ルームメイトと付与魔術
俺が在籍している魔道学園は、完全寮制の学校である。
その寮は学校の敷地内の端に建設されており、全部で6棟ある。
各学年ごとに、それぞれ男子寮と女子寮があるからだ。
それと、仲の良い友達を作るために、1部屋に2人ずつ住むことになっている。
「誰と一緒の部屋なのかなー。楽しみだなー」
これから生活を共にするルームメイトにわくわくしながら、俺の部屋がある最上階の3階へと階段を上がっていった。
扉の前に来ると、部屋番号の下にネームプレートが2つ設置されていた。
1つは俺、ラクト・ベルメスの名前が書かれたプレート。
もう1つは、エフ・ボルクトと書かれたプレートだ。
おそらく、この名前の人が俺のルームメイトであろう。
このまま扉の前にいても仕方が無いので、部屋の中に入ってみることにした。
玄関には他の靴がなかったので、まだ戻ってきてないようだ。
俺はエフが戻ってくるまで、部屋の間取りなどを確認することにした。
入ってみると狭い廊下があり、その廊下の左右に扉が付いていた。
まず、左側の扉を開けてみた。
そこにはシンプルなユニットバスがあり、とても清潔感がある空間になっている。
次に右側の扉を開けてみることにした。
そこは広い部屋になっていて、シングルベッドが置いてあった。
おそらくここが寝室なのだろう。
ベットも1つしかないので、寝室はもう1つありそうだ。
廊下に戻った後、そのまま真っ直ぐ進んでいった。
廊下の奥に扉があり、そこを開けてみると少し広めのリビングダイニングになっていた。
入ってすぐ左にはキッチンまであった。
その空間の左の壁にも扉があり、そこがもう1つの寝室になっている。
部屋の紹介はざっとこんなもんだ。
やることもなく暇になってしまったが、勝手に部屋を決めるのも失礼だと思うので、リビングにあるソファに座って帰ってくるのを待つことにした。
.....ガチャ
5分ほど待っていたら、扉が開く音と扉を開けた人の足音がした。
足音は、人が部屋の外から中に入ってきたのを伝えてくれた。
すると同時に声が聞こえてきた。
「あれ、もう靴がある。もしかしてこの人が俺のルームメイトかな?」
どうやら足音の正体は、俺のルームメイトのエフのものだったらしい。
エフは部屋に入ると、そのまま俺のいるリビングにまっすぐ進んできた。
エフが扉を開けると俺がいることに気づいて声をかけてきてくれた。
「あ、君がラクト君?俺はエフ・ボルクトだ。これからよろしくな」
「俺はラクト・ベルメス。こちらこそよろしく」
「早速だけど、部屋割り決めない?俺も自分の荷物置きたいからさ」
「分かったけど、どっちの部屋にする?」
「俺はどっちの部屋でもいいから、ラクト君が決めてよ」
「そういうなら、俺は入り口側の部屋にするよ」
「よし、そうとなれば荷物を置いてくるか」
そういってエフはリビングにある扉から自分の部屋に行ってしまった。
俺も荷物が置きっぱなしになっているから、自分の部屋に持っていくことにした。
荷物を置いてリビングに戻ると、先にエフが整理を終えて戻ってきた。
現在の時刻は約6時30分だ。
まだ寝るには早いので、互いのことを知るためにいろいろ話した。
思った以上に長引いてしまい、結局寝るのが11時ごろになっちゃったけど。
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次の日、俺はエフと一緒に登校した。
その日の授業内容は、『エンチャント』についてだった。
エンチャントはその名の通り、何かの対象に対して魔法を使って何らかの効果を与えるという無属性魔法だ。
たとえば、人に対して闇属性魔法の『ブラインドネス』という魔法を使う。
この魔法は、魔力を送り続けている限り対象の視界を真っ暗に、つまり盲目状態にするという魔法だ。
これを単体で使うと常に魔力を送り続けないといけないので、同時にほかの魔法を使うのが難しくなってしまう。
だがこのエンチャントを使うことで、魔法発動時の魔力を使うだけで対象に一定時間ブラインドネスをかけ続けられるようになる。
このほかにも、火属性の初級魔法の『フレイム』を武器に対してエンチャントすることによって、その武器でダメージを与えた対象に持続的に熱でのダメージを与えるようになる。
このように様々なことに使えるので、エンチャントを使える人が1人いるとかなりありがたいのだ。
ということで、この学園では最初にこの魔法を教えるらしい。
やり方自体はそこまで難しくないので、1、2時間もすればみんな使えるようになった。
そのあたりで、先生がとある一言を発した。
「よし、みんなある程度できるようになったな。じゃあ、ひとつ知らせることがある。それは今日から一週間後に、今学んだエンチャントを使って何か1つやってもらう。何をやるかはそれぞれペアで決めてくれ。
なお、ペアは隣の席の人とだ。それじゃあ今日は、各自解散だ。みんな、頑張ってくれよ。」
これが俺たちの、入学最初のの課題試験の内容だった。
どうもMontyです。
今回も、最後まで読んでいただきありがとうございました。
また、誤字脱字等ありましたらご連絡ください。