現状と作戦会議
「現状はこっち側が不利だな。このままだと確実に負ける」
第10階層フロアボスであるホブゴブリンによってケルフィンが殺されかけたところを、リヤが弓矢で助けて、その後ケルフィンの一撃によってホブゴブリンにダメージを与える事が出来た。
ホブゴブリンは痛みに耐えかね部屋の奥に消えていったが、こちら側も被害が無いと言えば嘘になるため、一旦引いて体勢を整える事にした。
今は、次の戦闘のために準備をしながら作戦会議をしているところだ。
「そうか?確かに負傷者は出てるけど、ホブゴブリンには確実にダメージを与えられてる訳だし大丈夫じゃないか?」
「エフくん、そんなうまく行くわけがないでしょ。それに、ラクトくんが確実に負けるって言ったからには何か理由があるはずよ」
エフが軽く『大丈夫』と言ったのに対し、エイゼは逆の意見だ。
俺もエイゼが言った通り無理だと考えてる。
他にも五分五分だと考える人もいれば、劣勢だ、優勢だとさまざまな意見が飛び交っている。
俺は、その中で無理だと考える理由を説明する。
「確かに、パッと見たらこっち側が優勢、少なくとも五分五分に見えても仕方ないと思う。でも、今は明らかに劣勢だ。その大きな理由として、圧倒的な戦力差にある」
俺がそう言うと、みんなもそれについて思っていたらしく少し雰囲気が暗くなる。
「確かにホブゴブリンにダメージは与えられてる。でも、こっちは負傷者が2人出てる。しかも前衛だ。回復したとしても、すぐには戦闘には参加できない。それに、相手にはゴブリンを召喚する術があるはずだ」
「確かにさっきはゴブリンが湧いてきたが、あれは召喚なのか?ただ単に時間で湧いただけじゃないのか?」
エフの言っていることも間違っていないと思う。
そもそも、意図的に召喚できるのは幹部クラス以上で無いと無理だ。
でも、さっきのゴブリンが湧いてきたタイミングがおかしかったのだ。
「エフ、さっきゴブリンが湧いてきたのはどんなタイミングだったか覚えてるか?」
「ああ、覚えてるぞ。確か、俺たちがホブゴブリンとの距離を詰めた時だったよな」
「そう!距離を詰めたとき、ということは後ろと距離が空き、かつ俺たちの攻撃の狙いがホブゴブリンのみになったときだったんだ」
「でもよぉ、攻撃の狙いがホブゴブリンのみって当たり前じゃないか?」
「普通はそうだ。でも、俺たちは戦闘前に緊急時の想定もしとくように確認しあった。要するに、『倒せる』という油断が原因だ。俺たちが微妙に油断したところを狙って、何らかの方法で召喚させたのだろう」
みんな俺の話を聞いてくれているが、疑問もあるに決まっている。
そんな疑問を言ってくれるのはエフだ。
「でも、それがわかったところでどうするんだ。いきなり湧いてきたら、そんな簡単に対処できないぞ」
「それはわかってる。だから、俺はそれを利用しようと思う」
今回もお読みいただきありがとうございます。
前回の話のあとがきでも記したとおり、今日と明日は二本投稿となるのでぜひご覧ください!
また、感想、ブクマ、評価等していただけるとうれしいです。
次の話もお楽しみください。




