2,諸々のもろもろ。
──黒鵜の視点──
【神に愛された案内係】の一体キウイ。
このキウイによって、ステータス∞を与えられたのが黒鵜である。
北条尊人にボコられた黒鵜は、独りで複数の異世界を渡り、武者修行の旅をしていた。
そして七つ目の異世界において、【神臣人】の一体と遭遇したのだった。
それは難易度SSSS級、《三千世界ダンジョン》の最深部でのこと。
塔のごとき大きさに、四つの頭を持つラスボスが、〈無神〉の同類である【神臣人】だったのだ。
「我が名は〈ブラフマー.com〉」
『なんだドットコムって!』とはツッコまないのが、黒鵜の流儀である。
「〈ブラフマー.com〉よ、俺はお前を倒し、北条尊人を滅ぼす力を得てやる。行くぞ!」
すっかり臨戦態勢だった黒鵜だが、〈ブラフマー.com〉が片手を挙げただけで、身動きひとつできなくなる。
「ぐっ。動けん」
「まてまて、北条尊人か。奴とその妻のせいで、我が管理する異界法廷が破壊されたばかりだ。よかろう、黒鵜とやら。貴様に、ステータス∞を超越した力を授けよう。必ずや、北条尊人を嬲り殺すのだぞ」
〈ブラフマー.com〉から新たな力を得た黒鵜は、地球に帰還した。
☆☆☆
──レモンの視点──
とある日。
【神に愛された案内係】の3体で集まることになった。
場所は都内某所、パットパットゴルフ場。
それぞれ愛用のパターをもってきた。
ひさしぶりに再開して早々、レモンは、イチゴとキウイのにやにや笑いが癪にさわった。
「お前たち、二人ともニヤニヤ気持ち悪いぞ」
イチゴが第一打目を打ちながら、
「いやぁ、ここだけの話なのですがね。うちのタケト様も、ついにやる気を出しまして。つい先日、〈無神〉を殺っちゃう気になったわけですよ」
〈無神〉は、すべての案内係の創造主。ようは『父親』のようなものだ。
イチゴは、そんな『父親』を北条尊人が殺す気になったといって、大喜びしている。さすが【神に愛された案内係】の中でも、いちばん壊れているだけある。
「ならなんで、お前はこんなところでパットパットゴルフしているんだ? 〈無神〉のいる《次元の狭間》の〈獅菫城〉に突撃するかわりに?」
「まぁ、うちのタケト様にも予定がありますからね。《次元の狭間》の〈獅菫城〉に突撃するのは、明日ですよ、明日」
イチゴが打ったゴルフボールが、やたらとクッションしながら、ホールカップに入った。
「ホールインワンです! さすが、わたしっ!!」
レモンは舌打ちしてから、キウイをにらんだ。
「で、そっちがニヤニヤしているのは、なんでだ?」
キウイはレモンを無視して、イチゴに向かって言った。
「イチゴ。うちの黒鵜が、一昨日、武者修行の旅から帰還した」
「はぁ。そうですか」
イチゴのぽかんとした表情から、レモンは察した。
(さては黒鵜が誰だか、覚えていないな)
当人とじかに会っていないレモンでさえも、黒鵜がキウイと契約した人間であることくらいは分かっているのに。
「黒鵜は、ステータス∞を超越する力を持ち帰った。次に北条尊人と相まみえるとき、必ずやその首を討ち取る」
イチゴはあくびしながら答えた。
「それは良かったですねぇ」
どうやらイチゴは、北条尊人が〈無神〉を殺すことしか眼中にないらしい。
そんなイチゴが「あっ」と思い出した様子で、レモンに言う。
「ところでレモンさん。おたくのドロシーさん、〈ロクン〉という異世界を滅ぼしましたよ。どういう教育しているんですか、専属の案内係として」
「……」
☆☆☆
──北条尊人の視点──
おれが乃愛を寝かしつけていると、イチゴが脳内に戻ってきた。
〔パットパットゴルフで優勝したのは、誰でしょうか? もちろん、このわたしですともっ!〕
〔そんなことより、〈無神〉の居場所は聞き出せたか?〕
〔はい。レモンが口を滑らせました。《次元の狭間》の〈獅菫城〉というところにいるようです〕
まったく。
〈無神〉をボコりに行くと決めたのに、イチゴの奴、居所を知らないと言うんだからな。
まぁ、そうとは知られずに、レモンから聞き出せたようだし何よりだが。
〔ところでキウイが、気になることを言っていましたね。黒鵜さんが、ステータス∞を超越したとか何とか〕
…………
………
……
…
〔黒鵜って、誰だっけ?〕
〔知らんです〕




