99,知ってた。
とりあえず、機獣竜増産も止まったので、アーダたちは自力でどうにかなるだろ。
そこでローググとかいう将軍を探すため、〈デウスマキナ〉内に戻ろう──としたところ、何やら懐かしい音楽が鳴り響く。
チャルメラの音だ。
女児的種族が騒ぎだした。
「大変です大変です!」
「地球が吹っ飛ぶです!」
「ぶっとびです!」
「まてまて騒ぐな。何事なのか教えてくれ」
「いまのチャルメラは」
「《惑星破壊》砲が発射準備に入ったことを」
「簡潔に伝えているです」
と、3人の女児的種族が教えてくれた。
《惑星破壊》とやらは、地球を破壊する威力があるのか。ならば《宇宙破壊》クラスということで。しかし──
「それは理屈にあわないな。【超人類】の目的は、新たな奴隷種族を捕獲することだろ。地球が跡形もなくなったら、地球人類という奴隷候補種族もパーだぞ」
女児的種族が互いに顔を見合わせて、
「分かっとらんですね、北条魔神は」
「北条魔神は分かっとらんです」
「呆れることに、北条魔神は分かっとらんです」
「何が分かっとらんのだ?」
この女児的種族には、イチゴ的なイライラを感じさせる。
女児的種族の代表者が言う。
「確かに地球人類を奴隷にするのが、【超人類】の副次的な目的だったです。しかしながら、いまやそんな副次的な目的に興味はないです。〈デウスマキナ〉様の思考と思想は、180分ごとに更新されるので。
そして【超人類】のメインとなる目的とは、地球を経由して〈無神〉の世界へ攻撃することです」
別の女児的種族が後を引き継いで、
「厳密に言うならば、地球と接続しているダンジョンを介するのですね」
「そのダンジョンなら、おれがぜんぶ吹っ飛ばしたんだが」
女児的種族たちが「それはおかしいですね」と話し合い始める。
やがて答えが出たらしい。
「もしや、ダンジョンの大本だけは残したのでは? 最も長大なダンジョンですよ?」
「なるほど。それは≪万里の長城ダンジョン≫のことだな。そこだけは残しておいたんだが──」
「そのダンジョンを経由して、《惑星破壊》のエネルギー奔流を、〈無神〉の世界まで叩き込む作戦です」
「じゃ、地球が吹っ飛ばされるのはついでか」
「ついでですね」
「ついでです」
「まさしく、ついでです」
なんか知らんが、3人の女児的種族からのお墨付きをいただいた。
ふむ。いま地球が消し飛ぶと何かと困る。子育ての環境として、地球ほど素晴らしいところはあるまい。たとえ宇宙が広いといっても。
〔さらなる善行ポイントを稼ぐときのようだな、イチゴ。ここで地球を守れば、一気にプラス1万も夢じゃない。なにか景品でも出るのか?〕
〔知らんです。善行ポイント設定も、さっき思い出したくらいですよ。知るわけないだろうがです〕
今更ながら思うが、こいつ、案内係としてどーしようもない。
さて、ここでおれの選択肢は、次のうちの3つ。
1,〈デウスマキナ〉全体を破壊する。
2,〈デウスマキナ〉本体を見つけて破壊する。
3,《惑星破壊》砲を破壊する。
〈デウスマキナ〉全体の破壊は、このデカさなので時間がかかりそうだし、却下か。
「女児的種族の諸君。〈デウスマキナ〉本体か、または《惑星破壊》砲の場所を知っているか?」
「〈デウスマキナ〉様の本体は知らんとです」
「《惑星破壊》砲の砲口ならば」
「地球側に出ればひと目で分かるですよ」
「それもそうだな」
〈デウスマキナ〉表面の地球側に瞬間移動。
確かに、火口のような砲口が現れている。
これを破壊して、地球を守ってやるとするか。
では、どのスキルを使うかなー。選択肢が多すぎるのも考えものだ。
「師匠!」
「北条さん!」
アーダとソフィアが駆け寄ってくる。
「話は後だ、アーダ、ソフィア。おれはいま地球を救うところで──」
「おお、さすが師匠だ。地球を救うと簡単に言ってしまえるのは、師匠だけだろう」
「まって北条さん。地球を救うって、どういうこと? 地球がピンチなの?」
「うるさいな、お前たち。だから、いまはそれどころじゃないと──ちょっとトイレ行ってくる」
尿意というのは、時と場所を考えないものだな。
〈デウスマキナ〉内に入り、男子トイレを見つけて用を足す。
すっきりしたので、さて地球を救うぞ、と〈デウスマキナ〉表面に戻る。
ちょうど《惑星破壊》の砲口から、禍々しいエネルギーの塊が発射されたところだった。小惑星みたいに。
なんか飛んでいったなぁ。
〔タケト様。あれが着弾したら、地球がパッと吹っ飛びますよ〕
〔知ってた〕
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