100,さらば【超人類】~、次はオムツだ。
地球を救うのも一苦労だ。
発射された《惑星破壊》エネルギー弾の前まで瞬間移動し、蹴っ飛ばす。
蹴り飛ばした《惑星破壊》弾が、〈デウスマキナ〉にぶち当たる──はずだった。
ところが〈デウスマキナ〉から、機械群が伸びてきて、山脈なみの両腕と化す。そして《惑星破壊》弾をキャッチすると、投げ返してくる。
おれは右手で受け止めて、改めて放り返す。
すると〈デウスマキナ〉機械腕が、またもキャッチしてから投げて来る。剛速球。
それを受け止めて──
〔なんかキャッチボールになったな〕
〔お父さんにキャッチボールしてもらえなかったタケト様が、こうして敵とキャッチボールすることで、幼いころの心残りを解消するのでした──〕
〔おい、勝手に変なナレーション入れるな〕
《宇宙破壊》を《惑星破壊》弾に叩き込んで、相殺することで消滅させた。初めからこうすれば良かったな。
こんどは〈デウスマキナ〉が、《惑星破壊》弾の連射に入ってくる。
ならばこっちも、《宇宙破壊》を連続発動するか。
ふいに電話がかかってきた。
真空なのに着信音が鳴り響くスマホ。知らない間に、スキルで改造されていたのか。
さてはドロシーの仕業か。
「もしもし?」
《惑星破壊》掃射を、連続《宇宙破壊》で潰しながら、
「あのさドロシー、いま手が離せないんだが?」
[尊人、これは重要なことです。とても、とても、重要なことです]
ふむ。ドロシーが重要と見なすとは、いったい何事だろう。
「いったい何事だ?」
[乃愛のオムツの在庫がなくなりました]
「……」
いや、確かに大変かもしれないけれども。
「アイテム創造で造ったら、どうだ?」
[乃愛の肌は繊細ですから、最高級の中の最高級オムツが必要なのです。レア度でいえば、SSR。ところがアイテム創造では、せいぜいSRが限界でして。
そこで尊人には、≪幽冥ダンジョン≫に赴き、第五五四階層にある宝箱からSSRアイテム〈天国のオムツ〉を取ってきていただきたいのです。大至急]
「……いま地球を守ってるんだけど?」
[大至急です、あなた]
最後の『あなた』には、愛と命令文がこめられていた。
「……了解」
通話が切れた……。
〔というか≪幽冥ダンジョン≫って、なんだ? ≪万里の長城ダンジョン≫以外は、ぜんぶ吹っ飛ばしたはずなんだが〕
するとイチゴが答える。たまには案内係として仕事するのだな。
〔別世界にあるダンジョンの一つですね〕
〔え、ドロシーの奴。別世界のダンジョンまで行ってこいというのか? たかがオムツのために?〕
〔嫌でしたら、お断りの電話を入れれば良いのでは? 夫として、ビシッと言うのですよ〕
〔…………よし、別世界に行こう〕
その前に【超人類】を片付けるか。速攻で。
《惑星破壊》砲口に飛び込み、破壊。
そこから〈デウスマキナ〉母艦内に飛び込み、ぐぉぉぉと神速飛翔。
とある部屋に入ったところに、大男がいた。
「はっはっはっ! 来たか、北条バケト! 我が名は将軍ローググ──」
「奴隷解放! ブラック労働反対!」
自由を愛するパンチを、ローググの腹にぶち込んだ。内臓破壊。
「ぐぇぇぇぇぇええ」
半死のローググの体をもって、いったん〈デウスマキナ〉表面に戻る。
「女児的種族の諸君、復讐のときだ!」
半死のローググを放ると、血に飢えた女児的種族たちが群がって、肉を引き裂き出した。
「ブラック労働に死です!」
「怒りの奴隷パンチを受けるです!」
「ハラワタで縄跳びしてやるです!」
「舌を引きちぎるです!」
「眼球をえぐるです!」
「死ねやオラァです!」
「自由の味です!」
ローググが生きたままバラバラにされるのを見届けてから、〈デウスマキナ〉内に戻る。
【超人類】の兵たちが向かってきた。
「北条を殺せぇぇ!」
「〈デウスマキナ〉様をお守りしろぉぉ!」
「【超人類】の意地を見せてやれぇぇ!」
《焼かれる秋刀魚の気持ちを知れ》を発動。
これは、おれの視界に入った生き物を焼き殺すスキル。ツワモノならともかく、雑魚ならこれで燃え尽きる。
「我が名はドボル、ぎゃぁぁああ熱いぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ死ぬぅぅぅぅぅう!! 体がぁぁあ燃えるぅぅぅううううう!!!」
なんかドボルも焼いたらしいが、もう時間がないので無視、無視。
ついに〈デウスマキナ〉の中枢に到着。
核となる〈デウスマキナ〉本体がいた。すなわち【超人類】の指導者である超高性能AIが。
「北条バケトぉぉぉぉぉぉ!!! 貴様ぁぁぁ、自分が何をやっているか分かっているのかぁぁぁ!! 我々なくして、誰が〈無神〉を止めるというのだぁぁあ! われわれには、すべての分岐した宇宙を守る使命があるというのにぃぃぃぃ!」
「奴隷ばかり作っていて、よく言う」
「必要なのだぁぁ! 奴隷を取り込むことで、【超人類】はさらに偉大な種族へと進化することができるのだぁぁぁ! そしていつの日か、分岐宇宙すべての敵である〈無神〉を倒す日が来るのだぁぁぁぁ!!」
「オムツ、取りに行かなきゃなんで」
《事象の地平線》を発動。
〈デウスマキナ〉本体を、極小ブラックホールに叩き込む。
「バケトォォォォォォォ…………」
「だからタケトだって」
本体の消滅で、〈デウスマキナ〉母艦も自壊をはじめた。
瞬間移動で、〈デウスマキナ〉表面に出る。
パニックになっている女児的種族たちを、ひとまず《封印遊戯》でカード化して保護。
モンスター扱いしちゃったが、ま、許せ。
つづいて、アーダとソフィアと合流。
「【超人類】ぜんぶ倒してきたから、地球に戻るぞ」
「もうなの、北条さん?! 雑よ、雑だわ!」
「さすが師匠だ、仕事が早い! 総集編のようだ!」
二人をつかんで地球に瞬間移動。
さらば、【超人類】。
次は、オムツだ。
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