8,≪北条尊人の爽やかダンジョン≫の難易度が、鬼畜。
──討伐隊パーティの皆さんの視点──
ボーンは悲鳴をあげかけ、なんとか堪えた。
雑魚モンスターの中に、ドラゴンがいる。
「た、隊長~! ド、ドラゴンがぁぁあ~!」
隊長は歴戦の猛者である。
勇者ドロシー亡きいま、魔王ゾルザーギを討つのはこの男をおいて他にはいないだろう。
その名はアグガン!
そんなアグガンはキメラ型モンスターによって、頭から食べられていた。
「ぎゃぁぁぁアグガン隊長がぁぁ食べられているぅぅぅぅぅぅぅ」
ボーンは叫びながら、キメラ型モンスターを斬りつける。
ボーンは知らないことだが、このキメラ型モンスターはその名をキメラガン。
かつては、五魔王族が一柱ハムナーの≪サハラ・ダンジョン≫第50階層を、縄張りにしていた。雑魚モンスターではあるが、真のS級ダンジョンで経験を積んできたのである。
キメラガンからしてみると、この異世界の冒険者たちは歯ごたえのない奴らばかり。
──主人公の視点──
映像スキルで、討伐隊パーティの様子を眺める。
現在は第5階層にいて、キメラガン率いる雑魚モンスター隊の総攻撃を受けていた。
「あれ。いまキメラガンが食べているのは、パーティの隊長じゃないか? おいおい、雑魚モンスターにやられるって、どういうことだ? これからフロアボスも控えているのに」
「あの~、タケト様。雑魚モンスターの中に、ドラゴンの姿もあるんですけど? というかキメラガンって、A級ダンジョンだったらフロアボス格ですよ」
「知ってるさ」
「いやいやいや、タケト様。これ全滅確定。討伐隊パーティ、生きて帰る人いませんよ。どうするんですか、魔王ゾルザーギ倒す前に、≪北条尊人の爽やかダンジョン≫で皆殺しにされるじゃないですか」
「イチゴ、お前がダンジョン運営したいというから、おれは協力してるんだろ」
「ここまで乗り気にならなくて良かったんですけど! あ、死のトラップが──」
──討伐隊パーティの皆さんの視点──
ボーンは、アグガン隊長を諦めた。
半分も食われたので、助かりようがない。
「て、撤退だぁぁ! みな、一時撤退し、体勢を立て直すぞぉぉぉ」
瞬間──足元でポチっという音がした。
「え?」
ボーンは恐る恐ると足元を見る。
そこには大きなボタンがあった。気づかずに踏んでしまったのだ。
ボーンは知らなかったが、これこそ北条尊人が用意した『死のトラップ』のひとつ。
踏むと──問答無用で、爆散するトラップ!
「あぎゃぁぁぁあああああああ」
ボーンが爆散して死んだ。
──主人公の視点──
「あー、ボーンが死んでしまった」
「タケト様ぁぁぁ、これはもうダメですよぉぉお。討伐隊パーティを助けてあげてくださぁぁぁい」
「一度ダンジョンに入ったら、頼れるのは己の力だけだ。自力で助かってください。あ、フロアボスのご登場だ」
「フロアボスって──ええ、タケト様、この選定は悪魔的すぎますよ!」
──討伐隊パーティの皆さんの視点──
パーティメンバーが恐慌をきたしている中、ひとり余裕の男がいた。
その名は、剣士カブ。
カブは最年少の精鋭パーティメンバーであり、素質はアグガン隊長さえも上回っていた。いや、すでにレベルの面でも、アグガンを越えていただろう。
その証拠に──
「《火炎の刃》!!」
アグガンを殺したキメラガンを、カブは必殺スキルで一刀両断にしてしまったのだ。
「ふっ。どいつも使えないな。だがオレ様ひとりいれば、充分だ。魔王ゾルザーギも、このオレ様が斬り伏せてくれる!」
そんなカブの目の前に、女児たちが現れる。
「なんだお前たちは?」
カブは知らないことだが、この女児たちこそが《デウスマキナ》でこき使われていた女児的種族である。
女児の一人が胸を張って言う。
「わたしたちが、このフロアのボスです!」
他の女児たちも続く。
「そうです!」
「フロアボスです!」
「お前を殺すです!」
「やったるです!」
カブは、敵ならば女児でも殺す男だった。
なので、勝ち誇って言うのだった。
「クソガキどもが、オレ様の剣技で殺されることを有難く思うんだな」
「あぅぅぅう」
「あぅぅぅう」
「あぅぅぅう」
と女児たちが、何やら念じだす。
「なんだぁ?」
カブは知らないことだが、女児的種族たちはいま《創造スキル》を発動したのである。
かくして、機獣竜が爆誕。
「な、なんだ、コイツは! うぉぉぉ、オレ様の《火炎の刃》をくらえぇぇぇぇ!!」
何とか機獣竜を倒すカブ。
「ど、どうだぁぁ」
しかし、機獣竜は無尽蔵に出てくるのである。
「そ、そんなぁぁぁぁぁバカなぁぁぁぁぁ」
かくしてカブは、八つ裂きにされた。
──主人公の視点──
「あれ。ついにパーティが全滅しやがった」
「タケットぉぉぉぉぉお」
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