08
それから数日のうちに、一つの犯罪組織が姿を消した。都市の上層部との癒着の証拠が警察に届けられたのと、トップであるボスが逮捕されてしまったのが決定打となってしまったのだ。ただ、本人達の希望もあって、その裏でとあるフリーランスのコンビの活躍があった事は伏せられる事なった。それでも、この一見は、そのコンビ――シズマとアリーゼの評価をまたしても上げる事となり、次の更新査定でシズマが目を丸くすることになるのは言うまでもない。
それはそれとして。
「解決したとは言え、結局大事だったんだよな」
バイクに乗って、正式な依頼を果たすべく、別の街へと移動する途中のこと、シズマがふと思い出したように呟く。前にもぼやいたが、最初はスリをした子の様子をちょっと確認するだけのつもりだったのだが…。
「良い結果に終わった。終わり良ければ全て良し」
「それはそうなんだが。でもなぁ、なんか釈然としないんだよなぁ」
「誰かが言ってた。男なら細かい事を気にするなって」
「お前は気にしなさ過ぎなんだ…。ていうか。その理屈だと、女性は逆に細かい事に気を配れってことになりかねないぞ、大丈夫か?」
「大丈夫」
「じゃあ何で視線が泳いでるのかな?」
見てなくてもわかると言うのはこういう時にも便利だ。後ろに座っているアリーゼの表情の変化も良くわかる。
「シズマ、それはずるい」
「はっはっは。異能者の特権って奴だよ」
アリーゼの言葉を笑って受け流せば、後ろに乗っているアリーゼの表情がちょっとだけ不満そうなものとなる。
「だが、まぁジャックたちにとっても、ある意味よかったな」
「ん。まさかあんなことになるとは思わなかった」
ジャックたちは、生活保護を受けられることになった。その背景には、ジャックとその母親が助けたウェルナー警部の助力があったようだ。スラム生活で苦労していたようだが、それも今度からは少しだけマシになるだろう。
「でも、全員じゃない」
「それは仕方ない。さすがにスラムの生活者全員を助ける術は、俺らにはない」
それはわかっていることだ。実際に目の当たりにして、何とかしたい気もないわけではないが出来る事は自分らにはない。これだけは、割り切るしかない。
「なにはともあれ、丸く収まってよかった」
「ん」
シズマの言葉にアリーゼが頷く。
「さて、それじゃあ高速に乗るからしっかり掴まってろよ?」
「大丈夫。しっかり掴まってる」
ぎゅっと後ろから抱きしめる力が強くなる。その感触を確認すれば、シズマはバイクを高速の入口へと進路を向けるのであった。
Episode-END
と言うわけで、BayonetBuddy ~銃剣コンビの事件録~のEpisode1はこれにて終わりとなります。次のエピソードは、構想練るために、少し間を空けて投稿できたらと思います。もしよかったら、次もお付き合いください。