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第十話 箒星が舞う前に C

「辰星先輩、濡れたユニフォームは重たいんですから無理しなくてもいいのに」


 悠々とユニフォームを脱ぎ、ビキニの胸を調整する尚江。背中がむき出しになっているが、まったく恥じらう様子はない。


「尚江、お前なぁ……」


「いいじゃん。だって今ここに男子いないんだし」


「わお。言い切った……」


 思わず声が出てしまう聖子。隼人は実兄だから除外もわからなくはないが、鉄也も除外しているのは長年の関係があってとはいえ、さすがに驚きを隠せなかった。


「草江さん、尚江ちゃんがそう言うのも無理ないのよ。ほら……」


 その鉄也の目線は最初から空の向こうにあって船内を見ていない。本人に言わせれば、こういった時は目を鍛えるために昼間に見える星を探しているというが、信憑性はともかく、異性はもちろん他者に対してほとんど関心が無いのは明白だった。


「とにかく辰星先輩たちも重たいですから脱いだほうがいいんじゃ?」


 そういいながら炎のようなオレンジ色のバンドゥビキニ姿を披露する尚江。引き締まっていて曲線が美しい彼女の身体と思いのほか調和しているビキニに、周囲からどよめきが起こる。


「大胆ー!」


「スタイルいいじゃない!」


 称賛を浴びて得意げにしている尚江に隼人は思わず苦笑いを浮かべてしまう。


「それはそうと、無理しなくてもいいんじゃない?まさか下着ってわけじゃないでしょ?」


 純も脱いだが、彼女は競泳水着。この流れでは女子は全員この場でユニフォームを脱ぐ流れなのだが。


「し、下に水着は着てますけど、でもやっぱり人前で脱ぐのは……」


 どうしてもこの場ではダメだと言う紗菜に隼人は察して言う。


「武門の家の者は人前で隙を見せるなって教えられてるんだろ?」


 隼人の言葉に小さく頷く紗菜。当たらずとも遠からずであった。


「だ、だいたいそんな感じです……」


「でしたら私もご一緒しますね!」


 聖子は自分を見いだしてくれたかけがえのないパートナーに合わせて濡れて重たいユニフォームを着たままにするという。


 大発は元の浜辺にぐんぐん近づいていく。


「お、戻ってきた!」


 浜で出迎えるのは壇兄弟と機甲戦部と整備課の面々。すでに学校の行事用テントが多数設置されており、さらに長机や屋外用の椅子も多数設置されている。


「お昼はみんなでバーベキューするから、それまでみんなは海で遊んでていいからな!」


『やったーー!!』


 浜辺に揚陸すると同時に戸板が開き、乗船していた面々が我先に降りて、手にしたユニフォームを洗濯係に渡していく。



「おおっ!プライベート用ばっかり!」


 浜辺に残っていた数少ない男子たちは、所属を問わず全員設営作業に回されて萎びていたのだが、大勢の水着姿の女子たちが大発から溢れ出てきたのを目にして一気に生気を取り戻す。


 一番多いのはフリルタイプで、デザインも色合いも同じものはなく、まさに海辺に咲く花々のよう。運動系はハイネックビキニが多く、タンクトップビキニ姿もちらほら。スタイルに自信がある者はバンドゥビキニ姿を披露している。


「あそこの奇抜な水着の集団は?」


「手芸部みたいだな。あれ全部自作じゃないのか?」


 手芸部の四人は古着の水着などを再生して思い思いのものに仕立てていた。部長のチャコはセーラー服系、ベリーは袴の下をスカート仕立てにした和系、ティンブルとビーズは白系と黒系のゴスロリの、いずれもビキニ系。四人ともスタイルに自信があるのか、チャコとティンプル、ビーズはお腹周りの露出が、ベリーは豊かな胸がさらに強調されていたのも注目が集まる要因だった。


「いいっすね!眼福眼福っと」


 光一がニヤニヤしながら咲き乱れる可憐な花々に見とれていた。


「もっと正統派のセクシー路線も期待してたんですけどね」


「期待してたの?」


 呆れる純に、光一は気合い一杯の反応。


「そりゃそうっすよ!」


「まったく……。高校の部活の集まりにそんなの期待するもんじゃないの」


「でも先輩の競泳水着姿もいい感じじゃないですか」


「はいはい」


 純は競泳水着姿で浜辺にいた。しかし競泳水着は身体のラインをまったく操作しないため、純のグラマーな肉体美を誇示さえしていた。


(ま、この子の反応の方が健全な男子なのがね……)


 純の視線の先の隼人と鉄也は高校二年の男子でありながら、異性に興味があるのかどうか伺い知れない様子だからだ。


 いずれにせよ皆は渡し終えると駆け足で海に向かい、先に浜辺で戯れていた機甲戦部と整備課の女子たちと合流し、海に泳ぎに出たり、浜辺でビニールボールで遊び始めた。


「しばらく泳ぐぞ」


「おう!いってら」


 鉄也は学校の授業用の水着にゴーグル姿で一人淡々と海に泳ぎに出てしまう。鋭利でクールな顔立ちと、細めだが無駄なく引き締まった肉体美の持ち主なので、その気になれば引く手数多であるし、この機会を狙っていた女子も複数いたようだが、マイペースに早々と泳ぎ去られてしまっては見送るしかなかった。


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