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15,趣味の欄が『調子にのったモンスターや勇者を嬲り殺しすること』。

 


 低姿勢で拷問を終えたところ、ドームが白目をむいて、四肢をピクピクしだした。


「どうしたドームくん?」


 状態を確認したところ、ドームくんはショック死してしまっていた。痛覚を五倍にしたのが効いたらしい。


「ドームくん。君はいい奴だった」


 猛スピードで接近してくる影が3体。おれは後退して、それらの影の着地点から距離を置いた。


 着地した影が、《影化(シャドウゾーン)》を解く。全員が武装しており、ドームのパーティ仲間とわかる。


 で、ドームの死にざまを見るなり、3人とも悔しみだした。


「我が友ドームが!」

「なんという鬼畜の所業だ!」

「鬼畜だ! ここに鬼畜がいるぞ!」


 おれは周囲を見回した。


「イチゴ。どこかに鬼畜が潜んでいるようだぞ」


「ガチで探しているところに、天然さんの鬼畜の凄みを感じますねぇタケト様」


 イチゴが感心した様子でそう言ってから、


「鬼畜とは、むろんタケト様のことですよ。というかこの流れで、あなた以外にはありえないでしょ。タケト様、それでも元社会人ですか。空気の読み方をお忘れですか」


 よくよく考えると『空気の読み方』を、【樹海ダンジョン】にはじめて入ったとき置いてきた気がする。

 そもそも自殺する気だったのにステータス∞にさせられたあたりで、よく正気を保っていたものだ。我ながらたいしたものだなぁ。


 しみじみと思い返していたら、バトル状態になった。


 3人組のパーティが、


「いくぞ、お前たち! ドームの仇をとるんだ!」

「「おお!」」

「おれのバフスキルで、全員のパラメーター数値を上昇させる!」

「わたしのデバフスキルで、あの鬼畜の敏捷性を下げるぞ!」

「一斉攻撃だ!」

「「おお!」」

「《氷結斬(アイスザン)》!」

「《下界打(アンダートツ)》!」

「《業火打(ファイガー)×3》!」


 パーティどもの一斉攻撃。それをテキトーに、右手で払っておく。別に直撃をくらっても、ダメージを受けはしないのだがね。


「くっ。この鬼畜、なんて強力な防御力だ!」

「諦めるな! みんな、ここが我慢のしどころだぞ!」

「奴の体力も無限ではないはずだ! 削っていくんた!」


 と、健気に互いに励ましながら、3人組パーティは果敢に挑んでくるのだった。

 で、しつこい攻撃の嵐。

 おれはあくびを噛み殺しながら、テキトーに弾いておく。


 そんなとき、ハッとした。


「……まてよ。もしかして、おれは悪役あつかいされてないか?」


 おれの後ろでポップコーン(バター+塩味)を食べていたイチゴが、むしゃむしゃやってから言った。


「いまさらですか、タケト様。というかタケト様って、『ダークサイドに堕ちた元冒険者』という感じですよね」


「どこがだ」


「マッチングアプリの趣味の欄が『調子にのったモンスターや勇者を嬲り殺しすること』ですし」


「人の趣味を、勝手に決めるな。というか、マッチングアプリ会員じゃないからな。ドロシーに誤解されるようなことは言うな」


「ドロシーさん、近くにはいませんし」


「いや。たぶんドロシーは、常に《地獄耳(ヘルヒアリング)》スキルを起動し、おれたちの会話を盗み聞きしている算段が高い」


 ドロシーならばやりかねん。


 話を戻すが、悪役あつかいというのはどうだろうね。

 それは誤解によるところが大きいのではないか?


 だいたい市民を腐らせているセーラのことは、放っておいていいのか? セーラを止めようとしているおれのほうが、善人だろ。ここらへん、話し合うべきである。


 この3人組パーティと、膝をつきあわせて、平和的に話し合うのだ。しかし3人とも、仲間のドームの仇を討とうとして、頭に血がのぼっている。

 そのせいで、休みなくおれに対して連続攻撃してきている。がむしゃらという感じで。


 話し合うためには、まず攻撃の手を止めてもらわねばならない。

 そう、平和的な話し合いのため、話し合いのためには──


 動けないようにするのだ。


「目的は手段を正当化するってな!」


凍結(フリーズ)》で3人の動きを止める。

 それから3人の両足を、《斬斬(ザン×ザン)》ですっぱり切断。


 《凍結》、解除。


「ぎゃぁぁあ! 足が、おれの足がぁぁ」

「ぐぁぁぁ! 足がぁぁ、わたしの足があぁぁ」

「あぁぁぁ! 足がぁぁぁぁぁ」


 おれは満足した。


「よしよし。これで話し合いができるな」


 イチゴがポップコーンを食べ終えて、ナレーション風にほざいた。


「かくして悪の道を往くタケト様であったのです」



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