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桜を観賞したい・・けど  作者: nanaちゃん
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こんな人はどうしたらいいの?

東京に雪が舞ふった。

あと一月もすれば桜の開花が報じられこの頃に雪が舞うのは毎年のこと。

まだまだマフラーに仕事をしてもらわなければならない。

寒さの中に春の足音がほんの僅かに感じられるとは思うが、東京の喧騒の中でそんなことを感じてる人は、どの位いるのだろう・・?と、思いながら会社に向かっていた。


会社と言えば聞こえは良いが、従業員は代表である私を含めて三人しかいない自営業だ。

仕事の内容は持ち込まれる相談の解決策を見つけるコンサルタント。

コンサルタントと言えば聞こえは良いが、人手が足りないと言われれば、代表である私もチラシを撒いたり、建設現場で作業をしたりと、業務はクライアントの依頼に何でも応える「便利屋」の側面のほうが強い会社だ。そんな私だから春の足音に敏感なのかな・・寒いのは堪えるから・・ と、思っていると会社である事務所が入居するマンションの入り口に着いていた。


ドアを開け越しに「おはよう!」といつもの様に声をかけると・・

「代表!桜を見る会の案内状が届いています」と鈴木が声を弾ませていた。

「えっ!」と小さく応じながらデスクに座ると「首相と一緒に桜を見る会の案内状ですよ」とちょっと興奮気味になっている。

「スゴイじゃないですか!政府からの招待状ですよ」と重ねてきた。

「う~ん」 

「スゴクはないけど、光栄だよな」と私。

「だから、その光栄がスゴイんじゃないですか!代表に招待状が届いたことがスゴイんです」

「何かの間違いだろ!?役人が目を瞑って名簿をロシアンルーレットしたとかさ」と言って笑ったら、鈴木ともう一人の事務員の葉子さんも爆笑した。


「まさかそんなことはないと思いますが・・・」葉子さんは言葉では否定しながら未だに笑っている。


「首相と桜か・・・」


「もちろん行きますよね!?」と鈴木が確認をしてくるが・・


「ちょっと考えてみる」と応えると「えーっ!」と二人そろって「考えることですか?」と重ねてきた。

「行きたいのは山々だけど・・ちょっとなぁ~」

「何か予定でも入っているんですか?」と葉子さんが訊いてくる。鈴木が「まだ開催日言ってませんから」

「そう言えばそうよね・・」


鈴木が案内状を手にデスクに近付き私に渡した。

白い洋型の封筒の裏面に内閣総理大臣と記してある。

封筒を開けると開催日の案内と受付表に枡引換券が入っている。

出欠のハガキは無い。


「そうか、数千人の規模だから出欠の確認は無いか・・」と呟くと、「で、開催日はいつですか?」と鈴木が訊いてくる。

「四月十五日だな」

「まだ二か月近くあるから予定は組み替えられますね?!」と鈴木。

「そうだなぁ~」

「いずれにしてもまだ間があるから考えてみるよ」


「さて仕事、仕事。今日の予定は?と言って話題を逸らした。

お互いに仕事の予定を確認すると私は事務所を出た。



東京の二月は下旬とはいへ、まだまだ寒い。

ビルとビルの隙間を風が駆け抜け、コンクリートが前夜の低温を温存していて、風を冷却する。と、私は勝手に思っている。

以前、北海道の友人が東京に遊びに来た時に、「札幌より寒く感じる」と言っているのを聞いてから勝手に、コンクリート冷却説を考えたのだ。


駅に向かう街並みの中を歩き携帯を手にした。

「もしもし」と私。

「防国社本部です」と先方が応える。

「どうも、ランディの貴島です。会長は居ますか?」

「あっ!どうも!少々お待ちください」

「おーっ!兄弟。どうした?こんな早い時間に連絡なんて!」

「ちょっと相談があるから、今晩食事でもどうかと思ってさぁ」

「ん!随分急だな!今晩は予定があるから、明日でどうだ?!」

「了解!じゃあ明日、新橋のいつもの店で六時でどうかな?」

「了解!」


兄弟とはいってもヤクザではない。この広い東京で、幼少期には学年も違い、付き合いもなく、その存在すら知らなかった二人が、四十年以上の月日を経て出会った時から、兄弟のように接しているという関係だ。


私は会社を登記する直前まで会社名を考えていなかった。

今までも自営で毎日自転車をこぐような日々だったことから

「走る日々」をイメージして「ラン」「デイ」。

それらをくっつけて「ランディ」。株式会社ランディと法人名を決めた。

今思えばお金に埋もれた日々として、「マンディ「」にすればよかったと後悔することもあるが、後悔先に立たずだと諦めている。




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