1*理沙
今、あなたは誰とどこで何をしていますか?
大学はどうですか?
医者には…なれそうですか?
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2002年春。理沙12歳。
私立、南丘女子。
かなりの難関校といわれる、中高一貫式の女子校。
もともと対して頭がいいわけでもないのに、まぐれで入ってしまった理沙。
勉強は付いていけなくても、せめて部活だけは頑張ろうと思ってた。
でも、最初に選んだダンス部は先輩も厳しくて。
全然躍らせてくれないし、雑用ばっかだし。
敬語間違えると怒られるし。
とてもじゃないけど、やってられない!!!
でも、南丘は1年間続けないと転部ができない。
「1年我慢したら転部しよう」
と思ってこっそり次の部活を探し始めた。
そのときにクラスメートの千佳がHRで
「今度演劇部が公演やるので見に来てください!」
と宣伝していた。
ま、参考までに。と思い見に行ってみた舞台。
とてもじゃないけど、学生演劇とは思えない。
そして私はいつしかこう思うようになっていた。
『私も出たい。』
そして…転部先を演劇部に決定。
3月のある日、私は先生から転部届けをもらい提出した。
そうして演劇部に入ってはみたのの、
いまいち馴染めない。
一緒に入ったちなつはとっくに友達も作ってメアドも交換して楽しそうなのに…。
なんで…私だけ、馴染めないのかな?
ちなつもひどいよね…
一緒に入ったのに、自分に新しい友達ができたら私のことはもうどうでもよくなっちゃうわけ?
ひどいよ…。
私は、先輩の
「あの子かわいそうだな」
という哀れみの視線と同学年の
「ちなつと一緒に入ってきた、ちなつにピタッとくっついた金魚の糞」
くらいに見下した視線の間で日々暮らしていた。
…やっぱ、ダンス部にいればよかったのかな…。
と少し後悔もした。
部活の活動の方は…といえば、南丘の演劇部の公演は年4回。
4月に新入生歓迎のための公演。
7月には夏の公演。
10月に文化祭で公演。
1月に冬の公演。
7月の公演は新入生の初舞台も兼ねている。
つまり、私とちなつの初舞台。
裏方は先輩がやってくれるから、
中2は全員キャストで出る予定。
立ち稽古に2ヶ月はかかるから、新入生は5月までに一通りの基礎練習をマスターしなくてはならないというハードスケジュール。
発声に、滑舌に、柔軟に…。
つまり、今は人間関係を気にしている暇はないってこと。
今はひたすら基礎練習に集中するしかない!
先輩に習って基礎練習をする。
でも…
ちなつは同学年から色々アドバイスしてもらってるのに、私には誰もアドバイスしてくれない…。
やっぱ寂しいな…。
そんな日が続いて…。
4月も半ばを過ぎて発声もそこそこできるようになったある日…。
私は千佳から思わぬ誘いを受けた。
「今度一緒にカラオケ行かない?」
え!!??行っていいの??
ちょっと嬉しかった。
千佳は誰よりも気を使う子だから、もしかしたら、私が寂しそうにしているのに気づいていた。
だから誘ってくれたのかも知れない。
でも、それでもとても嬉しかった。
ゴールデンウィークの5月4日に約束をした。
場所は朝10:00渋谷のハチ公口前。