40,『淡々殺戮モード』と呼ぼう。
アーダは無表情プレイの権化。
嬉々としてモンスターを殺しているのは確かだが、表情にはあらわれていない。
『淡々殺戮モード』と呼ぼう。
〔しかし、アーダにとってモンスターは同族だよな。よく心が痛まないものだ〕
〔タケト様も、ダイヤを盗んだ関係者を殺しまくっても心痛みませんでしたよ〕
〔当然だろ〕
アーダはお気に入りのスキルを見つけたらしい。
《殺戮演舞》。
華麗なダンス──と見せかけて、チェーンソー型武器でモンスターの首をひたすら刎ねていく舞。
ところで、このチェーンソーはアーダ固有の武器だ。
そして固有武器というのは、所有者のレベルにあわせて強化されていくらしい。よって今のチェーンソーを防御したければ、相当な防御力が必要というわけ。
〔だがハムナーは【五魔王族】だったわりに、あっさりと首チョンパされたよな〕
〔攻撃力や防御力って、確かに数値化はされますけどね。実はメンタルにも左右されるのですよ。たぶんハムナーは、アーダさんから冷たい言葉を頂戴したのでしょうねぇ。『婚約破棄だ』とか『貴様、口臭がひどい』とか『死ねイ〇ポ』とか〕
〔……で、メンタル弱る→防御力下がる。そこをチェーンソー一閃の首チョンパか〕
ハムナーが何をしたというんだろう?
人類世界を滅ぼそうとした程度でこの仕打ち。やはりこの世には、神も仏もないなぁ。
≪サハラ・ダンジョン≫第32階層。≪メルズーガ・ダンジョン≫の分も足すと、第132階層。
またもスフィンクスと遭遇。ただしこのスフィンクスは、要塞くらいデカい。
「我が名は、スフィンクスの王。冒険者たちよ、我の『なぞなぞ』に答えられるか?」
50年間もスタンバっていたと思うと、『なぞなぞ』くらい聞いてやろうと思う。
「いいだろう、言ってみろ」
「どんなに頼んでも、売ってくれない人のお仕事はな~に?」
記憶が蘇る。あれは幼稚園のころ。友達のトー君が、幼いおれに発した『なぞなぞ』こそがコレと同じ。すなわち、答えは占い─うらない─師。
トー君との出会いは、すべてこの日のためだったのか!
「答えは、う──」
アーダのチェーンソーが一閃され、スフィンクスの頭部を両断した。脳味噌が丸見えになる。
「下らんなぞなぞで、師匠の手を煩わせるな!」
「……」
〔まずいぞ、イチゴ。アーダが、なんだか生き生きとし過ぎている。殺しすぎている。見ろ。無表情と見せかけて、あの瞳の輝きを。まるで遠足の日の小学生のようだ〕
〔まぁオーガですからね。殺すの大好きですよね。上海でも殺しまくっていましたし〕
〔……〕
その後も、アーダさん無双が続いた。あれ、おれという師匠の出番は?
満を持して登場のフロアボスたちが、チェーンソーで切り刻まれていく。
たまにアーダがおれのもとに来て、「どうだろうか師匠?」と褒めて欲しそうに言ってくる。
「よしよし。いい仕事しているぞ~。でもたまには、おれにもモンスターを分けてくれてもいいんだぞ」
「師匠が手を煩わせることがないよう、全てのモンスターを撃破していくつもりだ。ラスボスも含めて」
サービス精神旺盛なアーダは、高速で駆け抜けていく。
それを見届けてから、おれは《アイテム創造》で椅子を作り、腰かける。頭痛がまだおさまってない。歳かな。
〔アーダさん、行かせて良かったのですか?〕
〔このままラスボスまで無双してくれるだろ。しかし、真の≪サハラ≫のラスボスって、誰なんだ? ハムナーではないだろうし、繃帯なんたら帝か?〕
〔ダンジョンが分断されたとき、新たなラスボスを置いたとは思えませんしねぇ〕
少し休んでからアーダの後を追う。
真の最下層に到達すると、血だまりの中にアーダが倒れていた。全身に斬傷があり、両足は膝で切断されている。
「まってまって、うちの弟子が切り刻まれているんだけど」
〔口ほどにもないとは、このことですねっ!〕
イチゴ、お前……言うねぇ。
アーダのもとに行き、《超絶回復》を使用。
斬傷が癒されていき、切断された両足も再接合していく。凄い回復スキル、持ってて良かった。
完全回復──したがアーダの意識が戻るのは、まだしばらく先か。
ふと転がっているチェーンソーを見た。
それから回復したばかりのアーダの斬傷を、頭の中で比較。
〔アーダのさっきの負傷は、このチェーンソーによるものだな〕
〔敵にチェーンソーを奪われたのでしょうか?〕
〔または──〕
最下層の奥、暗闇の中から子供が出て来た。モンスターなのだが、見た目はどこにでもいる少年。なんかニタニタ笑っている。
〔タケト様って、子供はボコれますか?〕
〔ウザかったら、ボコれるぞ〕
〔あのガキ、ウザそうな顔してますし──いけますねっ!〕
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