20,「痛めつけるのも料理と同じ。大切なのは、愛情ですっ!」。
≪ドレスデン・ダンジョン≫ラスボスの髑髏皇帝。
【五魔王族】の1柱だ。
で、コイツの弟が、髑髏伯爵。
≪小金沢山ダンジョン≫のラスボス──だったが、先日オレが仕留めたわけだ。
その報復というわけらしいが──。
〔しかし、なんだって人間の魔導士が、髑髏皇帝のために働いているんだ?〕
〔いるんですよねぇ。冒険者のくせに、強大な力を持ったラスボスに心酔する人間って。ラスボスによっては、人間を僕にして私設軍を作っている奴もいますよ。髑髏皇帝はその口ですね〕
なるほど。冒険者なら地上とダンジョンを自由に行き来できるからな。ダンジョンから出られないラスボスにしたら、使い勝手がいいか。
〔だが完全攻略しないと、ステータス数値は外に持ち出せないはずだろ?〕
〔そこはラスボス権限で、ルールを捻じ曲げているんですよ〕
ここでなぜか、足元に転がっている魔導士が勝ち誇ってきた。
「そうだ! 我は皇帝陛下に仕えし者! そして北条尊人よ! 貴様への復讐は、貴様の大切なものにも及ぶのだ! 皇帝陛下の弟御を殺した報い受けるがよい!」
〔オレの大切なものだって? はっ! まさか、オレのダイヤモンドのことかぁぁ!〕
〔いえタケト様。この流れでしたら、汐里さんのことじゃないですか? ほら、仲いいですし〕
〔あー、そういう意味か〕
オレは、足元の魔導士に確認した。
「お前の仲間が、汐里を狙っているのか?」
「そうだ。今から向かっても、もう遅いぞ!」
と、ウザいくらいに勝ち誇る魔導士であった。
「ふーん。お前の仲間がねぇ。じゃ、《共有痛覚》でも発動しようか。
魔導士くん。この《共有痛覚》が何かを説明してやろう。これは『敵への痛みをその仲間にも共有させる』というものだ。
分かりやすく言うと、だ。
その1。お前を死ぬほど痛めつける。
その2。するとお前の痛みを、お前の仲間もリアルタイムで共有する。
その3。よってお前の仲間もまた、死ぬほど痛めつけられる。
では実践しよう」
まず魔導士くんの右腕を、肩の付け根から引っこ抜く。ブチ。
「ぎゃぁぁぁぁあああ! イダぁぁぁぁイぃぃぃぃぃぃああぁぁぁぁぁぁ!」
続いて魔導士くんの左腕も、肩の付け根から引っこ抜く。ブチ。
「いぎゃぁぁぁぁああぁぁぁぁぁぁああ! びぎゃぁぁぁぁぁああああああ!」
「失血死しないよう、《輸血》を使っておくか」
〔あぁタケト様っ! そんなペースで人体を破壊したら、あっという間に死んでしまいますよ!〕
〔そうかな?〕
〔雑なんですよ、やり方がっ! もっと愛情をこめてくださいっ! 痛めつけるのも料理と同じです。大切なのは、愛情ですっ!〕
オレはハッとした。愛情。そうだったのか。
よし、愛情たっぷりに皮を剥ごう。
「ぎゃぁぁぁ! 殺じでぇぇぇぇ、もう殺じでぇぇぇくだざぁぁぁぁぃぃぃぃ! お願いじまずぅぅぅぅぅ!」
「頑張れ、頑張れ。まだいける。まだお前はやれる子だ」
〔タケト様。この人は髑髏皇帝の配下ですし、骨が見えるまで削ったらどうです? きっと喜びますよ~〕
「なるほど。じゃ、削りま~す。動かないでくださ~い」
「うぎゃぁぁぁぁぁぁぁああああぁぁぁぁぁぁあああ!……………」
その後、魔導士の死体は《収納》にしまった。警察に発見されると面倒なので。
それから《追跡》で汐里の居場所を確認し、向かう。
汐里は自宅に戻っていた。
二階の窓から部屋にお邪魔します。
「汐里、無事か?」
「あ、おじさんっ!」
汐里が駆け寄ってくる。抱きつこうとしてきたので、回避しとこう。
「怖かったよ、おじさん。さっき知らない男が侵入してきて、そしたら──」
「その男、どうした?」
「いきなり、叫び出して。『もう殺してぇぇ』とか叫びながら、廊下を転がりまわっていたんだけど……いまは静かになったよ」
廊下に出て確かめる。
汐里を殺しにきた人間が、絶命していた。
その見た目は五体満足。だが実際は、さっき死んだ魔導士と同じ痛みを味わっていたわけ。そのためショック死したようだな。
〔やれやれ、髑髏皇帝め。弟をオレに殺されたからといって、人間の殺し屋を送り込んでくるとは〕
〔仕方ないですよ~。タケト様、ラリアットで雑に殺しましたからねぇ。前口上さえ聞いてあげずに、テキトーに殺しちゃって。あれは無念だったですよ。兄の髑髏皇帝が復讐に駆られるのも、無理ないです〕
〔というか、お前が煽ったんだよなイチゴ。先に弟の髑髏伯爵を殺しといたら、兄のテンション上がるよとか〕
〔実際、兄の髑髏皇帝のテンション爆上がりじゃないですかぁ~! で、どうするんです? 髑髏皇帝ならば、タケト様を殺してくれるかもですよ~?〕
〔いや、髑髏皇帝のやり方が気に入らん。人間の暗殺者を送り込むとか陰湿だろ。殺されるなら、もっと爽やかな奴がいいなぁ〕
〔じゃ、どうされます?〕
〔ウザいから、髑髏皇帝はブッ殺コース〕
〔そうこなくっちゃですよ~!〕
しかし、汐里の面倒は誰かに見させないとなぁ。オレがドレスデンに行っている間、また殺し屋が来ないとも限らないし。
となると──
〔アーダにでも守らせておくか〕
〔はい、汐里さんの死亡フラグが立ちましたっ!〕
気に入って頂けましたら、ブクマと、この下にある[★★★★★]で応援して頂けると嬉しいです。励みになります。




