口調と沈黙
黒檀の扉の先には、大量の本と学園長が居た。
「何か用か、エイゼ?」
「はい、おじいさま。これから昨日の現場の調査に向かうので、ダストル先生に呼びに行けと言われましたので」
「そうか。わかった、すぐに支度をする。ラクトくんもすまんな。わざわざ来てもらってしまって」
「いえ、お気になさらず」
「では、おじいさま。私達は部屋の外で待っておりますので」
そうエイゼが言った後、俺たちは学園長の部屋から退室した。
部屋の外で学園長のことを待っている間、俺とエイゼは雑談をしていた。
その中で、俺はエイゼに思ったことを聞いてみた。
「そういえばエイゼって、学園長にだけすごく丁寧に話すよね。俺のときは結構軽めなのに」
「それは、家が厳しいからなんだ。家って、三英雄の内の1人の家系な訳なんだよ。だから、 王国での立場もそれなりに上の方で、お父さんなんかはよく議員の人ととも話すの。だから、お父さんに目上の人との接し方を厳しく指導されたんだ。今は区別をつけて話せるけど、少し前まではみんなにこの話し方をしてたの。そうしたらおじいちゃんが、仲のいい人とはもっと楽な話し方の方が良いって言われて、こんな感じになったの。まあ、気にしないで」
「お、おう。わかった」
俺の何気ない質問について、エイゼは超高速で答えてくれた。
他にも気になることはあったので聞こうとしたら、エイゼの顔が暗くなっているのが分かった。
流石に触れてほしくない事もあるだろうし、やめておくか。
その後は一切の会話が無く、とても気まずい空気が続いた。
こういう時に限って、時間が進むのが遅く感じるのだろう。
俺は廊下にある壁掛け型の時計を見ながらそう思った。
そのまま時間が過ぎ、学園長が部屋から出てきた。
沈黙が始まってから学園長が出てくるまでは僅か5分だったが、俺には30分のように感じた。
出てきた学園長もこの空気を感じたのか、心配そうに話しかけてくる。
「エイゼ、何かあったのか?」
「いえ、なんでもありません」
「そうなのか?とてもそんな風には見えないが」
「そんなことよりも、皆さんが待っていますので、そろそろ行きますよ」
「そ、そうじゃな。では、行くとするか」
会話が終わり、2人は廊下を進んで行った。
もちろん、俺もその後ろをついて行った。
後ろを歩いていても、エイゼの暗い雰囲気と学園長が心配しているのが伝わってきた。
おそらく、俺が知らない何かがあったのだろう。
でも、俺はそれに触れていいのだろうか。
俺にどうにかできるようなことなのか。
不安はたくさんあるが、何よりも、俺はエイゼの暗い姿は見たくない。
できることからやっていくとするか。
俺たちは、そのまま先生達がいる正門へ向かった。
どうもMontyです。
今回も、最後まで読んでいただきありがとうございました。
誤字脱字、文章の矛盾点などありましたらご連絡ください。




