4,「100000000000000倍返しでしょう」。
ドロシーの視線が、【終わらせる者】たちへと向けられる。
【終わらせる者】たちは、いまは女児的種族たちの機獣竜群と戦っているところ。というより撃滅しているところか。
さすがの機獣竜も、相手が悪い。
ドロシーは【終わらせる者】たちを指さして、
「尊人が招いた方々ですか?」
「いや、おれが招いたわけでは──」
まてよ。訴状を破棄したのが原因で、【終わらせる者】たちは来たわけだよなぁ。
さらに言えば、訴状が出る原因となったのは、おれが異世界〈紗球〉の大陸を傾けたせい。
これって、間接的にはおれが招いたことになるのか?
しかし、ここはしれっと言っておこう。
「ドロシー、信じてくれ。おれが招いたわけじゃない」
瞬間、ドロシーの姿が消える。
唐突に、一体の【終わらせる者】が苦しみだした。
その胸部が内側から裂け、ドロシーが出てくる。この【終わらせる者】の体内に瞬間移動したわけか。
しかもドロシーは右手に、巨大な心臓を持っていた。
それから心臓の持ち主である【終わらせる者】に問いかける。
「あなたの心臓を握りつぶされたくなければ、正直にお答えください。あなたを送り込んできたのは、どこのどなたですか?」
その【終わらせる者】は、自分の心臓を見ながら、口をぱくぱくさせた。
「ゴゴゴゴ……異界法廷の判事アラベスク様」
ドロシーはにこっとした。
「ご協力に感謝いたします」
そして心臓を握りつぶす。
「おおおお…………」
心臓をやられたので、その【終わらせる者】は断末魔の叫びをあげながら死んだ。
ドロシーが右手についた血を、除菌スキルで綺麗にしながら歩いてきた。
「尊人、わたくしたちは戦争を仕掛けられたようです。なんら理由もないのに、わたくしたちの住まいであるこのダンジョンに攻め込んでくるとは」
「あー、そうだね」
乃愛をだっこしたままのイチゴが、睨んできた。
その視線が語っている。
───「理由はありますよ。けっこうタケト様のせいですよ」
と語っている。
無視しよ。
ドロシーはうなずいた。
「尊人、これは1000000000倍返しが必要のようですね」
0の数がおかしくない?
「つまり?」
「異界法廷なる機関を殲滅いたしましょう。異界法廷に属する者は皆殺しです。暴力と血で、わたくしたちのダンジョンに喧嘩を売ったらどうなるのか、教えてさしあげましょう」
と語るドロシーの瞳は、きらきらと輝いていた。
この澄み切った瞳こそが、かつては地球を滅ぼそうとした乙女の輝きです。
「いやぁ、さすがに殲滅はやりすぎなような」
一応は、おれにも責任があるからなぁ。
【終わらせる者】のうち一体が、こちらに歩を運んできた。そいつがリーダー格のようだ。というのも唯一、戦艦なみの大きな剣を装備しているから。
「ゴゴゴゴゴ! アラベスク様はもう一通の訴状を用意している!!」
ドロシーが小首を傾げる。
「もう一通? まるで、すでに一通は送られていたような言い方ですが」
「細かいことは気にするな、ドロシー。それでもう一通の訴状とは?」
「地球時間、2020年7月10日山手線で行われた、被告・北条尊人の痴漢容疑についてだ。今回、特例として異界法廷で、改めて裁かれることとなった。異界検察庁が起訴したため、本件は刑事事件として扱われることになる」
「……………………」
つまり、あの痴漢冤罪のことか。
あの痴漢冤罪を、こんどは異界人どもが裁くというのか。
あの痴漢冤罪を……あの痴漢冤罪を……
まずリーダー格の【終わらせる者】に、《共有痛覚》をかけた。
これでリーダー格が感じる痛みは、ここにいる全ての【終わらせる者】たちが感じることになる。
その上で、リーダー格の両足を粉砕してから、《魔法の手》で、頭部をつかむ。
「ゴゴゴゴゴ、何をするつもりだぁぁあ」
「……………………」
ゆっくりと頭部を胴体から引き抜いていく。
脊髄がずるずると出ていくぞ。
「あああああああぎゃぁぁああああああああああああああああ抜けるぅぅううううううう」
ドロシーが、なにやら恋焦がれる瞳で見てきた。
「さすが、わたくしの夫。鬼畜の所業が素敵ですわ」
「冤罪の件をまた言い出すとは──異界法廷は殲滅確定!」
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