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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

暗闇の伝記

作者: ひーろーk

自分以外の足音がする。

振り向くも、誰もいない。

誰かの叫びが聞こえた。気のせいか。

誰もいない。誰もいない。

立ち止まれば既に足音は聞こえない。

誰もいない、一本道の洞窟で

帰れない事などあるのだろうか。

ここは勇しき悲しみの祠というらしい。

中に入ると、立派な石碑が立っている。

そこには子供の書いたような字でこう書いてあった。


やはりわたしはこのめいだいのけつろんをだすことができない

なにもかもひとつになることに

はたしていみはあるのだろうか

ちしきによりふこうになるものが

ほんとうにいないといえるのだろうか

うまれおちたせきにんをはたすべく

いろいろかんがえるわたしのことばを

はたしてだれがきいていようか

いまもなおほろびゆくうんめいのうえにいるという

たいせつなことにもきづいていない

わたしたちは

いや

かれらはなにをもとめているのだろうか

すべてをはかいしつくし

みうちでしのぎあったあとに

わりにあわないちっぽけなこうふくが

あったとしてもそれは

むなしいものでしかないではないか

おねがいだからわたしのはなしをきいてください

だれかわたしのいたこのせかいを

すくってください

かみさまがいるのなら

あくまがいるのなら

このさいぎぜんしゃのしゅうだんでもいい

だれかこのほろびゆくせかいを

このせかいをほろびにみちびくものを

まるでまおうのようなかれらを

とめられるだけのちからをください

わたしはどうなってもかまわない

にどどわらえなくなっても

ぬぐえないつみをせおったって

つみをばっすることによるすくいすらなくなったって

わたしはかまわない

むしろそれだけでいいのなら

わたしはこのみなどよろこんでなげだそう

すべてはわたしたちのみらいのきぼうのために

ーーーーーーわたしはここにちかう




石碑の下に何か書いてある


「私の願いは最後まで叶う事はなかった。

私の愛した地上の楽園は良質な鉄鉱石の鉱山となり

そこで精錬された鉄による数多の武具は

この世界を赤褐色に塗り広げていった。」




壁に何か擲り書きがある。


「これからは神は死んだと仮定して行動する。

神がいるのならこの世界は既に屑篭の中だ。

ここまで来たのだ。私はこれで国を変えられる。

いっそのことこの世界を作り変えてみせよう。

すべては夢であったのだと割り切ろう。

仲間や家族や町やこの世界の全て

ありとあらゆることが一炊の夢でしかなかったのだと。

まずは世界を一度元に戻さねばなるまい。」




奥の部屋にはに一冊の本が置いてある。

表紙裏に金文字でこのように書かれていた。


「これは私の犯した罪を忘れない為の物だ。

私は許されない事をしているという自覚はある。

しかしこれしか方法がないのだ。」


本ではなく手帳であったようだ。

日付と、誰かの名前…だろうか、

その後に様々な事が書いてある。


「18月782日 トマス=ソルバス ワルサー=ナイン

これが私の行動の代償かと思うと気が狂いそうだ。

私は何を目的として行動しているかを忘れてはならない。


37月564日 ミカエル=ティンバー ライリス=シスダームル

アルバトラム ゲインハウゼン=イーター サミュエル=ソン

私はどれだけの間これを続けねばならないのだろうか。

途方もない苦痛の先に希望があると信じている。


96月432日 クジャーフ=タクト 他35名

なぜ世界が変わらなかったのか分かった気がする。

思考を放棄したものが多すぎるのだと感じた。


194月564日 431名

なぜ誰も彼も世界の事を考えていないのだろう。

世界の為だと言っているのになぜ分かってくれないんだ。

何が〈今も昔も変わらない〉だ。私は世界を救う英雄なのだ。


230月296日 1700余名

誰も彼も私を見ると怯えた動物のような目をする。

私は世界の為に働いているのに何故?

何故なのだろうか。私は正しいというのに。


230月564日 2000余名

ついに魔王と呼ばれた。私は魔王と呼ばれた。

私は正しいというのに魔王と呼ばれた。

私は何をしてきた?世界の為に

世界を作り変えてみせると決意したのだというのに。

なのに見ると皆怯えたような目をしている。


230月794日 0名

私は第一線を退く事に決めた。

一人の少年が私を見ていたのだ。

あの日濁った水に映った私の目、そのもので。

そうだ、私は許されない事をした。

世界を作り変えようとしたのは何のためであったのか

ようやく思い出した。

もう誰も辛い目に遭わない為に私は何をしたのか。

私は何をしてしまったんだ…ああ、誰か私を止めてくれ。

全てを破壊し尽くし身内で凌ぎあった後に

小さな幸福があるとすら思えない。

虚しさしかないではないか。

お願いだから私に何か言ってくれ。

お前も怯えた目で何も言わず去るのか。

誰か私のいるこの世界を救ってくれ。

私のいる、この世界を。

神だろうが悪魔だろうが何でもいい。

私にできる事ならばなんだってしよう。

誰かこの滅びゆく世界を、

いや、私を止めて欲しい。




ーーーーー私はどこで間違ってしまったのだろうか。

私のおかした罪を繰り返さぬように

私の書いたこの手帳が有効に活用されんことを願う。





最後のページは赤黒く張り付いていた。

一部次のページにインクが染み出して読めるようだ。

とまれない

とめ

 にたく い

ゆる

わたしは

いてはなら

こ さな

こわ



あ   とう


ここで終わっている。

いや、次のページの下の方に何か書いてある。









振り向いたものに罰を与える




しかし既にーーーー

後に洞窟は破壊された。石碑などは博物館へ送られた。

しかしそれからというもの、

博物館や資料館から偶発的に人が消える事件が起きる。

一部帰ってきたものはうわ言の様に言う。悪魔の子だと。

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