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20,〖悲報! 北条尊人、知らないところで酷い通り名をつけられる!〗の巻。

 

 ~深宇宙:

 難易度LEGEND級《πダンジョン》

 またの名をヨウナシ御殿にて~


 宴もたけなわ。

 盛り上がっているパーティ会場(πダンジョン最下層)。


 とくに人気なのが、『惑星破壊ダーツ』という遊戯。

 これはダーツが当たった惑星を、《惑星破壊》スキルで破壊するというもの。どれくらい惑星に住んでいた原住人を殺せるか、その人数を競うのだ。


 そんな大盛り上がりの会場で、たったひとり、難しい顔をしている【神臣人】。その名はブラフマー・ドットコム。


 そんなブラフマーの様子に気づいたのが、【神臣人】の中では共感力の高いガルーダ男爵。


「何か困りごとかね、ブラフマー・ドットコム殿?」


「うむ、ガルーダ男爵。実は少々、問題があってな。北条尊人が〈無神(ジエンド)〉を殺した刀だが。実はもとは、われが黒鵜という地球人に与えた力で作られたものなのだ。ヨウナシ様に知られたら、どのような反応をされるか心配でな」


「確かに。ヨウナシ様はそのときの気分で、喜ばれることもあれば激怒されることもある。問題は、唯一神であるヨウナシ様の気分を読み解くなど、われわれ下等な神々には不可能ということだ。そしてヨウナシ様が激怒されたならば、そなたであっても燃えカスにされることだろう」


 ヨウナシの《存在干渉(アルファでありオメガ)》スキルは、すべての宇宙そしてそこに生きるすべての生物に、干渉することができる。


 すなわち、たとえ【神臣人】であっても、指パッチンで消滅させることができるのだ。これが唯一神と、その他大勢の【神臣人】の違いである。


 そしてガルーダ男爵は一考する。これは面白いイベントを開催するチャンスだと。


「ブラフマー殿よ。では、ヨウナシ様が気づかれる前に、対処するしかあるまい」


「対処というと?」


「現在、北条尊人は戦艦≪樹海≫とやらで、この≪πダンジョン≫を目指しているそうじゃないか。到着してしまえば、《無敵の千里眼(GAM EOVER)》を持つヨウナシ様が視認してしまうだろう。

 視認すれば、北条尊人にかかわるすべてを理解される。すなわち〈無神ジエンド〉を殺した刀のでどころも。すなわちブラフマー殿の力によるものと」


「なるほど。すなわち北条尊人が、この≪πダンジョン≫に到着する前に、奴を殺してしまえば良いのだな。奴の戦艦≪樹海≫に、こちらから乗り込んでいけば良いと」


「そうだとも、ブラフマー殿! それで問題解決だ!」


「おおガルーダ男爵! これほど簡単な解決策があったとは! 助言をありがたく受け取り、さっそく出立するとしよう。では、これで──!」


 ブラフマー・ドットコムが、瞬間移動で消える。

 それを見届けてからガルーダ男爵は、他の【神臣人】たちのもとに行く。


「お前たち、よく聞け。いまブラフマー・ドットコムが、北条尊人を抹殺するため出立した。どちらが勝利するか、賭けようではないか」


【神臣人】の一体が、首をひねる。


「そんなことが賭けになるのか? ブラフマーは生まれながらの真の【神臣人】。もとは人間だったエセ【神臣人】の〈無神ジエンド〉とは、訳が違うんだぞ。たかが地球人ごときに勝てるものか」


 とはいえ賭けは進み、大穴狙いで北条尊人に賭ける【神臣人】も出てきた。ちなみに賭け金として使われるのが、所有する惑星。


 ふいにある【神臣人】が、腕組みして言い出す。


「その、なんといったかな、北条尊人だったか。地球人の名前は、覚えづらい」


 別の【神臣人】が提案した。


「通り名をつけてやろうではないか。いま北条尊人は、12代目の〈無神ジエンド〉ではなかったか?」


「しかし〈無神ジエンド〉は紛らわしい。北条尊人が得た称号の中には、《魔神》があるそうだが」


「魔神だと? 地球レベルで魔神と言われても、真の神々である我々からしたら、嘲笑の対象でしかあるまい。それよりも、もっと分かりやすいものはないのか」


 複数の【神臣人】たちが、地球人の通り名をどうするかで揉めだす。


 そんな中、一体の【神臣人】が前に出た。

 ヒト型の【神臣人】であり、一見するとただの人間の子供にしか見えない。


 ルガロという名で、〈無神ジエンド〉に譲る前は、地球も所有していた【神臣人】である。


「君たちは、北条尊人という地球人の本質が分かっていないね」


 と、明らかに小ばかにした様子で語り出す。だがルガロは、【神臣人】の中でも上位種。言い返すのは危険な相手だ。


 ガルーダ男爵が下手したてに出て、問いかける。


「北条尊人の本質とは?」


「本質とは、北条尊人の始まりと同義である。ではこの地球人のはじまりとは、何か。聞いたところ、それは痴漢という話ではないか。ならば通り名をつけるのは、たやすい。北条尊人の通り名とは──」


 嫌味な間をとってから、ルガロは続けた。


「〈地球の痴漢王〉だ!!」


「「「おお、それだ!!!」」」


 かくして北条尊人は、当人の知らないところで、実に不名誉(しかも冤罪)な通り名をつけられたのだった。



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