3,敵の皮を剥いで、赤子をあやすのだ。
乃愛が、ガチで大泣きしたとき──地球の核の回転が停止するのだ。
すると、なんかよく知らんが大変なことになる。
これが乃愛の特殊スキル《地球崩壊》。
「乃愛がガチ泣きしだしたら、速攻で地球の終わりだぞ!」
とおれが叫んだところ、まず女児的種族たちがパニくった。
「ああ地球が終わるです」
「まだレンタルしたブルーレイを返却してないです」
「ゲオに」
「ゲオに」
「だから動画配信サイトに乗り換えろと言ったのです」
「いまどき物理的なレンタルは古いのです」
「古いのです」
「動画配信の時代です」
「このままだと延滞料を取られるのです」
凄くどうでもいいとこで、パニくっているなぁ。
ところで現在、乃愛はまだ泣き出してはいない。しかし、いまにも大泣きをはじめようとしている。
「タケト様! どうするんですか?!」
「イチゴ! あやすんだ、乃愛をあやすんだ! 敵の皮を剥いで、あやすしかない!」
「それ、赤ちゃんの情操教育としてどうなんですかね!」
いやいや、お前、ドロシーの娘だぞ。
ディズニーとか見せたら、逆に死ぬだろ。
おれはさっそく、【終わらせる者】の一体に突撃。
「お前でいいや」
「ゴゴゴゴゴ! 北条尊人、訴状破棄の罪は重──」
「はいはい、わかったわかった」
《局地的時間停止》で、標的の【終わらせる者】だけ時間を停止。
動きを封じたところで四肢を引き抜いてから、時間停止を解除。
そしてベビーベッドの前まで転がしていき、《地獄刃》で、生きたまま皮を剥ぐ。
「おぉぉぉおおおおおお!!!」
という、皮剥ぎされる【終わらせる者】の悲鳴。
「あいっ!」
という乃愛の、ちょっと機嫌がよくなってきた声。
それを見てイチゴが、安堵の吐息をつく。
「やりましたね、タケト様。乃愛ちゃんの機嫌が戻りました。皮を剥がれる敵の悲鳴が、子守歌がわりなのですねぇ。病んでいるところが、さすがタケト様の娘!」
いや、そこは『ドロシーの娘』だろ。
とにかく乃愛の機嫌がなおったので、《地球崩壊》が発動することもなくなった──
ところが。
「あ、タケト様!」
残りの【終わらせる者】たちが、一斉に攻撃してきやがった。
《破壊光線》で。
攻撃力が億単位のレーザー攻撃。
これの直撃をくらったのは、おれだけではなかった。
そばにあったベビーベッドも破壊される。
結果、ベビーベッドで寝ていた乃愛が吹っ飛び、転がっていく。赤子ながらステータス∞なので、ダメージはない。
ダメージはない、が。
さっきまでの上機嫌が吹っ飛んだことも、間違いない。
イチゴが駆けつけて、乃愛を抱き上げる。
「おー、よしよし。イチゴお姉ちゃんですよー」
乃愛がイチゴの虹色髪をつかんで、引っ張り出す。
「ぎゃぁあ! 髪が! タケト様、頭皮が、わたしの頭皮が剥けるから助けてくだざいぃぃぃぃぃ」
おれは慌てて、【終わらせる者】の一体の両足をへし折り、その頭部に飛び掛かる。
そして頭皮を剥いた。
「見ろ、乃愛! イチゴよりも、【終わらせる者】の頭皮のほうが剥きがいがあるぞ!」
乃愛がこちらを見やって、笑顔で両手を打ち出した。
「あうあう、きゃう!」
と上機嫌モードが戻る。
「イチゴ、頭皮は無事かぁ?」
「はい何とか」
これで【終わらせる者】を2体倒したことになるので、残りは10体くらいか──
と思いきや、追加要員が到着していた。
【終わらせる者】がトータルで35体。
しかも最下層全域へと、《破壊光線》を発射しまくりだす。
女児的種族たちが駆けまわる。
「大変です!」
「大変です!」
「大変です!」
「このままでは『天気の子』を延滞してしまうです!」
「大変です!」
「邪魔者を殺すです!」
「殺すです!」
そして機獣竜を大量生産し、【終わらせる者】たちへとぶつけだす。
超絶な激闘。
一方、イチゴは乃愛を抱いたまま、しくしく泣いている。
まだ頭皮が痛むらしい。
……なんだ、このカオスは!
ちらっと見ると、眠そうな目をこすりながら、ドロシーがやってくる。
「尊人、これはどのような騒ぎでしょうか?」
はい、さらにカオスが増します。
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