20,ドロシーが来る。
ドロシーの歩みは、通常速度だった。神速移動はせず、他の冒険者たちと足並みそろえている。
監視映像で眺めていると、チャラ男5人組のパーティが、ドロシーに接近していた。
第3階層でのことである。
音声を拾う。
チャラ男1、「へい、そこのカノジョ。一人でダンジョン攻略かい?」
チャラ男2、「このダンジョンがいくら難易度『超易しい』だからって、か弱い女子一人じゃ危ないよ」
チャラ男3、「オレたちが守ってあげるぜ」
チャラ男4、「こう見えても、オレたちは全員がレベル8越えの猛者だからね」
チャラ男5、「だからさ、ダンジョン攻略したあとはオレたちと、ぐへへへ」
地球を二度も滅ぼしかけた、正真正銘の魔王ドロシー。
そんな女をナンパするバカども。
ドロシーは、チャラ男たちににっこりした。
「本当ですか? でしたら、お守りください」
かくしてチャラ男たちの先導のもと、第21階層まで降りるドロシー。
そこに待ち受けていたのは、山脈蜘蛛である。S級ダンジョンでは雑魚モンスター扱いだが、実は≪痲臥ダンジョン≫の元ラスボス・ホブックより強い。
当然、チャラ男どもで敵うはずもなく。
チャラ男1、「ぎゃぁぁ逃げろぉぉぉ!」
チャラ男2、「なんでこんな化け物がぁぁぁ!」
チャラ男3、「ママぁぁぁ怖いよぉぉお!」
ドロシーはくすくす笑いながら、
「わたくしをお守りくださるのでしょう? 逃げずに突撃でもしてください」
チャラ男たちを山脈蜘蛛に投げつけるドロシー。
そんな飛んできたチャラ男たちを、ムシャムシャ食べ出す山脈蜘蛛。
チャラ男4、「ぎゃぁぁあ!」
チャラ男5、「食べられるぅぅぅ!」
チャラ男1、「いやだぁぁぁぁあ!」
チャラ男パーティ、全滅。
その後、ドロシーが右手を軽く振ると、山脈蜘蛛が真っ二つになる。
一体ではない。第21階層にいた全25体の山脈蜘蛛が、である。
「スキルも使わずに、一気に皆殺しにしやがった」
「さすがドロシーさんですね。ステータス∞の化け物が来ますよー」
「誰か止めろー!」
誰も止められるはずもなく、ついに100階層に到達するドロシー。
女児的種族たちが立ち向かう。
「雇用主であるタケトのため」
「いざ行かんです」
「行かんです」
「戦うです」
「やればできるです」
「勇気を出すです」
「あぅぅぅぅぅ」
「あぅぅぅぅぅ」
「あぅぅぅぅぅ」
「あぅぅぅぅぅ」
女児的種族たちが一斉に機獣竜を召喚。その数、なんと1000体。
一気に1000体も出してくるとは、ボーナスを奮発したゆえだな。
「やはり女児を動かすには、カネに限る」
「タケト様、事情を知らない人に聞かれたら勘違いされますよ」
瞬間、ドロシーが闇黒スキル《無と渦》を発動。
超π次元からの攻撃によって、1000体が瞬時に消し炭と化した。
あー、1000体の機獣竜が一瞬で倒されてしまった。
女児たちの頑張りが。
ドロシーは微笑み絶やさず、ひとこと。
「そこの幼女たち、邪魔ですよ?」
「ひぃぃぃ怖いです」
「ひぃぃぃ怖いです」
「ひぃぃぃ怖いです」
「ひぃぃぃ怖いです」
「ひぃぃぃ怖いです」
「ひぃぃぃ怖いです」
お互いに抱き合いながら、漏らす女児的種族たち。
ドロシーが素通りしていく。
「やはり女児的種族たちでは荷が重かったか」
「ですが、まだアーダさんがいます。以前、戦ったときは歯が立たなかったようですが──いまのアーダさんなら健闘できるんじゃないですか?」
「まぁ、アーダもかなりレベルを上げたからなぁ」
200階層での2人の戦いは、激しいものだった。
アーダは殺戮スキルのコンボを放ち、勇猛果敢に戦ったのだ。
結局、ドロシーにボコられたけど。
「あぁ、アーダさんが! あんなにレベルアップして、頑張って戦っていたのに! それでもあっけなく倒されるなんて、もう涙が止まりません……ステータス∞とか、舐めていやがりますね!」
おれをステータス∞にした奴がよく言うよ。
しかし、かつての五魔王族たちの気持ちが、いまはよく分かるなぁ。
「ステータス∞め、卑怯なり!」
「ステータス∞の人がよく言いますね」
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