誘拐と家族への思い
「妹は俺が小さい時に誘拐されたんだ」
俺がそう言うと、エフが深刻そうな顔をした。
「なんかすまんな、言いたくないことを言わせちゃって」
「気にしたくても大丈夫だ。それに、自分だけで抱え込むのも疲れたし、誰かに聞いて欲しかったからさ」
「そう言ってくれるのはありがたいけど」
エフはまだ深刻そうな顔をしているが、このまま中途半端に言って終わるのもどうかと思ったので、俺が小さい時にあったことを話した。
「今から3年前に、魔王軍の手によって両親が殺されたんだ。しかも、両親が出かけているときに殺されたから、俺は何もできなかったんだ」
「それは気の毒な話だな。でも、そのときお前の妹はどうしてたんだ?」
「俺の妹は、そのとき両親と一緒に出かけてたんだ。目撃者によると、俺の両親が殺されたあとに魔王軍の一員によって連れ去られたらしい。だから、今生きているのかも分からないんだ」
俺は、今まで抱えていたことをエフにぶちまけた。
いつもはふざけているエフだが、このときは真面目に聞いてくれた。
「一つ聞いておきたいんだが、お前の妹の名前はなんなんだ?確率はかなり低いが、どこか出会うこともあるかもしれないし」
「確かにそうだな。俺の妹の名前は、セシル・ベルメスって言うんだ」
「セシルだな。覚えておくよ」
エフがそう言ったのを最後に、今日のエフとの勉強会が終わった。
自室に戻った俺は、期末考査に向けて勉強をしながら、家族と過ごした日々について思い出していた。
家族と過ごせた時間はたったの12年だけ。
お父さんは真面目で勉強が得意な人だった。
魔法も使えたが、今の俺よりも下手な気がする。
お母さんはとても優しく、包容力のある人だった。
魔法は平均ぐらいといっていたが、色々使っていたのを覚えているので、結構上手なほうだったのだろうか。
妹のセシルは、とても可愛かった。
たまに反発することもあったが、頼ってくれることも多かったため、とてもうれしかった。
こんなにざっくりと思い出しただけでも、表現できないほどの様々な感情が沸いてきた。
祖母や祖父もとてもいい人だったが、本物の家族ではない。
ここまで色々あったため気づいていなかったが、俺は家族に飢えていたのだ。
またあの日々に戻りたい、またみんなと同じ家で暮らしたい。
そう思うと涙があふれてきた。
最後に泣いたのはいつ以来だろうか。
いくら考えて思い出せないほど久しぶりだったのだろう。
俺はこのまま、家族について思いながら涙と流し寝付いたのだった。
どうもMontyです。
今回も、最後まで読んでいただきありがとうございました。
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