98,奴隷解放の巻。
精神攻撃のアホな夢が消えて、司令部にいる現実に帰還。
司令部内の監視装置で、〈デウスマキナ〉表面での戦いも観察できるようだ。
どれどれ。
『ここは私に任せて先へ行け』のアーダとソフィアが、ボロボロになりながら戦っている。
〔なんかうちの弟子たちが、ピンチじゃないか?〕
〔そうですねぇ。これはフルボッコされるコースに入ってますね。ドボルは後回しにして、アーダさんたちを助けにいきます?〕
〔まぁなぁ……〕
しかしここで助けに行ったら、アーダたちのプライドを傷つけかねない。
最近のおれは気が回る男なのだ。
〔こういうときは陰ながら助けてやるのが、師匠というものだ─────いや、まて。誰が師匠だ!〕
〔ひとりノリツッコミの切れが悪いですね。タケト様、まだまだ私の域には到達できていないようですな。私ほどのボケ担当にはなかなかたどり着けないのでしょう──って、誰がボケ担当やねん!〕
エセ大阪弁を使いやがった。
〈デウスマキナ〉の表面へと瞬間移動で戻る。
アーダとソフィアには発見されないよう気をつけつつ、戦況を確認。
どうやら機獣竜の物量攻撃に押され気味のようだ。
〔というか、機獣竜って、無尽蔵に出てくるのか。たとえ雑魚とはいえ、無限増殖は辛い〕
〔いえいえ、ステータス的には雑魚じゃないですからね。機獣竜のステータスは、A級ラスボス格なので。なんか感覚麻痺が甚だしいですけども。ドラゴン倒していただけで感動していた、初々しいタケト様を帰してください~〕
ドラゴン倒して、感動した覚えはないんだがな。
えー倒しちゃったよ、という衝撃体験はあったが。
陰ながらアーダとソフィアを助けるならば、まずは無限増殖もとを突き止めるか。
《探索》してから、〈デウスマキナ〉表面の裏側に向かう。ようは『月の裏側』。
そこでは大量の小人たちが、せっせと機獣竜を造っていた。創造スキルの類か。
「皆殺しコース」
と口に出して言ってみたところ、小人たちが一斉に叫び出して駆け回り出す。
「きゃぁああ! 魔神が来たぁぁぁぁ! 殺されるぅぅぅ!」
「魔神に食べられるぅぅぅぅ!」
「北条魔神が怖いぃぃぃぃ!」
〔……ひどい言われよう〕
〔あながち間違ってませんけどね。タケト様の称号って、《魔神》ですし〕
よくよく見ると、小人というのは女児だった。少なくとも見た目は。大量の女児が泣きわめき、元凶がおれという構図。
〔なんか心が傷ついた〕
〔メンタル∞の心を傷つけるとは、やりますね。ところであの子たちは女児のように見えますが、女児とも違いますよ。そういう種族です〕
〔どんな種族だろ〕
女児──にしか見えない種族の一匹を捕まえて、顔の前まで持ち上げる。
「きゃぁぁぁぁあ!! 殺さんといてくださいぃぃぃぃ!!」
女児──にしか見えない種族が叫んで漏らす。
〔タケト様。よっ、鬼畜の鑑〕
〔イチゴ、お前は黙ってろ〕
女児──にしか見えない種族に言う。
「あのな。おれは鬼畜じゃないから、酷いことはしないぞ」
「さっき『皆殺しコース』と言っていましたが?」
と女児的種族が言うわけだ。
「ただの口癖だ」
「口癖が怖いですぅぅぅ!」
「とにかく機獣竜の製造を中止しろ。そうしたら、何もしないから」
いまや女児的種族が集まってきて、おれを見上げてくる。保育士になった気分だ。
女児的種族の代表が言う。
「ですが、機獣竜の製造を止めたら、旦那様に酷い目にあうですよ」
「旦那様?」
「【超人類】三大将軍が一人、ローググ様です」
聞くところによると、この女児的種族の故郷惑星は、【超人類】に征服されたそうだ。
ここにいる女児的種族たちは、創造スキルを所持しているので、奴隷として〈デウスマキナ〉に連行されたと。
そして、防衛システムである機獣竜を、創造スキルでせっせと造らされているのだ。
なんと24時間365日休めず、無給で。
「なんてブラック企業だ!」
おれも人間だったころは、地味にブラックなところで働いていた。家族を養うためとはいえ。
そのころの地味な怒りを思い出したのだ。
「ムカつく奴らだ、【超人類】。女児的種族の諸君、もう働く必要はないぞ。おれがローググとかいう奴をボコり、ブラック労働を課した罪を償わせてやる」
すると女児的種族たちが感動した様子で、拳をつきあげて。
「奴隷解放です!」
「自由です、自由です!」
「これが自由の味です!」
「自由の歌を歌うです! たーららたー♪」
そんな様子を眺めていたら、イチゴが言う。
〔あ。タケト様の『善行ポイント』が+65になりましたよ。はじめてプラスになりました。これまではマイナスでしたからねぇ~。やっばり奴隷解放は、善行のポイント高しです〕
善行ポイントなんかあったのか。
〔まてまて。おかしいだろ、今までマイナスだったって。おれが何度、地球を救っていると思っているんだ?〕
〔それはそうなんですけど。そのぶん破壊の限りを尽くしていましたからねぇ~。よっ、魔神の鑑!〕
〔……〕
ま、とりあえずプラスになったしな。
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