29,さっそく冒険者たちの死屍累々~。
──主人公視点──
アリケの説明を要約すると。
≪サハラ・ダンジョン≫のハムナーも、髑髏皇帝と同じく人間の私設部隊を持っていた。
ただしハムナーの私設部隊には、国連が送り込んだスパイがいたのだ。
で、そのスパイが掴んできた、恐ろしい情報というのが──
ハムナーによる人類攻撃計画。
その方法は、人為的に世界各地で大地震を引き起こすというもの。
あ、ひとつ訂正。人為的ではなく、モンスター為的か。
「それを阻止するため、各国の精鋭冒険者パーティが≪サハラ・ダンジョン≫に向かっているんです」
「それはまた大変なことだなぁ~」
〔イチゴ。世界各地で大地震を引き起こすなんて、そんなこと可能なのか? いくら【五魔王族】でも無理だろ。つーか、オレが無理なんだから無理だろ〕
〔もちろん不可能ですよ。ですから、これはただのフェイク・ニュース。もしくは──〕
〔もしくは、なんだ?〕
〔【埋もれた兵器】が発掘されたのですかね~。だとしたら、【三魑魅族】の方々が絡んでいるかもですよ。隠しボス来たっ!〕
また新グループか。アイドル戦国時代みたいになっていやがるな。オレは覚えんぞー。
〔とにかく、ハムナーをボコボコにすれば済む話だろ。オレはすっきり爽やか、ついでに世界も救われて言うことなし〕
というわけで、さっそくアリケたちルーカ代表パーティを引き連れて、≪サハラ・ダンジョン≫へ向かった。
ちなみにアリケ以外のルーカ冒険者は、Dランクが3人。コイツら、死にに来たのかな。
≪サハラ・ダンジョン≫に到着も、混んでること混んでること。
世界各国の冒険者どもがわんさかいて、花見の会場かよという有様。
一応は、国連のダンジョン調査機関が指揮っているようだが。
「アリケ。ルーカ代表パーティがダンジョン入りする、と伝えてこい」
5分後、アリケが大急ぎで戻ってきた。紙切れを手にして。
「ダンジョンの入場番号をもらってきました。いま≪サハラ・ダンジョン≫入りしているのが、ドイツ代表パーティです。彼らの番号が21。僕たちの番号は、89です」
「……へぇ、そうか。ところで入場番号22は、どこの国のパーティだって?」
「はぁ。スイスだそうですが」
「ここで待ってろ」
★★★
2分後。
オレはアリケたちのところに戻った。
「よーしアリケ。入場番号22をゲットしてきたぞ~。おっ、ちょうど22番が呼ばれているな。アリケの仲間たちも準備はいいか? では行くぞ~」
「あ、あの、その入場番号どうしたんです? スイス代表パーティが持っているはずじゃ」
「平和的な話し合いで譲り受けたものだ」
すかさずイチゴが言ってくる。
〔タケト様の中では、『病院送りにする』と『平和的な話し合い』が同義なんですね。感動です〕
〔あれは向こうが悪い。こっちは愛想よく挨拶したというのに、いきなり攻撃してくるとはな〕
〔『入場番号をオレに渡すか、病院送りになるか。さぁ選べ』という挨拶は、古今東西、戦闘開始の合図だと思いますよ~〕
アリケたちを引き連れて、オレはルーカ代表として≪サハラ・ダンジョン≫入り。
第1階層を少し進むと、さっそく冒険者たちの死屍累々。
〔なぁイチゴ。ルーカはともかく、他の国はSランクを送り出してきたはずだよな? それなのに第1階層から全滅コースとはな〕
〔おそらく、第1階層にフロアボスが配置されていますね。本来なら第1階層に置くのは雑魚モンスターだけなんですがねぇ。髑髏皇帝といい、最近の【五魔王族】は暗黙のルール無視が多いですねぇ。由々しき事態です!〕
ちなみにアリケたちルーカ・パーティは、4人で抱き合って震え上がっていた。
「し、ししし、死体が、こ、こんなにぃぃぃぃ」
「……お前たち転職したら?」
アリケがダンジョンの天井を指さし、叫ぶ。
「ほ、ほほほ、北条さん。あそこにぃぃぃ!」
天井に張り付いていたモンスターが降下してきた。大型トラックサイズのスフィンクスだ。コイツが≪サハラ・ダンジョン≫のフロアボスか。
「我は≪サハラ・ダンジョン≫を守護するスフィンクス。我の『なぞなぞ』に答えられなければ、死あるのみだ。心して聞け、『朝は四本、昼はアベェェ!………」
《真空刃》で首を刎ねたのだ。
転がるスフィンクス頭部。
「誰もがお前と、『なぞなぞ』で遊んでやると思うなよ」
〔『なぞなぞ』を聞いてさえあげないタケト様の無慈悲さ、痺れます〕
「アリケ。お前たちはスフィンクスのドロップアイテムでも手土産にして、母国に帰れ。オレは先へ行くから」
するとアリケが駆け寄ってきて、オレの両手をガシッと握った。
「北条さんっ! 世界の命運を、あなたに託しますっ!」
「はぁ? あー、世界ね。はいはい。任せとけ~」
というわけで、オレはソロに戻って先へと進んだ。
気に入って頂けましたら、ブクマと、この下にある[★★★★★]で応援して頂けると嬉しいです。励みになります。




