6,イチゴ、ダンジョン運営にダメ出しの嵐。
結局、イチゴもついてきた。
「わたし一人でいるときに、暴漢に襲われたらどうしてくれるんですか! わたし、美女すぎますからね! レ●プしたろうという男どもが、わんさかいますよ!」
たしかに外見だけは美女なので、ツッコめんのが癪だ。
というわけで、《不可視》スキルで姿を隠してから、≪痲臥ダンジョン≫入り。討伐軍に気づかれないようにしたわけ。
ただ、このままだとモンスターも気づいてくれなさそうなので、ダンジョンをしばらく進んでから《不可視》を解除。
さらに進むと、分岐路に出た。
「《探索》によると、先行した討伐軍の精鋭パーティは右側に進んだようだな。おれたちは左側に行くとするか」
ここで案内係のイチゴがダメだしする。
「このダンジョンは、なってないですね。30秒ルールに反しています。ダメダメです」
「なんだ30秒ルールって?」
「冒険者がダンジョンに入ってから、30秒以内に最初のモンスターと遭遇させよ──というものですよ。地球ダンジョンならば運営するラスボスは、この30秒ルールに厳しかったものです。ね、アーダさん?」
アーダが腕組みして、
「たしかに鬼の王も、30秒ルールは徹底させていた」
マジか。どこかの店の営業マニュアルみたいだな。
そしてさらに憤るイチゴ。
「本当に、なってないですね! タケト様、一気に最下層まで行き、ダメダメなラスボスの顔を拝んでやりましょう!」
「あいよ。アーダ、《神速》でいくぞ。イチゴはいったん脳内に戻れ」
「了解です」
《神速》移動を始めて、やっと最初のモンスターと遭遇。
遭遇した瞬間には、アーダがそいつの頭部を握りつぶしていたが。
そのままの勢いで駆け抜け、47秒後には最下層に到着していた。
58階層に。
脳内から出たイチゴが、ダメ出しの嵐。
「最下層が58階層って、どういうことですか! それにモンスターの数も種類も足りないし、トラップのひとつもない!
ぺらっぺらのプレステゲームみたいじゃないですか! 冒険者をもてなそうという意識が、欠片もないですね! わたしは同じダンジョンを運営する者として、哀しいです!」
いや、お前はただの案内係だっただろ。
まぁ【神に愛された案内係】だから、ただのではないか。
ちなみにイチゴが叱りつけているのは、このダンジョンのラスボス。
ヒト型だが腹部に巨大な『第3の眼』があり、背中から触手が伸びている。レベルは98。地球ダンジョンだったら、【四戮族】ていどか。
「な、なななな、なんだお前らは! 我がホブックのラスボス・ステージに来たとたん、無礼なことばかり言いやがって! 最高レベルが33程度のお前らが!」
そういえば、まだレベル偽装したままか。
「アーダ、本来のお前のレベルを表示してやれ」
アーダのレベル365と、そのほかのステータスが表示される。
それを見たとたん、ホブックが悲鳴をあげて漏らした。
「ぎゃぁぁぁぁ化け物ぉぉぉぉ! なんが化け物が来たぁぁぁぁ!」
舌打ちするアーダ。
「キモい体をしている貴様に、化け物呼ばわりされる筋合いはない。首を刎ねる」
「まてまて」
さっそくチェーンソーで首刎ねに入ろうとするアーダを、おれは止めた。
「≪幽冥ダンジョン≫について聞いてからだ。
ホブックといったか。いいか助かりたかったら、≪幽冥ダンジョン≫がどこにあるのかを──」
「そんなことよりも、このダンジョン運営はどうなっているんですか! サボりすぎです! こんなのなら、このわたしが代わりをやったほうがいいですね!」
イチゴが遮ってきた挙句、何やら訳の分からないことを言いだした。
「おいイチゴ、なに言ってるんだ?」
「代打イチゴの出番のようですね。
さて、ホブック。これからはわたしが指示出しします。討伐軍パーティ相手に、まともなダンジョン運営というものを見せてあげましょう」
「……本気か、イチゴ? ラスボスの代打をやって、討伐軍パーティを迎えようというのか?」
「そうです」
「イチゴ、お前という奴は…………………………なんか楽しそうだな。おれが、ラスボス役をやろっか?」
「それは、この世界が滅びるから止めてください」
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