2*雅
愛しき理沙へ。
お前は今どこで何をしてるんですか?
友達はできたんですか?
お前、友達作るの下手だから心配だよ。
お前に会いたい。
お前がいいと言ってくれるなら、どこへでも会いに行きたい。
でも、今の俺には…そんなことできない。
お前の連絡先すら知らない俺は…お前に何もしてやれない。
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桜井雅。
男みたいな名前だけど一応女です。
声も低いし、髪型はショートだし、服といえば、シマムラで男性用のものを買ってきて着る。
筋力だって、そこら辺のナヨッとした男よりよっぽどある。
昔から街を歩けば男だと間違えられる。
まあ、それが俺の運命なんだろうと思ってきた。
中学は、そんな俺を心配した母の希望で女子校に入学。
しかし、女の子の話ってのはいまいち分からない。
嵐の松本君がかっこいいだの、どこの香水がいい匂いだの…。
とてもじゃないけど、ついていけない。
部活はやるって決めてたから、とりあえず、バスケ部に体験入部してみたけど、足が遅い俺には向かないみたいで…。
運動部は片っ端からあたったけど、いまいち「これだ!」と言えるものがない。
そのとき―俺は出会ってしまった。
演劇部。
ここなら俺もやっていける。
女子校の演劇部は男役も女がやる。
つまり、俺にはもってこいなところだった。
元々男っぽい俺も、ここでなら居場所を見つけられそうな気がした。
そして入部。
同学年は3人。
ひときわ目立ってにぎやかな子。千佳。
こいつならやっていけるか?
と思った。
個性的で、オヤジギャグばっか言ってるようなキャラで…。
いや、正直にいうなら、残りの2人がどうしようもなく気が合わなさそうだったから千佳とつるんでたんだけど。
百合は、おとなしいお嬢様キャラだからとてもじゃないけど付き合えない。
あとは…春香は「皆のお母さん」とか自称して仕切ろうとするから苦手。
春香と百合は2人で気が合ってそうだったから、じゃあ俺は千佳とつるむか…みたいな。
で、1年間は特に何事もなく平凡な演劇部ライフを送った。
でも、いつしか俺は、千佳を嫌うようになっていた。
というか、千佳はなんだかんだ言って自分勝手だ。
一人っ子だからなんだろうか?
マザコンだし、何かやってらんねぇ!
でも、残りの2人とも付き合えねぇ!
この際部活を辞めてやろうか?
そう思い始めた中2の春。
何の予兆もなく、お前は俺の前にやってきた―
真っ白で愛しいお前が。