3,戦慄の精神攻撃ぃぃぃぃ。
──【三魑魅族】アポトシスの視点──
【三魑魅族】が一体、アポトシス。
〈無神〉の下命により、北条尊人を始末するため地球にやって来た。
今回、〈無神〉より禁忌スキルのひとつを貸し与えられている。これも全ては、北条尊人を殺すためだ。そして貸与された禁忌スキルとは──
〈地球人名手帳〉。
地球に根付かせた複数のダンジョン(いまは《万里の長城》以外、北条尊人に破壊されたが)から得た情報をもとに、〈無神〉が直々に作ったものである。
〈地球人名手帳〉には、現在、地球に居住している全人類の名が記されている。
そして専用のペンを使い、名前の上に線を引くだけで、その人物を消滅させることができるのだ。
あいにく北条尊人の名前をリスト入りすることはできなかったが(レベルが一定以上の者はリスト入り不可)。
だがこの〈地球人名手帳〉さえあれば、ほぼ全ての地球人類を人質にとったも同然。
さすがの鬼畜である北条尊人も、これでは手も足もでまい。
「なぶり殺しにしてくれるぞ、北条尊人よ」
☆☆☆
一方そのころ──
──北条尊人の視点───
《次元の狭間》に行くには、面倒な魔法陣作成の過程があった。
そういや魔力を得てから、本格的な魔法陣なんて描いた試しがなかったな。
新鮮な気持ちで、床に魔法陣を描いていく。
と、屈みこんでいるおれを見下ろしていたイチゴ(脳内から出ていた)が、恐怖に引きつった声をあげた。
「まさか、こんなことが……タケト様……タケト様……あぁ、そんな……」
「なんだ、イチゴ? お前らしくもなく深刻な声を上げて」
「……タケト様の、タケト様の頭に……………10円ハゲが……」
その瞬間、世界が暗転とした。
10円ハゲだと……そんなバカな。ストレスのせいだろうか。いや、それより年齢のせいではないか? つまり、おれももう若くはないということで。
「いや、まて! ス●ンド攻撃を受けたに違いない!」
「10円ハゲを作るスタ●ド攻撃って、どーいう発想ですか」
「バカだなぁ。精神攻撃としては、最強クラスだろ。スタン●は冗談としても、きっと敵のスキル攻撃だ。いやぁ、驚いた。オッサンのせいでハゲたかと思ったけど、なんだぁ、敵の攻撃かぁ。そうか、そうかぁ」
「現実逃避に走ったタケト様、おいたわしや」
とイチゴが見当はずれなことを言っているが、無視。
「敵は近くにいる──あ、マジでいた。意外だ」
《探知》してみたところ、《万里の長城ダンジョン》を猛スピードで降りてくる、謎の存在を感知。もちろん敵である。
「『意外だ』と言っている時点で、現実逃避という自覚はあったんですね」
で、その敵が、おれとイチゴのいるフロアまで到達。
「聞くが良い、北条尊人ぉぉぉぉぉぉ! この《地球人ぶげぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」
打撃系最強の一撃《重力殴打》で、敵の防御力を破壊。
さらに、その顔面がひしゃげるまで、何発も殴った。連続パンチである。
「お前だな、おれに《10円ハゲ》攻撃を仕掛けてきたのは。なんてエゲつない精神攻撃だ」
敵の顔を、原型がなくなるまで殴ってから、上あごに手を引っかけて、引っ張り上げる。
ちょうど顎関節のところで、頭部が裂けた。
「よし。敵を殺したので、これで10円ハゲも治ったことだろう」
「タケト様、治っとらんです」
ところでこの敵、手帳を持っていたが、あれはなんだったんだ?
その手帳を拾い上げて、捨てるのもなんなので、アイテムリストに入れておく。
「邪魔が入ったが、これで良し。10円ハゲも治ったことだし、《次元の狭間》に行くとしよう」
「タケト様、治っとらんです」




