12,たいてい、ロクでもない死にかたをする。
勝ち誇る黒鵜。
「北条尊人! これらすべての黒刀が、貴様を切り裂くための〈北条殺し〉だぞ! すべてを避けられるか? くらえぇぇ!」
数多の腕からのびる黒刀が、おれに襲いかかる。
「わぁぁ、タケト様! どうするんですか!」
うーん。なんか、もう、あれだ。
「飽きた」
それを聞いてイチゴが、呟く。
「……………………秋田、県?」
無数の黒刀による斬撃乱舞。これをもろに食らう。
しかし、おれは無傷だった。
「なんだと! なぜだ! 我が黒刀〈北条殺し〉が、なぜ斬れん!」
「北条尊人を斬るための刀だって? 残念だったな。すでにおれは、北条尊人を超えた。ゆえに〈北条殺し〉では斬れないぞ。なぜなら、しつこいようだけど、おれは北条尊人を超えた北条尊人だからだ」
「………………………はぁ?」
絶句している黒鵜は無視して、アイテム創造。庭木用のでかいハサミを作ってから、イチゴに手渡した。
「タケト様、なんですか、これ?」
きょとんとしているイチゴの襟首をつかみ、
「イチゴ、お前に決めたっ!」
「何がですかぁあ!」
消えるイチゴ。
同時に両膝をつく黒鵜。
「ぐぁぁ。なんだぁぁぁ、オ、オレの体内がぁぁぁ」
「黒鵜。お前は、おれを殺すことばかりに執着しすぎたな。そして、おれの行きつけのラーメン屋を破壊するとは」
「オレは選ばれた冒険者だ! ステータス∞の、真に偉大な──」
とたん黒鵜の体内から、庭木用ハサミが突き出てきた。そのまま筋肉と皮膚を、体内からちょきちょきと切り裂いていく。
「北条ぉぉぉ、正々堂々と勝負したら、どうなんだぁぁぁぁ」
「正々堂々と勝負しているだろ」
ハサミで作った裂け目から、血まみれのイチゴがにゅるっと出てきた。先ほど瞬間移動で、黒鵜の体内に送り込んだイチゴが。
「うげっ。タケト様、わたし、こんなのばかり──あ、なんか首に絡まった」
四つん這いになって出てきたイチゴの首に絡まっているのが、黒鵜のハラワタ。
「うわぁぁぁこれ蛇ですかぁぁぁぁぁ」
そしてなぜか蛇と勘違いするイチゴ。慌ててダッシュする。
「やめろぉぉぉぉぉ」
イチゴが首に絡めたままダッシュしたので、黒鵜のハラワタがずるずると腹腔から出ていく。
おれは二つのことを思った。まず、ハラワタって長いよね。もう一つが、消防署のホースみたいだなぁ。
ついに、こけたイチゴ。
おれはそんなイチゴを踏み越えて、
「うげっ」
そのまま黒鵜のもとまで行く。
「こ、殺す、北条、貴様を殺っ」
「しつこい」
黒鵜の襟首をつかんで、ひきずっていく。この部屋の出入り口へと。
まず扉を開けてから、そこに黒鵜の頭部をおいた。扉と枠で、はさめるところに。
ちなみに、うちのダンジョンの扉は、ぜんぶオリハルコン製。この世の全ての鉱物の中で、もっとも硬いのだ。
オリハルコン扉を思い切り閉める。ぐしゃりと、黒鵜の頭部がはさまって、少し潰れた。
また扉を開けて、思い切り閉める。ぐしゃりと、黒鵜の頭部がはさまって、少し潰れた。
「勝手に、」
扉を開けて、思い切り閉める。ぐしゃり。
「人さまのダンジョンに、」
扉を開けて、思い切り閉める。ぐしゃり。
「上がりこんで、」
扉を開けて、思い切り閉める。ぐしゃり。
「失礼きわまりない奴だ」
すっかり黒鵜の頭部は潰れて、原型をとどめていない脳味噌がこぼれでていた。
しかし、さすがの生命力な黒鵜は、まだ生きていた。
「う、う、ほ、北条……」
おれは落ちていた黒刀〈北条殺し〉を拾い上げる。
「おれ以外は斬れないらしいが。まぁ、なまくらでも、思い切りやればいけるだろ」
この刀身を、黒鵜の首の上に置く。
で、おれはジャンプ。自身の体重を《重力変化》で、100トンにした。
「ほ、ほ北条ぉぉぉぉぉお」
「はい、はい」
そのまま刀身の上に、着地。
なまくらな刀身が、黒鵜の首をぐぐっと斬り落とした。




