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2,案内係。



「畜生。死ぬ前に頭がイカれやがったか!」


〔いえいえ、頭は問題ありませんよ。私は8888体いる案内係の一人、イチゴです。以後、お見知りおきを〕


 案内係か。そういえばダンジョンに入ると脳内に語り掛けられるという話だったな。

 声の感じが人気声優に似ているのも、意図的か?


「そうか。ま、短い間だがよろしくな」


〔さて? 短い付き合いになりますか?〕


「なるだろうよ。オレはこれからドラゴンに食われるんだからな」


 オレがいるのは≪樹海ダンジョン≫の第1階層。

 さっき入ってきた穴はどこにもない。

 天井までの高さは50メートルはありそうだ。そういやダンジョンの半分は異空間にあるんだとか、どこかの偉い学者が説明していたな。


 一応は地下なんだが、明るい。ダンジョン全体が仄かに輝いているようだ。

 これならドラゴンにも見つけてもらいやすそうだな。


〔タケト様。あなた様は全ダンジョン来館1億人目なのですよ。もっと喜んでくださいよ~〕


 全世界にある全てのダンジョンで、オレが入るまでに9999万9999人もダンジョン入りした奴らがいたのか。

 その中の何人が、オレと同じ目的の奴だったんだろうな。


「そりゃあ、良かった良かった」


 オレが適当に答えてやると、イチゴはワクワクした様子で言いだした。


〔ステータスオープンしてみてくださいよ、さ、早く早く〕


 ステータスか。ダンジョンに入ると、そんなものが与えられるそうだ。

 といっても最初は雑魚なステータス数値らしいが。モンスターを倒して経験値を稼いでレベルを上げれば、ステータス数値も増える。まるっきりゲームだよな。


 ただし、ダンジョン内のステータス数値を外の世界まで継続するためには、方法は一つしかない。

 そこのダンジョンのラスボスを倒すことだ。


 つまり、ダンジョンを完全攻略した上での帰還が不可欠。

 これは相当に難しいだろうね。


 各ダンジョンのラスボスがいるのは最下層。階層を進むほど雑魚モンスターも強くなるし、フロアボスだっている。

 だから99.999パーセントの奴は帰還するため、ダンジョン偶数階にある≪転送ポイント≫を使うしかない。

 そして≪転送ポイント≫を使うと、せっかくのステータス数値は初期化されてしまう。


 ま、ぜんぶウィキペディアの受け売りだが。


 ちなみに日本では最高で、B級ダンジョン完全攻略者が1人いたな。ただマスコミが騒いだあとで、消息不明になったが。軍の実験台にされて死んだとかいう噂。

 まぁB級ダンジョン程度じゃ、そうなるだろうよ。いずれにせよ、オレにはどーでもいい話だ。


 つーか、ドラゴンまだか? サボってんのか? 


〔ステータスオープンしてくださいよ、ほらタケト様、タケト様、タケト様ぁぁぁ!〕


 うざい。

 これほとんど拷問じゃねぇか。耳をふさいでも、脳内で喚かれたら意味がないし。

 この案内係、もしかしてバグってんじゃないのか? 


「分かった、分かった。ステータスオープン」


 視界にスクリーンが現れ、数値が表示される。


 Lv       ∞

 HP       ∞

 MP       ∞

 STR (力)   ∞

 ATK (攻撃力) ∞

 VIT (生命力) ∞

 DEF (防御力) ∞

 RES (抵抗力) ∞

 AGI (素早さ) ∞


「バグってんぞ、イチゴ。なんだ∞って」


〔∞は無限ですとも、タケト様! あなた様は今や無敵の超人になったのです! やったね!〕


「……ちょっとまて。理解ができん。なんだって、そうなる? つーかそれ、ゲームバランス完全に狂わしてんだろうが」


〔わたしの上司が言ったんですよ~。1億人記念の特典は、貴様が好きに設定しろと。だが程々(ほどほど)にな、とも。ですので、はい、程々で~す〕


「どこがだぁぁ! ∞のどこが程々(ほどほど)だぁ!」


〔実はその上司、この前わたしのお尻を撫でまわしやがったんですよ。ね、腹が立ちますよねぇ〕


 ゾッとした。

 あまりの恐怖に寒気まで感じた。


 こんな感情は、家宅捜索を受けて近所中に逮捕されたことを知られてしまったとき以来だ。ただあのときは恐怖以外にも、死にたくなるほど汚辱も感じていたがね。


 とにかくこの案内係、セクハラの腹いせにオレをカンスト状態にしやがった。


 そのとき、オレはドラゴンが目の前にいることに気づいた。

 おお。まさしくRPGゲームから抜け出してきたかのような姿。


「悪いがな、イチゴ! オレは死に場所を求めてきたんだ! お前の鬱憤晴らしの道具になる気はないぜ! あばよ!」


 オレはドラゴン目掛けて駆けだした。

 そして起こる走馬灯。


 将来に胸を躍らせていた学生時代、希望だった企業に就職できたときの達成感。

 そして本気で愛した女性、沙羅との日々。そして別れ。


 全てがこれで無に帰る。

 さようなら。


 オレはドラゴンの口の中へと飛び込んだ。

 で、ドラゴンを貫通して着地。


「……は?」


 振り返ると、後頭部に穴が開いたドラゴンがふら付きながら歩いている。最後には力つきて、どうと倒れた。


 視界にスクリーンが現れ、

『ドラゴン・ハンターの称号を得ました』という文字が出た。


 ……なに、ふざけてんの?



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