9,「皆殺しです」 「ボーナスです」 「皆殺しです」 「ボーナスです」。
「パーティが全滅したのが、おれのせいみたいじゃないか」
「『みたい』じゃなくて、実際そうですからね。誰が『難易度:鬼畜』のダンジョン作れと言いましたか。こんなダンジョン攻略できるのは、タケト様かドロシーくらいでしょうが」
「アーダだっていけるだろ」
「アーダさんは、第5階層の無限機獣竜のところでゲームオーバーでしょうが」
それもそうだな。
そんなアーダが、映像を見ながら言った。
「師匠。女児たちがいないぞ」
「え?」
確かに第5階層のどこにも、女児的種族の姿がいない。さっきまで何十人もいたのに、いまは一人も見当たらない。
嫌な予感がする。
映像を切り替えて探したところ、ついに見つけた。
≪痲臥ダンジョン≫改め≪北条尊人の爽やかダンジョン≫の出口だ。
50人ほどの女児が一列になって、歩いていく。
なんか白雪姫の小人っぽい。いまにもディ〇ニーの歌を歌いだしそう。
女児たちの行く先には、魔王討伐隊の本隊がいた。先ほど全滅したパーティは、精鋭だったとはいえ、数的には討伐隊の一部に過ぎなかったのだ。
ついに女児的種族たちが、魔王討伐隊のところまで行きついた。
「フロアボスとして」
「お前たちを皆殺しにするです」
「するです」
「大いに働けば」
「わたし達の雇用主である北条様もいたく喜ぶのです」
「喜んでくれたら、ボーナスが出るのです」
「ですから皆殺しです」
「皆殺しです」
「殺すです」
一方、討伐隊の連中は失笑。
「おいおい。どこのガキだ?」
「お嬢ちゃんたち、ここは危ないからお家に帰りな」
「とんだガキどもだなぁ、はっはっはっ」
女児的種族たちが念じだす。
「あぅぅぅぅう」
「あぅぅぅぅう」
「あぅぅぅぅう」
「あぅぅぅぅう」
《創造スキル》を発動しているわけ。
そんな映像を見ていたイチゴが、恐怖の口調で言う。
「タケト様……これ、地獄絵になるんじゃ……止めてくださいよ」
「もう間に合わん」
「タケットぉぉぉぉ」
映像内では──ついに機獣竜が出現。
しかも同時に、50体。
一体でもA級ボス格な機獣竜が、50体。
それが一斉に、魔王討伐隊の本隊に襲い掛かった。
「ぎゃぁぁぁぁぁあああ!!」
「な、なんだコイツらはぁぁぁ!!」
「たすけてぇぇぇぇ!!」
「死ぬぅぅぅぅぅぅぅ!!」
「おぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「あぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「ぐぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「母ちゃぁぁぁぁぁぁん!!」
「すいませんすいませんすいません殺さないでくださいすいませぇぇぇぎゃぁぁぁああ!!」
「お願いします、息子がいるんです、息子がぁぁぁ食べないでぇぇぇぇぇぇ!!」
「皆殺しです」
「ボーナスです」
「皆殺しです」
「ボーナスです」
「皆殺しです」
「ボーナスです」
「皆殺しです」
「ボーナスです」
800人はいた魔王討伐隊──全滅。
おれは映像を消した。
ダンジョン最下層は、重た~い空気になった。
「タケト様、なんつー女児を連れてきたんですか」
「女児的種族だから」
やがて女児的種族が戻ってきたので、《封印遊戯》でカード化した。
たぶん、この女児たちを解き放ったら、この世界は一週間で滅びるなぁ。
「さ、気を取り直して──旅を続けよう」
旅を続けたところ、ついに王都にまで来てしまった。
魔王ゾルザーギの手に落ちた王都である。
いまも魔王軍が支配していた。
人間たちが魔族によって奴隷のように扱われている。
また街路には、人間の死体が山積みにされていた。おそらく反抗した者たちの末路だろう。
「むごいことをするなぁ。
よーし、関わるとメンドーだから、なにも見なかったことにするぞー」
「了解でーす」
というわけで、王都はスルーした。
こっちはヒマじゃないんだ。よその世界の魔王なんか殺していられるか。
その5時間後。
「けどタケト様、≪幽冥ダンジョン≫の場所を知っているのは、魔王ゾルザーギだけでは?」
「あ、そっか。じゃ、人権に目覚めたので、王都を解放するぞ!」
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