3,勇者をやっていやがった。
盗賊団に引きずられていく、イチゴ。
なんか不憫なので、助けてやろう。
しかし偽装ステータスに見合った動きでいかねばな。
瞬間移動も神速移動もなしで。
盗賊団の進行方向へ、ジョギング速度で移動。
追いついた。馬とか乗ってなくて良かった。
「どうも、どうも。うちの案内係を返してもらえますかね」
イチゴを引きずっていたのが、盗賊団のお頭らしい。
「なんだ、てめぇらは」
「そこの虹色の髪の女の知りあいです」
異世界の盗賊と会話できるのは、翻訳スキルが自動発動しているため。
盗賊団側が、こちらのステータスを確認しているのが分かった。
どうやら地球よりも、ステータス概念が一般的らしい。さすが異世界。
「ぐっ。てめぇら、ただ者じゃねぇな。とくにそっちの女は、英雄バブロ並みのレベルでいやがる」
『そっちの女』とはアーダのことだ。アーダの偽装レベルって、たかが33なんだが。まぁ、おれは9だけど。
一方、アーダはあくびしている。やる気がない。イチゴを助けることへの、このどうでもよさよ。
「そうだぞ。こちらのアーダさんがな、お前らを皆殺しにしてしまうぞ。それが嫌なら、そこのレインボー女を寄こせ」
捕らわれのイチゴが抗議してきた。
「レインボー女って、タケト様いろいろと略しすぎですよ!」
盗賊団のお頭が剣を抜き放った。
「せっかくレインボー一族の女を捕らえたっていうのに、そう簡単に諦められるかよ! 市場価値が数億ゴルの一族だぜ!」
ゴルというのが、ここの通貨か。にしても──
「レインボー一族って、なに?」
イチゴも同感らしく、
「まさか、わたしの真似をして髪染めている奴らがいるんですね! タケト様、わたしのレインボーは地毛ですよ!」
と、変なところをツッコんできた。
おれはアーダの耳元で言う。
「偽装レベルで考えると、おれが盗賊団たちを片付けるわけにもいかない。任せるよ」
「師匠の命令ならば仕方ない。では皆殺しコースで」
「あ、まった。ちょっと様子を見よう」
お頭の側近が進言してきたのだ。
「お頭、よく考えると、この女はレインボー一族ではないのでは? レインボー一族の特徴は、虹色に発するオーラですが──この女にそんなオーラは見られません。ただ髪が虹色なだけで」
「うむ、つまり?」
「つまり、レインボー一族のパチモンかと」
この会話は、イチゴの耳にも届いていた。
「誰がパチモンですか! タケト様、こいつら皆殺しにしてください! 八つ裂きにして! わたしをパチモン呼ばわりした、コイツらの内臓を引き抜いて豚の餌に──うげ」
放り捨てられたイチゴ。
盗賊団のお頭が剣をおさめる。
「どうやらレインボー違いだったようだ」
「そうらしいね」
盗賊団が踵を返して立ち去る。無用な流血沙汰を避けられて良かった。
北条尊人Version2は、平和主義だからね。
「大丈夫か、イチゴ?」
「うう。精神的レイプされた気分ですよ。なんですかレインボー一族って、どっちがパチモンだか思い知らせてやりたいです」
「この異世界固有の種族だろ。というか、たぶんこの世界じゃ、お前のほうがパチモンだぞ」
その後、おれたちは小規模な都市にたどり着いた。
盗賊団たちの様子から想像できたが、この世界の文明レベルは中世あたりらしい。
「周囲の人々がじろじろ見てきて何だろうと思ったが──イチゴ、お前の髪の色が目立っているんだ。いっそ黒く染めてしまえ」
「タケト様、わたしのアイデンティティを殺す気ですか?」
「お前のアイデンティティ、髪の色なの?」
都市の中央にある広場まで行くと、そこに女の像が建てられてあった。
説明プレートによると、『40年前、魔王ゾルザーギを打ち倒した女勇者ドロシー様』と記されている。
「なるほどなぁ。どうりでドロシーに似た像だと思ったが、当人だったかぁ…………………………いや、あいつ異世界まで来て、なにやってたの」
この異世界に来たことはあるだろうと思っていたが──ドロシー、まさか魔王を倒して勇者していたとは。
地球じゃ、魔王的なものをやっていたくせに。
鎧を装着した男が広場に駆けこんできて、誰にともなく叫んだ。
「大変だ! 大変だ! 王都が落ちたぞ!」
都市の人たちが集まり出し、恐慌をきたす。
「なんだって! 王都には英傑たちによる騎士団がいるはずだろ!」
「魔王軍だ! 魔王軍がたった1日で征圧してしまったんだ!」
「そんなバカな! 勇者ドロシーが封じたはずではなかったのか!」
「魔王ゾルザーギが復活したんだぁぁぁ!」
「そんなぁぁぁぁ!」
「タケト様、この異世界、大変なことになっていますよ?」
「いいか。おれたちの目的は、オムツだ。オムツのことだけを考えろ。オムツのことだけを!」
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