14,低姿勢なら、何をやっても許される説。
地獄絵と化した城塞都市を浮遊しながら、セーラをスキャンで探す。
「元オッサンの幼女転生者め。スキャンしても見つからないな。さては妨害スキルでも使っているのか」
隣で浮遊させてやっているイチゴが、文句をつけてきた。
「これも全てタケト様のミスですからね。幼女を殴っているヒマがあったら、とっととその幼女を殺しとけばよかったんですよ」
「字面的に物騒だからやめろ。あれは幼女じゃなくて、幼女の化けの皮をかぶったオッサン」
「いえ、転生しているんで、厳密には幼女ですよ。たとえオッサンだったころの記憶を持っていても」
「そこは解釈の違いだろ」
「ふっふっふっ。甘いですね、タケト様。舐めちゃいかんですよ。案内係の資格を得るため受けた国家試験ならぬ『多次元試験』で、一夜漬けしたわたしの知識を。博識なイチゴ先生と呼んでください」
案内係になるためには、試験があったのか──イチゴが受かっている時点で、その試験、クソの役にも立ってないな。
セーラは見つからなかったが、そのお仲間は見つけ出した。
というのもセーラが発していた魔素を、そいつは多く纏っているからだ。ようは、いつも一緒に行動しているので、魔素が移ったと。
その男は、30代の戦士。スキャンによると、名前はドーム。
なつかしの【四戮族】くらいのレベルはあるようで。
急降下して、ドームの前に着地。
「な、なんだお前は!」
ドームは驚いた様子ながらも、すぐに戦闘体勢に入って、長剣を突き付けてきた。
対しておれは、頭を下げる。角度90度の最敬礼。
「セーラの居所を教えてください」
イチゴが驚愕。
「タケト様が低姿勢っ! 明日は雪ですね」
一方、ドームは冷静さを取り戻し、横柄に言ってきた。
「驚かせやがって。ステータススキャンしたところ、たいしたレベルじゃねぇな。飛行スキルだけは得意のようだが」
そういや、真のステータスは隠蔽していたんだったか。
「セーラの居所を教えていただけませんかね?」
さらに低姿勢で尋ねる。
「オレたちのボスになんの用だ」
「あなたも見てのとおり、いま城塞都市では、ほら、市民が腐っているでしょ。これはセーラの仕業なので、それを止めたいわけですよ。ですから、どうかセーラの居所をお教えください」
誠心誠意に頼めば、心は通ずるのだ。
「知るかボケ!」
ドームが唾を飛ばしてきてから、火焔斬で攻撃してきた。
「あれ? ちゃんと低姿勢で頼んだのに」
とりあえずドームの長剣をへし折ってから、再度ドームに向かって最敬礼。
「では、拷問させてください」
イチゴが驚愕。
「やっぱりタケト様が低姿勢っ! 明日は雪崩ですね」
自慢の剣をへし折られて唖然としているところ悪いが──ドームに《封印》をかける。これで身動きがとれなくなったドームを、アイテム召喚したただの椅子に座らせた。
その上でデバフ系を使って、ドームの防御力数値を0にする。
さらに痛覚を5倍増しにしてやってから、なんの変哲のないトンカチもアイテム召喚。
「イチゴ助手、ドームさんの靴を脱がしてやれ」
「了解です、低姿勢なタケト様」
イチゴが靴を脱がしたところで、おれはトンカチを振り下ろした。ドームくんの右足の小指を叩き潰す。
「ぎゃぁぁぁぁぁあああ痛いぃぃぃぃぃぃい!!」
「ドームさん。後生ですから、セーラの居所を教えてください」
「拷問中も低姿勢を貫くタケト様に、わたし、男気を感じてしまっています」
「痛ぇぇぇぇよぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
「まだ答えてくれませんか。では低姿勢を貫きながら、薬指にトンカチを振り下ろさせていただきます」
ぐちゃり。
「あぎゃぁぁぁぁあああああぁぁ!!」
☆☆
足の指10本中8本潰したところで、ドームくんはセーラの居所を教えてくれた。
「わかったか、イチゴ。低姿勢に尋ねれば、みんな快く教えてくれるというわけだ」
「さすがです、タケト様」




