4,❝北条尊人❞包囲網。
「あ。タケト様、さっき殴り殺した相手、【三魑魅族】のひとりですぜ」
そういえば、イチゴは【三魑魅族】のファンだったか。
「せっかくですから、ハラワタを抉り出して、メルカリで売りましょう」
「そんなものがメルカリで売れてたまるか」
「【三魑魅族】には熱狂的なファンがいるんですって」
即落札だった。
「ところでタケト様。このタイミングで【三魑魅族】が攻撃をしかけてくるとは。どうやら、こちらの動きが〈無神〉に察知されているようですね。これはガチで、❝北条尊人❞包囲網がくるかもですよ」
「考えすぎだろ」
☆☆☆
──【三魑魅族】の視点──
【三魑魅族】が残り二体、タルジとパンガーは、地球のとある場所にいた。
「アポトシスは失敗したようだ」とパンガー。
対してタルジは、
「もともとアポトシスには期待していない。これからが、真の戦いだ。北条尊人が《次元の狭間》に入る前に、何としても奴を殺さねばならない。そうしないと、僕たちが〈無神〉様に消されてしまう」
「では、プラン通りに続けるとしよう。我とお前。2つの方面から、❝北条尊人❞包囲網を完成させるのだ」
「うむ」
パンガーが自分の仕事をするため去った。
タルジは、〈無神〉より与えられた禁忌スキルを発動する。
《死者復活》。
だが復活できる死者には、3体まで、という制限があった。
よって復活させるのは北条尊人に恨みがある者たち。厳選する必要がある。
☆☆☆
──北条尊人の視点──
魔法陣を描くのが飽きたので、小休止。
すると、スマホにソフィアから着信があった。
〔北条さん。お久しぶりね〕
「最近、いろいろあったから。で、どうかしたのか?」
通話先で、ソフィアが溜息。
〔残念な話なのだけど。北条さん、ダンジョン調査機関のトップとして、これだけは伝えなければならないわ。
そちらのダンジョンが、地球に有害として認定されたの。だから、全冒険者たちの攻略対象となったわ。ラスボスは、北条さんがするのかしら? それとも、ドロシーさん?〕
「まった。話がよくわからないんだが」
〔北条さんたちは、めでたく地球の敵となったわけ〕
「いやいや、おかしいだろ。ちょっと前まで、地球名誉勲章を授与するとか言ってなかったか? 【超人類】の連中を倒したときにさ」
〔そこはね、北条さん。大人の事情なのよねぇ。あたしは反対したのよ。だけどほら、各国の思惑ってあるじゃない?
それに、どこかの権力者が裏で画策していたようなのよね。
とにかく、地球人類が一致団結するには、共通の敵が必要なわけ。今回、晴れて北条さんとドロシーさんが、それに選ばれたのよ。じゃ、頑張って〕
通話が切れた。
「うーん。なんだかなぁ。別に英雄あつかいしてくれなくていいんだけど。おれさ、地球を何回も救ったよな?」
「大人の事情ですよ、タケト様。しかし『どこかの権力者が裏で画策していた』というのが気になりますね。
まるで、『地球VSタケト様』という構図を描こうした輩がいるようではありませんか。あんがい、〈無神〉の手先の仕業かもですよ。搦め手というやつですかね」
で、さらに次のことが起きた。
こんどは何かと思えば、唐突にホログラムが出現。遠くの地から、はるばると。
ホログラムとして、3体が現れる。
そのうち一体は、青い肌をしたモンスター。魔導士の杖を持ち、漆黒の鎧で身を包んでいる。
どこかで見た、どかで見た、どこかで見た。
誰だっけ?
そいつが、呵々大笑しだした。
〔ファッハッハッハッハッ! 久しぶりだな、案内係イチゴよ〕
イチゴが、『うげっ』という顔で。
「うげっ、ボス」
で、おれも思い出した。
「あー、そうだ。≪樹海ダンジョン≫ラスボスのドルゾンじゃないかぁ。懐かしいなぁ~。というか、殺さなかったっけ?」
あのころは自殺したくてドルゾンに賭けたのに、なんの役にも立たなかったからなぁ。
〔〈無神〉様のスキルによって、復活させていただいたのだ。さらによく聞け、この腐れ冒険者の北条尊人が〕
「もう冒険者じゃないんだけどなぁ」
〔案内係オリジナルことヨウナシ様によって、我もステータス∞の力を授かったのだ。まっていろ、北条尊人! 揺さぶられて殺されたあのときの恨み、晴らさせてもらうぞ!〕
ドルゾンの隣にいたのは、なんと〈ロクン〉の神様。
「〈ロクン〉が吹っ飛んだとき、無事だったんだな」
〔無事なわけがあるかぁぁぁ! 私も〈無神〉様のスキルで復活させていただいたのだ! よくも、よくもよくもよくも、私の世界〈ロクン〉を吹っ飛ばしてくれたなぁぁぁぁぁ!! 復讐してやるぞぉぉぉぉ!!〕
いや、〈ロクン〉吹っ飛ばしたのは、ドロシーなんだけど。
ドルゾンが同情した様子で、〈ロクン〉神様の肩を叩いた。
〔よしよし、貴様の憎しみは伝わっているぞ〕
で、3体目だが──どう見ても、ただの人間。ロシア人かな?
「えーと。そちらは?」
と、問いかけてみると、そのロシア人のおっさんが怒りでした。
〔俺を忘れたとは言わせんぞぉぉぉ! 瞬間移動してきたお前が、おれの体内に出現したんだろうがあぁぁぁ! そのせいで、おれの体は爆散しちまっただろうがぁぁぁぁぁあ〕(※第61部分参照)
「……忘れた以前に、それじゃ顔も見てないだろ」
ドルゾンがまとめた。
〔我らは、いまやステータス∞の【北条尊人を恨む被害者の会:黑い三連星】だぁぁぁぁ!! 殺しにいくから、首を洗って待っていろぉぉぉぉ!!〕
そこでホログラムが消えた。
イチゴがしみじみと言う。
「タケト様って、ほうぼうで恨みを買いまくってきましたね~」
「というか、逆恨みだろ」




