97,そんなときは、グーパンチ。
──主人公の視点──
司令部らしき場所を見つけたので、景気よく飛び蹴りで突入した。
ところが運悪く、司令部内にいた誰かの頭を蹴とばしてしまう。蹴りの破壊力で、その人の頭部が爆散。
敵とはいえ、前口上も聞かずに蹴り殺してしまい罪悪感。
「いやぁ、申し訳ない」
北条キックしちゃった死体の隣で、もう一人の【超人類】が喚いた。
「よくも閣下を! よくもよくも三将軍がひとりルシガ様を殺したな!」
「まぁまぁ、落ち着いて。済んだことは仕方ない。とりあえず、〈デウスマキナ〉本体の居場所を教えてくれ」
「……教えたら、僕は殺さない?」
「殺さない。つーか、おれを虐殺者か何かと勘違いしているようだが──生粋の平和主義者だぞ」
信じがたい、という目で見られた。失礼だな。
「本当に?」
「ほんと、ほんと。虐殺マシーンは、うちの奥さんのほう」
「分かった、信じよう。僕の名はロマナナだ。〈デウスマキナ〉本体の居場所を教えるから、見逃してくれ」
【超人類】の中にも、話の分かる奴がいるのだな。
ところが、ロマナナがいきなり頭をかかえて叫び出す。
「ぐぁぁぁああああぁぁ!!」
ついには頭が爆散した。
またか。しかし将軍ルシガのときとは違って、おれが爆散させたわけではないぞ。
誰の仕業だ?
どこからともなく、勝ち誇った男の声がしてきた。
[ロマナナよ、地獄に行くがいい。これが裏切り者の末路だ]
《探知》をかけるが、司令部内にはいない。遠隔から声だけ飛ばしてきているのか。さらにロマナナへも、何らかの遠隔攻撃で殺した。
[貴様が北条バケトか]
と、声だけ飛ばしてきている【超人類】は言ってきた。
ようは電話のようなものだろ。逆探知して居場所を特定してみるか。
それはそれとして──
「いやバケトじゃなくて、尊人なんだけど」
そういや、アンダルとかいう奴もバケトと呼びかけてきたな。さては、おれの名前が間違って行き渡っているんじゃないか?
地味に失礼な奴らだ。
[我が名は、三将軍がひとりドボル。アンダルを投入するなど、ルシガも愚かなことをしたものだ。我は貴様のステータスが∞であると信じて疑わんぞ、バケトよ!]
「そりゃあ、どうも。あとバケトじゃなく、タケト。何度言わせるんだ。なぁ、イチゴ」
〔……〕
脳内のイチゴから返事がない。
拗ねているらしい。
〔ハンマーがわりにしたの、まだ怒っているのか〕
〔知らんです、知らんです。タケト様、私は怒っているんです。ちゃんと謝罪してください!〕
〔悪いねー〕
〔かるいですねっ!〕
イチゴはもういいや。
ドボルとかいう奴が、気になることを言ってきた。
[しかし、いくら防御力やHPが∞でも、精神はどうかな? 我が得意とするのは、精神への攻撃。貴様のトラウマを読み取り、抉ってくれよう。
くらうがいい、《トラウマ・ダイレクトアタック》!!]
瞬間、景色が変わる。
これは──懐かしい。
おれがいるのは、満員電車の車内。立錐の余地もなく乗客が押し込まれている。
「なんだ、これは? 強制的に空間転移されたのか?」
〔違いますよ、タケト様。これは夢ですよ──現実のようにリアルな夢です。さては、敵はタケト様のトラウマを探り出し、こうして夢として再現しているようです〕
トラウマをねぇ。満員電車って、トラウマか?
まてよ。まさかこの展開は──
ふいに目の前に立っていた、性格の悪そうな面の女子高生が振り返ってきた。
で、おれの右手をつかんで持ち上げ、なんか勝ち誇ったように言う。
「この人、痴漢ですっ!」
脳内でイチゴが、
〔ははぁ。今のタケト様の始まりともいえる、冤罪痴漢の記憶でしたか。確かにタケト様のトラウマといえば、これですよねぇ。にしても、この腐れJK、自分の顔を鏡で見てから痴漢被害を訴えろ、という話ですよ。ね、タケト様?〕
「………………」
〔タケト様?〕
グーパンチ!
腐れJKの顔面にめり込み、大爆散!
「ふっ。さらば、おれのトラウマ」
〔おお、タケト様! トラウマを乗り越えたことで、メンタル数値も∞になりましたよ!〕
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