1,ついにこのときが来たのですね!!byイチゴ。
殲滅系スキル究極ultimate〈塵に帰る〉によるエネルギー球体。
小型太陽なみの威力を誇るエネルギーのかたまりを、ドロシーが投げ落とした。
ひとこと述べさせてもらう。
「あえて言うが、マジで投げ落としやがった!」
エネルギー球体が大地に接したとたん、超絶なる大爆発が発生。
なんやかやあって、〈ロクン〉惑星がパーンと弾け飛ぶ。
その衝撃は凄まじく、おれの脳内にいるイチゴさえも、
〔あばばばばばばばばば!〕
と意味不明な悲鳴をあげるほどである。
ちなみに〈ロクン〉神様は、
「こんなことが許されるかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!! 訴えてやるぅぅぅぅぅぅううう」
と叫びながらかき消された。
いやぁ、ほんと、心からご愁傷様です。
だけど、おれは事前に警告したからね。
ドロシーを招待するのはヤバいよと。
おれのせいではない、ということを、ここは明確にしておきたい。
というわけで、帰ろ~。
多次元ゲートを開いて、地球の《万里の長城ダンジョン》へと帰る。
すると、女児的種族たちが出迎えてくれた。にしても、いまさらだがコイツら何体いるんだろ。
おれに群がってきて、ガッツポーズしだす女児的種族。
「おお、我らの雇用主」
「雇用主が無事帰還したです」
「これで未払いの給料も支払われそうです」
「よっしゃです!!」
いや未払いの給料とかないから。なにどさくさに紛れて、おれからカネをふんだくろうとしているんだ。
「ところでボス。ちゃんと配達したものは届いたですか?」
「届いたです?」
「届きやがったですか?」
「届きやがったのなら、ボーナスを支払ってもいいのです?」
「ボーナス支払えです」
「配達? なんのことだ?」
おれが首をひねると、女児的種族たちが説明しだす。
「ボスが〈万里の長城ダンジョン〉に忘れ物をしていったので、次元転移スキルで送り届けてやったのです」
「はじめは異界法廷に届けようとしたのですが」
「そのときはすでにボスは、〈ロクン〉とかいう世界に移動していたので」
「そっちに転移スキルで届けたのです」
どうやら行き違いになったようだな。
女児的種族たちが何を次元転移で送ってくれたのか知らないが、それを受け取る前に、おれは地球に戻ってきてしまったと。
おそらくその『忘れ物』は、〈ロクン〉とともに吹き飛んでしまったのだろう。
まぁ、『忘れ物』と言われてもピンとこないくらいだし、たいしたものじゃないだろうがな。
「で、忘れ物って、なんだったんだ?」
女児的種族たちが両拳をつきあげて、一斉に答える。
「「「「「「「ボスの結婚指輪です!!!」」」」」」」」
たいしたものだったぁぁぁぁぁぁぁ!!!
そういや左手薬指が、なんか寂しいと思っていたんだよ。
そうだ、結婚指輪がないじゃないか。
「まずい。指輪をなくしたとか知れたら、ドロシーがブチ切れる。というか、浮気を疑われて、離婚の危機だ」
世の旦那というものは、浮気をするとき結婚指輪を外すと、相場が決まっているからな。
脳内で、イチゴがのんきにほざいた。
〔アイテム創造で、同じ指輪を作ったらいいじゃないですか。はい問題解決です〕
〔バカが。ドロシーの目は欺けない。アイテム創造した偽物と、ひとめでバレる。なんとかして、本物の結婚指輪を取り戻さなければ……家庭円満を守るために……〕
〔だからタケト様の結婚指輪は、〈ロクン〉とともに消滅しちゃったんですって。吹っ飛んじゃったものは仕方ないですよ~。男は諦めが肝心ですって。前を向いて生きようぜ、タケット~〕
こいつ、ひとごとだと思って。
「……こうなったら、時間を戻すしかない! 〈ロクン〉とともに消滅する、その前まで──しかし、『時を巻き戻す』系のスキルなんか、あったかなぁ?」
手持ちのスキル(985478個)で検索をかけてみた。
とにかくスキルがありすぎて、ありすぎて──これさ、生涯に、このうちの1%でも使えるだろうか。
そして検索結果は──0件。
「『時間を戻す』系のスキルはないのか」
〔そーいうのは、禁忌系スキルですからねぇ。さすがのステータス∞のタケト様でも、使えんです〕
〔禁忌系スキル──ということは、その手のスキル自体はあるわけだな?〕
〔ありますけど。禁忌スキルを使えるのは、〈無神〉だけですよ。つまり、〈無神〉の称号を得たものしかということですね〕
〈無神〉って、名前じゃなくて称号だったのか。
〔じゃ仕方ない。〈無神〉の称号をいただくとするか。で、禁忌スキルを使い、〈ロクン〉が吹っ飛ぶ前に時間を戻す。そして女児的種族が送ってきた結婚指輪を、ゲット。これで浮気を疑われる心配もなく、離婚の危機も回避。万事OK〕
〔まってくださいよ。〈無神〉の称号を得るということは──いまの〈無神〉を殺す、と言うことですか?〕
〔それしか方法がないからなぁ〕
結婚指輪がないと、ドロシーに浮気を疑われる→
消滅した結婚指輪を取り戻すには、時間を巻き戻す禁忌スキルが必要→
その禁忌スキルを使うには、〈無神〉の称号が必要→
よって今の〈無神〉は邪魔→
ならば始末するっきゃないよね←いまここ。
〔………………え、タケト様。ドロシーさんから浮気を疑われたくないとかのために、〈無神〉と最終決戦しに行くんですか? もっと、厳かな理由じゃなくて、いいんですか?〕
〔家庭円満のためという理由は、実に厳かだろうが〕
〔おお、タケット! ついにこの時が来たのですね!!〕




