この世界と先生の真実
「これが俺が魔王に味方するきっかけとなった理由だ」
「それって、いくらなんでもひどすぎませんか!魔法によって抵抗できずに一方的に殺されるなんていくらなんでもないですよ」
魔王軍幹部のマーズの過去の話を聞いて、最初に声を上げたのはエイゼだった。
俺もエイゼの言ったとおりのことを思った。
先生の表情を覗いたところ、俺たちと同じ心情のようだった。
だが、マーズは俺たちの様子を見てさらにあきれていた。
「なぜお前らは話を聞いただけでそんなに簡単に考え方が変わるのだ。まあ、所詮は人間だからな」
「これは、ただあなたの話を聞いて本当に思っただけでそんなつもりはなかったんです」
「確かにお前とそこのガキはそのようだが、お前らの先生はどうかな?」
俺とエイゼはマーズにそう言われ、先生の方を見た。
先生の顔を見ると、先ほどよりもたくさんの汗が出ているのが分かった。
「俺もこいつらと同じように思ったのだが」
「あまり俺の目の前で嘘をつくんじゃねぇ。俺は嘘が嫌いなんだよ」
先生が返答した直後、マーズからすさまじい力を感じた。
彼をこれ以上怒らせると、自分たちの命が危険にさらされるのが分かった。
俺は彼をなだめようとしたが、なぜか声が出なかった。
いや、正確には声を出させてもらえなくなっていた。
そこはマーズと先生以外が話せないような空間になっていた。
「お前が今言ったのは、お前が思っていることの半分にしか過ぎない。俺は神の力によってお前の思っていること、考えていることが分かるがお前の生徒は分からないだろ。ちゃんと教えてやれよ、先生なんだから。この世界の真実についてを」
マーズが言っているこの世界の真実というのは、きっと今の俺たちが知るべきことではないのだろう。
だからこそ先生は何も言わなかった。
だが、マーズによって強制された先生はそれを言うほかなかった。
「わかった、話す。この世界の真実というのは、魔法を使えないものが一般的な奴隷よりもひどい扱いを受けているということだ」
先生から言われた真実に、俺とエイゼは驚きを隠せなかった。
奴隷がきつい肉体労働などを行わされているのは知っていたが、魔法を使えないというだけでそれよりもひどい扱いを受けているというのを知るのが初めてだったからである。
「聞いたかお前ら、悲しい事実だよな。でも、他にも悲しい事実はあるんだぜ。たとえば、お前らの先生が国の関係者で、魔法を使えない人間に対して一方的苦痛を与える行為に手を貸していることとか」
俺はこのとき、人の醜さについて知ることになった。
どうもMontyです。
今回も、最後まで読んでいただきありがとうございました。
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