26,『ドロシーのアンダーヘアは、何色だー?』。
≪幽冥ダンジョン≫の第1階層は、他のダンジョンとは様相が異なっていた。
広いワンフロアに、フロアボスだけがいる。
半透明ドームの中の椅子に座っている、体重1000キロはありそうな巨漢。それが第1階層のフロアボスだった。
「我は第1階層の番人・〈なぞなぞのデリーガ〉! エクストラスキルの効果は、『なぞなぞ勝負で勝たなければ、我は殺せない』だ」
なんじゃそりゃ。
ステータスを覗き見てみると、ふむ、案外マジかもしれない。
Lv 1
HP ∞
MP 1
STR (力) 1
ATK (攻撃力) 1
VIT (生命力) 1
DEF (防御力) 1
RES (抵抗力) 1
AGI (素早さ) 1
HPが∞ということは、確かに通常攻撃では殺せんわけだな。
「よし、ストロベリー。やってやれ」
イチゴを押しやった。
なぞなぞとか、苦手だし。
イチゴは余裕の笑みを浮かべる。
「タケト様、『なぞなぞ』ごときでビビりすぎですよ。わたしに任せてください、コテンパンに伸してやります」
「なんか腹立つが、まぁ頑張れ」
デリーガが言うには、
「『なぞなぞ対決』は、このドーム内で行ってもらう。勝負が始まったら、内部の声は外にも届くが、外からの声は遮断させてもらう」
外部からの助言はできないというわけか。
たぶん根拠のない自信に満ちた足取りで、イチゴはドームの中に入った。
デリーガの向かいにある椅子に腰かける。
足を組み、腕組みするイチゴ。
やはり根拠のないだろう自信に満ちた声で、言うのだ。
「先攻は譲ってあげますよ」
いやまてよ、この自信──もしや根拠があるのか? なぞなぞが得意だったりするのか?
巨大な時計が具現化される。
「解答時間は30秒だ。解答に間違えるか、解答時間が過ぎたら敗北。そちらは5回まで敗北できるぞ。一方、我はなぞなぞの天才なので、一度の敗北で死ぬことになる」
イチゴ、謎のにやり。
「そんなルールですか。でしたら、余裕のよっちゃんですねぇ」
余裕のよっちゃんとは、死語である。
デリーガが第一のなぞなぞ攻撃。
「『きょうはきょうでも、陸にはさまれたきょうは、な~んだ?』」
あ、これは分かる。海峡だな。
なんだ楽勝じゃないか。よし、答えてやれ、イチゴ。
ところがイチゴ、頭を抱えだす。
「えぇぇぇ。『きょう』なのに陸にはさまれているのですか? なんですか、それは。もしかして、サンドイッチ伯爵?」
マジか。イチゴ、マジか。
当然、はずれ。
「ぐぬぬ。やりますね。でしたら、とっておきのなぞなぞでお返しです! 『立つと低くなって、座ると高くなるもの、な~んだ?』」
おお、これは意外と難しいんじゃないか。さすがイチゴ──
「答えは天井だ」
「ぐえっ! そうです!」
秒殺じゃんか、イチゴ。
しかしデリーガの続くなぞなぞ、
「『2匹の子豚が作るスープは、な~んだ?』」
には「豚骨スープです!」と即答してみせるイチゴ。
おお、ちょっと見直した。
イチゴがおれを見やって、「フッ」と笑ってくる。やっぱ腹立つ。
その後、なぞなぞ対決は続けられ、だいたい予想はついたけどイチゴが負けた。
「なんでですか! 【神に愛された案内係】の中では、私がなぞなぞクイーンだったのにぃぃぃいい」
断末魔の叫びのち、結晶体にされたイチゴ。
どうやら5回敗北すると、ペナルティとして結晶体にさせられるらしい。
デリーガが小箱を開くと、数えきれないほどの結晶体が収まっていた。
これまでの敗北者たちか。
イチゴの結晶体(イチゴだけに苺色)も、そのコレクションに加わった。
「さて、そちらの貴方もなぞなぞ対決を行うかな」
「まぁ、やるしかないだろうなぁ」
ドームの中に入り、さっきまでイチゴが座っていた椅子に腰かける。
「はっはっはっ、かかったな北条尊人! このドームに入ったことで、貴様は我がスキル《なぞなぞ領域》に入ったのだ! いくらステータス∞でも、なぞなぞ対決に敗北すれば、結晶体となるのだ!」
「問題ない。勝てばいいんだ」
勝ち誇るデリーガ。
「あいにくだが、この我は古今東西すべてのなぞなぞに精通しているのだ。我が答えられぬなぞなぞなどは、存在しない! さぁ、どんななぞなぞでも、出してこい」
「では、ひとつ。『ドロシーのアンダーヘアは、何色だー?』」
「………………………え?」
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