43,《宇宙破壊》でやらかす。
《メルズーガ・ダンジョン》最下層は消滅しているので、その一つ上の階層まで戻った。
すると、繃帯帝を見かけた。
「あいつ、脳みそ破壊したんだがなぁ。やっぱり、ここのダンジョンを壊さんとダメか。アーダ、先に地上へ行ってろ」
「了解した」
アーダを見送ってから、スキルリストを確認。
手持ちスキルで最強なのが、《宇宙破壊》か。
スキル説明によると、『S級ダンジョンも一発で吹き飛ぶ優れもの』とある。ただ回数制限が3回なので、乱発はできない。
とりあえず、ココで一発使っておくか。
ふと気づくと、繃帯帝が足にしがみ付いてきている。
〔なんだコイツ〕
〔命乞いじゃないですか。おバカでも、タケト様がダンジョン壊そうとしているのには気づいたんですよ〕
〔そうか……〕
「繃帯帝、よく聞け。おれがこれまで殺さなかったモンスターは、殴る兎、神犬、猫怪獣くらいなものだ。この3種類に共通することが分かるか? 可愛いことだ! 一方、お前は可愛いの正反対。グロい!」
繃帯帝の頭部を踏みつぶす。
それから《宇宙破壊》を発動。
〔あ、タケト様。目の前でそれを使ったら、さすがに死──〕
〔はぁ?〕
局地的ながらも宇宙を破壊するエネルギーの奔流。
あ、これヤバい。
防御力∞、頑張れ。
★★★
目覚めたとき、快調だった。
12時間は爆睡したあとみたいに。
だが真っ暗なのが解せない。何かに埋もれているようだが。
〔イチゴ~。状況説明しろ〕
〔あ、おはよーです。簡潔に言いますと。タケト様は13日間、生と死の境をさ迷っていましたよー〕
〔……え、死にかけてたの?〕
〔はい。《宇宙破壊》って、地上で使ったら地球さえも滅ぼせるんですよ。別名、地球破壊スキルですからね。S級ダンジョン内で使ったので、地球は無事ですけど。
とにかくそんなスキルを、鼻先で使ったわけですからね。さすがのタケト様でも死にかけますよ。正直、わたしは思いましたね。コイツ、バカかなと〕
〔腹立つが言い返せない。それがまた腹立つ〕
〔とはいえ、最後にはタケト様の回復力が上回りましたね。こうして完全復活したわけです。気分爽快でしょ?〕
〔まぁな。太陽が拝めたら、なお素晴らしいんだが〕
〔≪メルズーガ・ダンジョン≫の残骸が圧し掛かっていますので〕
〔そういうことか〕
《爆裂風神逆烈渦》を使って、上にあった瓦礫を吹っ飛ばす。
太陽の光が差し込んできた。
〔しかし、ダンジョンは異なる次元に接続していたはずだろ?〕
〔タケト様が《宇宙破壊》で吹っ飛ばしましたので、ダンジョンの瓦礫がサハラ砂漠へ噴出したのですよ。その中に半死のタケト様もいまして、さっきまで埋もれていたわけです〕
〔なるほどな〕
《宇宙破壊》か。回数制限があるだけのことはある。もう封印しよ。
サハラ砂漠の日差しの中、メルズーガ村へ戻る。飛んでいってもいいが、久しぶりの大地なので、のんびり歩いて行こう。
途中でホブゴブリンが群れで襲ってきたので、八つ裂きにする。
〔あれ。モンスターって地上にいるものだったか?〕
〔変ですね。タケト様が≪メルズーガ≫吹っ飛ばしたせいで、中にいたモンスターが地上に出たとか〕
〔え、おれのせいなのか?〕
メルズーガ村に到着。
──したはいいが、メルズーガ村は巨大モンスターに支配されていた。
そのモンスターは、東京ドームくらいある。球体で、何百万もの目玉付き。それが村の上空にいて、たくさんの糸を垂らしていた。
その糸が接続しているのは、村内の人間たちだ。
〔なんだ、あの糸は?〕
〔接続糸ですね。神経に接続して人間を操るんですよ〕
〔なんて名前のモンスターだ? ってか、あんなの≪メルズーガ≫にいたか?〕
〔うーん、見たことのないモンスターですね〕
《検索》にかけてみる。
接続糸のモンスター名が、傀儡死と判明。なんとA級≪リビア・ダンジョン≫のラスボスだ。【七獏族】の1柱かもしれん。
〔これさ、本当におれのせいなのか? ≪メルズーガ・ダンジョン≫を吹っ飛ばしたからって、≪リビア・ダンジョン≫のモンスターが出てくることにはならないだろ〕
〔おっかしいですね~。タケト様が自爆で死にかけている間に、世界はどうかしてしまったんでしょうか?〕
村に入ると、傀儡死が気づいてきた。
接続糸で操っている村人たちが、大勢で向かってくる。全員、武装済み。
〔傀儡死は、こう言いたいのですね。『貴様は人間だから、同じ人間は攻撃できないだろ』とか〕
〔そうか〕
襲ってきた村人全員を、蹴っ飛ばしていく。面白いくらいに吹っ飛んでいった。
「見ず知らずの人間など知ったことか!」
〔格言ですねぇ。いつか『世界偉人名言集』に載りますよ。素敵です〕
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