響け、侵略の歓喜
はぁはぁと息をきらす私。
あいつはにやりと笑って、私を見下す。
「フッ、悔しいか?」
キッと睨みつけてやったけど、それも意味はなさない。
悔しい。こんなの。
「弱肉強食。それは世の理だろ」
悔しい、悔しい。
ムカつくけど、あいつの言ってることは、正しい。
だって今まさにあいつは強者として喰らおうとしている。
私はこのままあっけなく、終わりを迎えるんだろうか。
弱者として、何一つ、守れずに。
侵略者であるあいつに、されるがままなんて。
「諦めろ」
諦める?そんなのいや。
諦めたりなんかしない。
だって、諦めたら、そこで全て終わりになってしまうんだから。
私は意を決すると、切っ先をあいつに向けた。
私は諦めない。弱者のまま、食べられるなんて嫌だから。
「そりゃー!肉返せー!!」
そう言って箸を、にっくきあいつが私から盗った肉に向ける。
だけど、それは隣にいた兄に、バシッと頭を叩かれて阻止された。
「いたっ」
「お前は焼肉をちゃんと食えないのか!」
だって、と顔を横にむけると、呆れ顔の兄がいた。
にっくきあいつは怒られる私にニヤニヤとした視線を向ける。
くそっー・・・ムカつく。
「箸のつかみ合いは行儀悪いだろう」
「だって兄さん!あいつが私のテリトリーから、せっかく焼いてた肉盗ったんだよ!?」
そうだ、悪いのはあいつだ。
だいたい兄妹水入らずの焼肉だったのに、
(あいつは兄とも仲いいから)焼肉パーティに侵入してきたんだ。
人のテリトリーに手をだして、肉を盗んで。
侵略者はあいつだコノヤロー。
「盗られるほうが悪いんだよ」
「キー!ムカつく!!」
焼肉のルールくらい守りなさいよ!そう言ってやると、兄がまた呆れ顔で
「なんだよルールって・・・」
と言ってきた。
よし、せっかくなのでこの際そこんとこはっきりさせよう。
強者に肉を盗られないように。
「いい?焼肉の掟は其の一、人の肉はコゲてても手出し厳禁、
其の二、人のテリトリーを侵略するな、其の三、人のテリトリーで肉を焼かない
其の四、タン塩ではじまりカルビで〆ろ、の四つなの!・・・ってこらー!肉盗るなー!」
あいつは私が掟について話している間に私のテリトリーの肉を盗る。
くそぅ、人の話をきけー!!
「人が大事に育てた肉ばっか盗りやがって!たまには自分で肉焼いてよ!」
「弱い奴は戦場じゃ生き残れんのだよ。本当に大事に育ててたんなら死守してみせろ。
いやー、やっぱ人がぬくぬくと大事に焼いた肉を横取りするのは旨いなぁ」
「なにをー!!」
「お前らはちゃんと食べろ!!肉以外にも野菜だってあんだろーが」
(食卓は戦場だ、って最初に言ったのは誰だったか)
title:K8958
こういうおばかな話はかいてて面白いっすねー。
ちなみに、主人公は高校生、
兄とあいつは大学生をイメージして書いてみました。