿〉に渡ったわけだ。ならば、そのダイヤを【鬼畜】に返せばいい話だ。それで【鬼畜】の怒りもおさまるはずだ」
〈四会〉主席:「そうだ、そうだ!」
〈666フッド〉主席:「つまり、ダイヤは〈冬宮殿〉にあるわけだな?」
全主席の視線が、〈冬宮殿〉主席へと向けられる。
といっても、これはリモート会議だが。
〈冬宮殿〉主席:「それがぁ、そのぉ……俺のところにはないんだ。ダイヤは、この会議に参加している犯罪組織のどれかにある」
主席一同:「「「「はぁ?」」」」
〈666フッド〉主席:「どういうことだぁ?」
〈冬宮殿〉主席:「実は俺のところも〈死亡塔〉に倣って、ダイヤを組織間の取引に使うことにしたんだ。ところが【変転】直後の混乱で、どこの組織に渡したのか分からなくなってしまった。それで今はどこが持ってるんだろうか? ダイヤを所持している主席は、挙手してくれ」
ところが誰も挙手しなかった。
〈佐東会〉主席:「……あのう、これってヤバいんじゃないの? 【鬼畜】がすべての犯罪組織を回ってくるんじゃないの?」
★★★
そのころ、≪次元の狭間≫にて。
──〈無神〉さんの視点──
万物の破壊神こと〈無神〉。
彼が惰眠を貪っていたところ、〈案内係:オリジナル〉のヨウナシに起こされた。
「ジー様、ジー様。起きてくださいよ~」
「あー、なんだ気持ちよく寝ていたのに。あとさヨウナシ、何度も言ってるよね? ちゃんと『〈無神〉様』と呼びなさいよと。ジー様じゃ親しみとか出しすぎでしょ」
「そんなことより、ジー様」
「え、そんなことなの?」
「侵略対象36の【地球】なんですがー」
「あー、あそこ。なんかダンジョンが活性化するまで時間食ったところね。で、もうダンジョンは侵略し尽くしたの?」
「いえ、それがダンジョンが無くなりました」
「はぁ? 無くなったって、どういうこと?」
「ですから、ぜんぶ吹っ飛ばされたんですよ。跡形もなく」
「……マジで?」
「厳密には、一個のダンジョンだけ生き残ってます。現地で≪万里の長城ダンジョン≫と呼称されているダンジョンだけは。ただし、これも支配権を奪い取られましたが」
「支配権を奪われたって、誰に?」
「そりゃあ、他のダンジョンをぜんぶ吹っ飛ばしたのと同一人物ですよ。北条尊人とかいう人間です」
「地球人のレベルで、そんなことができちゃうの?」
「できちゃったんですね~。なんか、わたしの妹がちょっとやらかしたみたいで」
「お前の妹って、キウイか」
「いえイチゴのほうです」
「く~、イチゴ。だからアイツを送るのは嫌だったんだ!」
「とにかく、早急に手を打たなきゃですよ。今のところイチゴの記憶から、≪次元の狭間≫やジー様のことは消してありますが──いつ思い出すか、分かったものじゃないですからね~」
「畜生~、俺が手塩にかけて育てたダンジョンを壊しやがって~。おい、【三魑魅】どもに命じろ。何としても、北条尊人の首を獲ってこいとな!」
「へ~い」
気に入って頂けましたら、ブクマと、この下にある[★★★★★]で応援して頂けると嬉しいです。励みになります。




