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27,女王蜘蛛さん、食べられトラウマを抱えながらも無双する。偉い子。

 


 ──アーダ視点──


 その後は、女王蜘蛛クイーン・スパイダー無双が続いた。


 雑魚モンスターたちは、女王蜘蛛クイーン・スパイダーの《無差別光線インディスクリミネート》で瞬殺。

 無尽蔵に放たれる死の光線からは、どんなモンスターも逃れようがない。


 そして《無差別光線インディスクリミネート》に何とか耐えたフロアボスには、《子宝蜘蛛チャイルド・トレジャー》というエゲつない攻撃。


子宝蜘蛛チャイルド・トレジャー》には3段階ある。

 その1,フロアボスの体内に蜘蛛の卵を産みつける。

 その2,わずか数秒で孵化。

 その3,そして生まれた万単位の肉喰い子蜘蛛が、体内から食らいつくす。


 呆れるくらいの無双ぶり。

 悪夢のような強さ。


 汐里がはしゃぐ。


「わぁ、強いんだねぇ~女王蜘蛛クイーン・スパイダーさんっ!」


 女王蜘蛛クイーン・スパイダーも気持ちよさそう。


「マスター、当然じゃ。わらわは【炎骸の三連星】が1柱なのじゃからな」


「そんなに強いんだからさ、おじさんともいい勝負したんじゃない?」


 とたん女王蜘蛛クイーン・スパイダーは頭を抱えて、ガタガタ震え出した。


「食べないでください食べないでください美味おいしくないです食べないでください」


「……なんか、ごめんね」


 ★★★


 第98階層のフロアボスは、≪ドレスデン・ダンジョン≫の中ボスともいえる霜の巨人(ヨトゥン)

 その巨人は、高さ40メートルはある。しかも塔のような剣まで装備していた。


 アーダは愕然とする。

 まさかこんな化け物が、待ち受けていたとは。

 我々で勝てるのか?


 瞬間。

 女王蜘蛛クイーン・スパイダーが、霜の巨人(ヨトゥン)の体を駆け上がる。

 そして巨大な首に鋼糸を巻き付けて、ぐいぐい絞めだした。


 霜の巨人(ヨトゥン)も抵抗したが、ついには壁にもたれかかるようにして死亡。

 まさかの攻略法、絞殺!


 汐里が拳を突き上げて、


「さすが女王蜘蛛クイーン・スパイダーさん! あざやか!」


 ソフィアが唖然として言う。


「……ねぇ、アーダさん。なんであんな異次元クラスの女王蜘蛛クイーン・スパイダーを、北条さんはボコれたの?」


「師匠だからな」


 こうして最下層まで辿り着いた。


 しかし──『ラスボスの間』は無人だった。師匠も髑髏どくろ皇帝もいない。

 その後、『控えの間』なる場所で、髑髏の死屍累々を発見。


 ソフィアが驚愕する。


「そんな──これは髑髏皇帝を含めた髑髏15兄弟よ! 全員そろっていたなんて──そして皆殺しにされているわっ! 一体、誰がこんなことを──」


「師匠だな」「おじさんだね」「あの怪物──ではなくマスターのご友人じゃな」


 アーダ、汐里、女王蜘蛛クイーン・スパイダーがハモった。

 ソフィアは納得していない。


「だって──髑髏皇帝は【五魔王族】の1柱よ? 髑髏皇帝だけじゃないわ。たとえば髑髏次男は、【四戮族】の1柱・戦艦せんかん髑髏どくろだったのよ。

 ほかの兄弟も、どこかのダンジョンのラスボスを務めていたわ。それを、たった1人の人間が皆殺しにできるはずがないわよっ!」


「師匠なら余裕だな」「おじさんなら楽勝だね」「あの怪物──ではなくマスターのご友人ならば可能じゃろう」


 ソフィアは眩暈めまいがしたらしく、ふらついた。

 汐里が支える。


「大丈夫、ソフィアさん?」


「ええ。少し、その──あたしの中で、常識が音を立てて崩れ去った衝撃で。もう大丈夫よ」


 アーダは腕組みして、


「我々は遅かったようだな。すでに師匠は目的を果し、このダンジョンを去ってしまった」


「わたしたちも≪ドレスデン・ダンジョン≫を出よっか」


『ラスボスの間』には転送ポイントが出ていたので、それで地上に戻ることにした。

 

「えっ、女王蜘蛛クイーン・スパイダーさんはカード化しなゃきダメなの?」


 アーダが説明する。


「たとえ【炎骸の三連星】でも、ダンジョンの外に出ることはできない。カード化しているなら別だがな。そして私は例外だ」


「そうなんだ……ごめんね、女王蜘蛛クイーン・スパイダーさん。またダンジョンに入ったら、よろしくね」


 転送先は、ツヴィンガー宮殿の庭園前だった。

 地上に出たとたん、アーダのスマホに着信が入る。


「師匠からのLINEだ。これによると──どうやら師匠は、≪サハラ・ダンジョン≫に向かったようだな。『もうしばらく、汐里のおもりを頼む』とある」


「≪ドレスデン・ダンジョン≫でおもりしてあげたのは、わたしだけどね~」


「貴様ではなく、女王蜘蛛クイーン・スパイダーのおかげだろ」


 アーダは汐里を冷ややかに見てから、あることに気づいた。汐里が完全攻略者になっていることに。

 どうやら『ラスボスの間』の転送ポイントを通ったためらしい。


「それで、どうするのだ汐里?」


「もちろん、おじさんを≪サハラ・ダンジョン≫まで追いかけるよ。アーダさんもでしょ?」


「ああ──うむ。もちろんだ」


 アーダは溜息をついた。

 ハムナーのいる≪サハラ・ダンジョン≫には近づきたくなかったが、仕方ない。師匠が向かってしまったのだから。


 ソフィアが決意した様子で言う。


「あたしも付いて行っていい? 北条さんがいったい何者なのか、もう一度会って見極めたいわ」


「わたしは別にいいけど。アーダさんは?」


「私も構わないが──腹パンされるため師匠を追いかけるとは、貴様マゾなのか?」


「なんで腹パンされるのが前提なのよっ!」


 ★★★


 数日後。


 ──主人公視点──


 オレは、モロッコのメルズーガという村にいた。

 サハラ砂漠の拠点の一つであり、ここから≪サハラ・ダンジョン≫へ向かうのだ。


 それはいいのだが──


 メルズーガには、やたらと冒険者たちがいる。

 各国からSランクのパーティが派遣されたらしい。

 なんでも≪サハラ・ダンジョン≫に大急ぎで攻略せねばならない、国際的な事件が発生しているとか。詳細は知らんが。


〔こんなに雑魚どもがいると、さすがに邪魔くさいな。全員、戦闘不能にしてやろうか〕


〔それはそれで面白そうですけど、国際問題に発展したらメンドーですよ〕


〔確かになぁ。じゃ、どこかの国の代表パーティとして、堂々とダンジョンに入るとするかな〕


〔どこかのパーティに、混ぜてもらうんですか?〕


〔ちょっと違うな。適当なパーティを見つけたら──〕


〔見つけたら?〕


〔乗っ取る〕


〔素敵です〕



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― 新着の感想 ―
[一言] この流れに乗るしかねえ 素敵です
[一言] 書籍化決定の面白さです。
[良い点] すてき [一言] です。
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