1,おれとダイヤの物語:完結編(全米が泣いた)。
地球に帰還。
とりあえず、〈おもてなし騎士団〉本部に戻った。
〔いやぁタケト様、【超人類】も口ほどにもない連中でしたね~〕
と、イチゴ。
ハンマーがわりに振り回された恨みは忘れたらしい
〔まぁな。この調子だと〈無神〉というのもたいしたことなさそうだな〕
〔むむむむむ、〈無神〉のことを考えると頭痛が痛いですぅぅ〕
そういやイチゴは、〈無神〉関連の記憶を封じられているんだったっけ。
しかし考えてみると、〈無神〉とは、おれにステータス∞を付与したイチゴのボスなわけだよな。
とすると、強さも【超人類】などの比ではないような気もするが。
ソフィアがおれの肩を叩いて、
「北条さん。あなたは地球を救ったので、地球名誉勲章を授与するわね。アース勲章とか名付けて、第一号が北条さんね」
「いらん」
魔神の称号だけで面倒なのに、そんな大層な(くだらないともいう)勲章などもらってたまるか。
「授与するから。そういうものなのよ、北条さん。あたしにダンジョン調査機関のトップとして、仕事をさせなさい。授与式に出ないと、あたしは泣くわよ」
新手の脅しだな。
「分かった分かった。娘のオムツを取ってきたらな」
アーダを手招きして、
「おれは異世界のダンジョンに行って、テキパキとオムツを取ってくるから」
アーダは捨てられた子犬の顔。
「師匠! 新たなダンジョン攻略に、私は連れて行ってくれないのか!」
「お前、〈デウスマキナ〉での戦いでガス欠状態じゃないか」
つまりMP切れだ。
「私も行きたい~! 師~匠!」
だだをこねるアーダ。
ここでアーダを説得するより、連れて行ったほうが早いか。
「仕方ないな。5分後に出発だぞ」
アーダは挙手して、
「師匠、おしっこに行ってくる!」
「いちいち報告するな」
アーダを見送ってから、ふと思う。
そもそも手元にオムツはないのかな?
これまで大量のダンジョンを攻略(または破壊)してきた中で、けっこうなアイテムを入手してきた。それらのアイテムはぜんぶ異空間に保管してある。
その中に、SSRアイテム〈天国のオムツ〉があってもおかしくない。
脳内でアイテムリストをスクロールして、〈天国のオムツ〉を探す。
オムツはなかったが、〈滅びのダイヤ〉ならあった。
……………………
あれ。
おれ、ダイヤを持ってた。
んなバカな。
アイテム登録の日付を確認すると、≪万里の長城ダンジョン≫以外のダンジョンを吹っ飛ばした日だ。
確かに全てのダンジョンでアイテムを略奪していたが──その中に、おれのダイヤが混ざっていたのかぁ。
にしても〈冬宮殿〉の手を離れたあと、ダイヤがダンジョンに戻っていたとはなぁ。
……えーと。
これは困った。こんなに大騒ぎしておいて、実はとっくにダイヤ持っていました、とか言えるわけがない。
沽券にかかわる。というか恥ずかしい。
……かくなるうえは。
誰かに濡れ衣をきせるしかない。
近くにいた〈おもてなし騎士団〉幹部(すなわち元〈聖ダークサイドムーン騎士団〉幹部)を、手招きする。
「つかぬことを聞くがな。お前の知る限り、最悪最低な犯罪組織はどこだ?」
「はぁ。でしたら、〈666フッド〉でしょうね。【変転】以後も人身売買、麻薬密売などなど悪事の限りをつくしています。とくに臓器を闇ルートで売るため、健康な市民を拉致しては、生きたまま解剖しているそうですよ」
「で、本拠地は?」
「テキサス州です」
詳しい住所を聞いたところで、瞬間移動。
〈666フッド〉本部は、〈おもてなし騎士団〉に負けぬ要塞だった。
いきなり現れたおれに、護衛たちが動揺した様子で銃を向けてくる。
「貴様は何者だ?!」
「おれのダイヤを取り返しにきたぞ!!」
「……はぁ?」
「おれのダイヤを返せぇぇぇぇぇ!!!」
護衛どもの生首をむしり取る。
そして本部内に突入。〈666フッド〉構成員たちが、大慌てで抗戦してくる。
「貴様ぁあ何者だぁぁあ!!」
という声があったので答えてやろう。
「北条尊人だ」
おれの名はこんなところにも浸透していたらしい。
名乗っただけで、〈666フッド〉構成員たちが反応したので。
「ぎゃぁぁぁ北条だぁぁぁ!」
「ニッポンの第六天魔王が来たぞぉぉ!」
「怯むなぁ殺せぇぇぇ!」
「殺せぇぇぇぇぇぇ!」
「殺すのはおれだ! このダイヤ泥棒どもが!」
両手を刃化して、神速で駆け抜けながら構成員たちを切り裂いていく。
「ぎゃぁぁあああ腹を裂かれたぁぁぁぁ」
「首ぃぃぃぃおれの首ぃぃぃい」
「あぎゃぁぁぁぁあ俺のハラワタがあぁぁぁぁ」
「うげぇぇぇぇぇぇえ」
「おぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁ」
あらかた殺したところで、〈666フッド〉ボスの部屋に突撃。
ボスは大男で、いちおうはステータスを持っていた。
レベル88なので、まぁ人間にしては強いほうなんだろうが──レベル3桁が普通な【超人類】とやりあっていたから、感覚がマヒしている。
「ほ、ほほほ、北条ぉぉぉぉぉ! まって、まってくださいぃぃぃ! あなたさまのダイヤを、我々は持ってないんですぅぅぅぅぅぅぅ!」
だろうね。おれが持っているし。
「お前、いまおれのダイヤを飲みこんだな」
「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!???」
ボスの腹を裂いて、胃袋を引きちぎった。
こっそりとアイテムリストから〈滅びのダイヤ〉を出して、ボスの胃袋の中にねじ込む。
そして、あたかも胃袋から取り出したかのように、ダイヤを掲げた。
「ついに見つけたぞ! おれのダイヤは、〈666フッド〉が持っていたのだ!」
胃袋を引きずり出されたのに、ボスはまだ生きていた。
そして叫んだ。
「濡れ衣だぁぁあ」
「口封じ」
ボスの頭部を潰しておく。
そのあと生き残っていた〈666フッド〉構成員も皆殺し。
これで真実を知る者はいなくなった。
〈おもてなし騎士団〉本部に戻ったおれは、アーダたちにダイヤを見せた。
「ようやくダイヤを見つけたぞ。〈666フッド〉が盗んでいたんだ。悪い奴らだぜ」
おれの脳内で、すべてを目撃していたイチゴが言う。
〔……タケト様、冤罪事件を起こしやがったです〕
〔善良な人間が濡れ衣を着せられるのを冤罪というんだよ。〈666フッド〉は犯罪組織だったので、自業自得という〕
〔なるほど! 納得です!〕
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