11,新技としまして《苺SHIELD》。
黒鵜が影と同化しながら、こちらの様子をうかがっている。
この間に、おれは巨剣から抜け出て、負傷を治癒した。
「いやぁアーダ、絶妙のタイミングで戻ってきてくれたな。あともう少しで、天国に逝くところだった」
〔……タケト様、天国に行ける満々なんですね〕
というイチゴの謎のツッコミは無視。
「申し訳ない、師匠。地球が≪次元の狭間≫をグルグル回っているので、こちらに来るのが遅れてしまった」
そう弁明してから、アーダは黒鵜と向き合う。チェーンソーをつきだして、
「師匠。この男の相手は、私が」
「まった。アーダはこの『たこわさ』を冷蔵庫にしまってから、ドロシーを探してくれ。ただし、決して交戦するなよ。とにかく居所だけつかんでおきたいからな」
「了解した」
そう言い置いて、アーダが走り去った。
それを待っていたようで、黒鵜が前へと進みでてくる。
「馬鹿め。あの弟子と協力すれば、まだオレを倒せる可能性もあったものを。一対一の戦いでは、決してオレには勝てんぞ北条尊人」
「まぁ確かに、あんたの黒刀〈北条殺し〉とやらには、恐れ入った。『北条尊人を斬る』という特質だけを与えたのは、なかなかどうして。ここまでピンチになったのは、初めてかもな」
まぁ、エセ幼女のセーラが残した呪いがなければ、やりようはあったんだがね。
「だがな黒鵜。いまさっき、おれは凄いことに気づいたんだが──その刀、おれしか斬れないんだよなぁ。とすると、だ。いやはや、まさかこんな簡単明瞭な攻略法があったとは」
「我が〈北条殺し〉は、貴様を相手にしている限り、隙はない! くらえ、《斬月》!」
漆黒の残像を残しながら、黒刀が迫る。対してこちらは、
「いくぞ、《苺SHIELD》!!」
うちのイチゴを召喚して、その頭頂部で、黒刀の刃を弾き返した。
「うががががっっっ!!!!」
とアホな声を出すイチゴ。
「な、なんだと!」
と驚愕の黒鵜。
「やはりな。おれを斬ることばかりに囚われた結果、あまりに簡単な落とし穴に気づかなかったようだな。そう、おれを斬ることはできても、おれの案内係は斬れまい!」
声も出せない黒鵜。
一方、イチゴはなんか言い出した。
「いえタケト様、斬られはしなかったんですけど、これ痛いんですけど。普通に、木刀でぶん殴られるのと同じ痛みがあるんですけど」
要約すると、『さすがタケト様!』ということだろう。そう解釈しておこう。
激昂する黒鵜。
「バカな! オレの〈北条殺し〉が破られるだと! いや、そんなはずがあってたまるかぁぁぁ!」
おれはイチゴの右足首をつかみ、持ち上げた。
「こい、黒鵜。お望みどおり決着をつけてやろう」
「いえちょっと聞いてくださいよ、タケト様。タケト、こらタケット、タケットぉぉぉぉぉ」
黒鵜が目にも留まらぬ速度で肉薄してくる。
「《魔漣斬》!」
黒刀による連続斬撃が繰り出されてきた。
それら全ての斬撃を、神速で振り回したイチゴで防ぐ。
「痛っ! うぎゃっ! あうっ! どぎゃっ! ぶぎゃっ! ちょ、ちょっと、タイム。タイムですって、タケトさま、うぎゃゃゃゃゃゃゃゃ!!」
「こんなはずが! オレの〈北条殺し〉連続斬撃が──防がれただと!」
「驚くのはここからだ。新奥義《苺ATTACK》!」
はい、イチゴを投擲。
イチゴの石頭が、〈北条殺し〉にぶち当たる。とたん刀身にヒビが入り、ぼろぼろと崩れていった。
「タケト様ぁ~!」
頭を撫でながら走って戻ってくるイチゴ。
「これで勝負ありだな、黒鵜」
黒鵜は無残な姿となった黒刀を見つめ、憤怒で震え出す。
「よくも、オレをコケにしてくれたなぁぁぁぁ!」
とたん黒鵜の背中が裂け、そこから無数の黒い腕が伸びだしてきた。それらの腕の先端には、《北条殺し》と同じ性質の刃が装着されている。
おっと。
「タケト様。あの無数の《北条殺し》、《苺SHIELD》で防ぎきれるんですか?」
「うーむ。ならば、こちらもイチゴの真の姿を見せてやろう」
「なるほどです!…………………………………………………………いやまって、なんですか真の姿ってぇぇ! 聞いてないですよぉぉ!!!」




