50,「ストリアく~ん! 遊びに来たよ~!」。
「うわぁぁぁぁ! ギガスぅぅぅ、やめろぉぉぉぉぉぉ…………!!!!」
という断末魔の叫びを残して、とあるモンスターがギガスに踏みつぶされた。
巨人の王ギガスが歩むたび、モンスターたちが蟻のように潰されていく。ブチュブチュという音を立てながら。
連中、軍勢で大通りを来たものだから、ギガスはただ歩くだけで大量虐殺。
おれはそんなギガスの頭頂部に座って、マンハッタン島の地図を確認していた。
〔イチゴ。おれたちが進んでいるのが、かの有名なブロードウェイのようだ。このまま行けば、あのタイムズスクエアだぞ〕
世界の交差点とも言われるタイムズスクエアの一角に、≪マンハッタン・ダンジョン≫の入り口はある。
ストリアを拉致って、ダンジョン製造スマホの入手場所を聞き出す。あとは『変態』呼ばわりしてくれた罰として、首でも引き抜くか。ソフィアにやろう。たぶん喜ぶ。
〔タケト様~、ギガスがサボってますよ~〕
あらかたモンスターが逃げてしまったため、歩くだけでは踏みつぶせなくなっていた。
「ギガス、もっと暴れていいんだぞ? というか、暴れろ」
《心臓強奪》のもと命じる。
「うぉぉぉぉぉぉ!」
雄たけびを上げるギガス。
6本の腕を振り回し、周囲のビルをこん棒で叩きつける。小塔並みのこん棒なので、面白いようにビルが崩れていく。
ビル内に避難していたモンスターたちが、落ちてきた瓦礫で押しつぶされていった。
〔タケト様~、これはあとあとアメリカに怒られるんじゃないですか? マンハッタン、メチャクチャにしちゃって~〕
〔おいおいイチゴ、お前はなにを見ているんだ? マンハッタンを壊しまくっているのは、この巨人だろうが? この巨人が操られていたなんて、誰が思うかって〕
そのときだ。
1体のモンスターが飛翔してきた。触手型モンスターで、ギガス同様フロアボス格の力がありそうだ。《検索》によると、その名はモギュラー。
「ギガぁぁあス! これ以上の狼藉は許さんぞぉぉぉ!」
瞬間、モギュラーから何十万という触手が伸びてくる。全ての触手が、巨人ギガスの体に絡みつく。
まるで触手は無限にあるようだ。スキル《触手世界》か。
ついにギガスの動きが封じられた。
地上にいるモンスターたちが大歓声を上げる。
モギュラーが言う。
「ギガスよ、我が友よ。もう暴れる必要はないのだ」
ギガスがホッとしたように答える。
「モギュラーよ、我が友よ。感謝する」
〔モンスター同士の友情ですねぇ。タケト様、イチゴは感動です〕
〔だな。じゃ、おれもその感動に応えますか〕
ギガスの頭頂部の上で立ち上がり、両手を広げた。
《皆殺し》を発動。
何百万もの殺人光弾が、全方向から一斉に猛射。
モギュラーにも一発当たり、体を抉った。内臓がぶちまけられる。
叫ぶギガス。
「うぉぉぉぉぉぉぉぉ! モギュラぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
地上のモンスター達も、光弾の嵐をくらい破壊されていく──破壊、破壊!。
どこに逃げても光弾が襲いかかり、殺戮が行われた。
「さてと。あらかた片付いたな。ギガス、ご苦労さん」
ギガスは《封印遊戯》でカード化した。
そこからは《飛翔》で、タイムズスクエアを目指す。
〔あ、タケト様! ≪マンハッタン・ダンジョン≫の入口が閉じられていますよ! ストリアめ、籠城に入ったようです!〕
入口がある場所に、オリハルコンの蓋がされている。オリハルコンとは魔法金属であり、破壊することは不可能で──
〔知るか〕
入口を閉ざすオリハルコン蓋めがけて、急降下。両拳を突き出し、ミサイル姿勢。
「ストリアく~ん! 遊びに来たよ~!」
オリハルコン蓋、貫通。
≪マンハッタン・ダンジョン≫第1階層へ。
そこには要塞が建てられてあった。以前からあったものではないだろう。
〔なるほど。あの要塞が、ローレが言っていた前線基地か。アイツ、そこは本当のことを話していたんだなぁ。ストリアの手下だったくせに、バカかな?〕
〔タケト様たちがすぐに殺される予定だったからでは? まぁバカでしたけど〕
要塞から、1体のモンスターが現れる。その姿は青い肌をした長身痩躯。頭頂部には機械群が装着されていた。
【五魔王族】が1柱、ストリアだ。
ストリアがおれを指さして、地団駄を踏み出した。
「なぜだぁぁ! なぜ私の邪魔をするのだぁぁ! この変態がぁぁぁぁぁぁぁ!」
「なに、誰が変態だと?」
「貴様だぁぁ、北条尊人ぉぉぉぉぉ!」
イチゴが呆れたように言う。
〔ストリアさん、ブッ殺されたい願望でもあるんですかねぇ。バカですね〕
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