数週間の仲とバカらしい自分
「全く、どれだけ心配性なんだか。ラクト君、後ろ見てみて」
自分が他人の意思を決定する権利なんて持っていてもいいのか、俺なんかが今後のヴィシュヘル攻略における重要項目の一つを決めてしまってもよいのか。
俺の頭の中の半分以上はそんなことで埋め尽くされていた。
今後の攻略におけるエフたちとの関係を決めることにおいて、俺が一つの意見を出すのは当たり前だと思っている。
ただ、俺がこのグループを代表して意見を出していいほどの人物かといわれたら『否』だと自分自身では思っている。
だが、俺は以外にもみんなから信用されていたらしく、悩んでいる俺に声を掛けてくれた。
「後ろ?後ろに誰か居るのか?」
エイゼに後ろを向けといわれたので振り返ってみると、そこにはリヤ、ケルフィン、リーザの3人が立っていた。
「ラクト君、本当にみんながラクト君のことを信用しているかどうかは、同じグループの3人に直接聞けば分かることでしょ」
「そうだけど、答えは決まってるよ。きっと...」
「うん、決まってるよラクト君」
3人の意見は固まっているらしく、代表してリヤが言う形になっていた。
リヤは『決まっている』と言った。
その『決まっている』は、付き合いが短い俺なんかに絶対任せない、的なものだろう。
でも、その通りに言われたとしても仕方ない。
エイゼは入学初日から学園内外で行動を共にすることも多かったため信用してくれているのかもしれない。
それに対し、リヤ、ケルフィン、リーザとの関係は、つい数週間前に一緒ののグループになったぐらいだ。
逆に、今まで一度も俺の意見に反対してこなかったのがおかしいぐらいだ。
だから、俺は3人の意見をしっかりと受け止めることにしよう。
そう心に決意したあと、軽く目を閉じてリヤからの答えを聞いた。
「決まってるよ、ラクト君。私たち...これからのこともラクト君に任せるよ」
「だよね、俺なんかにって...えぇ?!俺なんかに任せちゃっても良いの?本当に?」
俺が考えていたのとは全く違う答えにあせる。
そんなあせっている俺を見ながらその理由を言ってくれる。
「勿論、最初から信用していたわけじゃないよ。始めにダンジョンにもぐるって聞いたとき、学年ダントツトップの成績を持っていて、あのマナタンクの子孫のエイゼちゃんと一緒ならそれなりの成績が取れると思ったから声を掛けたんだ。実際、ラクト君が最初の課題試験であの成績を取れたのはエイゼちゃんの力だと思っていたもん。でも、こうして一緒のグループになって行動していくうちに、エイゼちゃんのすごさを改めて再確認すると同時に、ラクト君のもっている様々な知恵と情報と臨機応変さに驚いた。そして、たった数週間だけど信頼できると思ったんだ。だから、ラクト君がしたいことを、やりたいことを選んできて」
リヤがそう言った後に、ケルフィンとリーザは俺のほうを見てうなずいた。
こんなことを言われると、さっきまでの自分がバカらしくなってくる。
「わかった、みんなの代表として話してくるよ」
そんなバカらしかった自分を消し、みんなの代表としての意思を固めエフの元に向かった。
どうもMontyです。
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