21,髑髏一族の怨念。
かくしてドロシーが、もう第299階層まで来ている。
あと1階層で、おれとイチゴのいる最下層だ。
「あー、おれが頑張って作ったダンジョンが。嫁に壊されたー」
「結婚は墓場とはよく言ったものですね、タケト様」
おれは拳をかためる。
「いや、おれは挫けぬ。世の亭主を代表して、ガツンと新妻に言ってやる」
「おおタケット、カッコいいです」
最下層の入り口を粉砕し、ドロシーが入ってくる。
暗黒渦を両腕に巻き付けているあたりから、真剣に怒っているのが分かる。
というのも暗黒渦は全ての物質・魔法・スキルを無効化し、消滅させる。
さらにステータス∞に『数値化』する付与効果もあるため、無限を破壊してしまう。
それを防御するには、こちらも暗黒渦を発動せねばならない。
だが、それには魂を削る必要がある。ようは対ステータス∞用の超絶スキルなのだ。
フツーは使いません。
「イチゴ、おれの覚悟を見るがいい」
「おお」
亭主スキル、土下座謝罪を発動。
「お使いイベント忘れて遊び惚けてしまい、申し訳ありませんでした!」
「……プライドを捨てたあたりに敬服します、タケト様」
ドロシーとガチでバトルしたら、この異世界が滅びかねないからな。空気読める男だよ、おれは。
ドロシーが屈みこんで、おれに言う。
「尊人。わたくしは先に帰りますから、オムツのほうよろしくお願いしますね。ところでダンジョンとは、この異世界が滅んでも存続するそうです。そちらのほうが見つけやすいのでしょうか?」
つまり、この異世界を粉みじんにしようかと。そう言うのだ、ドロシーは。
「……いえ、頑張ります」
「わかりました。では、お待ちしてますね」
ドロシーがゲートを開いて、地球に戻っていった。
ハッとした。おれはこの世界を守らねばならない、新妻から!
「というわけで、髑髏島にある≪幽冥ダンジョン≫に行くぞ」
「半殺しにされたアーダさんはどうするんですか? お漏らしした女児的種族たちは?」
「ふむ」
まずアーダのもとに行き、《超絶回復》を使って、ドロシーから受けた負傷を癒す。
つづいて女児的種族のもとに行き、新しい下着を贈った。
「多数の幼女にパンツを贈りまくるのって、犯罪臭しかしないんですけど」
「知るか。とっとと行くぞ、ドロシーが戻ってくる前に」
女児的種族たちはカード化してから、イチゴとアーダを連れて、瞬間移動。
目指すのは、髑髏島。
──髑髏皇帝の視点──
髑髏皇帝は、手下たちを集めた。
この日のため育てた髑髏軍隊を。
あれは何か月も前、髑髏の予言が発生したのだ。
地球という異なる世界に存在した、『もうひとり』の髑髏皇帝。
その髑髏皇帝が、北条尊人なるものに殺された。そして北条尊人が、この世界にもやってくるという予言。
そのとき、髑髏皇帝は決意したのだ。必ずや、この北条尊人なる人間を討つと。
多数の次元世界に存在する髑髏一族を代表して。
「予言のときは来たぁぁぁ! 我々、髑髏一族の怨敵である北条尊人が、ついにやって来るのだぁぁぁ! 必ずや、北条尊人を討ち滅ぼし、地球で殺された我らの同胞の仇を取るのだ!」
2万近くの規模を誇る髑髏軍が、一斉に声を上げた。
「「「「「おぉぉぉぉぉぉ」」」」」
それは髑髏島そのものを揺るがすほどの熱量。
さらに髑髏皇帝には、切り札がいた。
北条尊人と同じく、地球からやってきた男。
いまは用心棒として雇っている、その男の名は黒鵜。
なんとステータス∞という、桁違いの逸材である。
「先生、ついに北条尊人がやってきます」
黒鵜は「ふむ」と言った。
「キウイも喜ぶだろう」
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