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晴れた視界と女の子の涙目

闘牛が壁に衝突するとともに、部屋中に轟音が響く。


直後に、遅れて風と砂煙が視界を奪い去ってくる。


視覚も聴覚が同時に奪われ、さっきまで闘牛を認識できていたのに、急に何もできなくなってしまう。


さっきまで極限状態にあった戦場が、すべての動きが止まり停滞状態へと一瞬で変貌してしまう。


闘牛が壁にぶつかってから闘牛のほうで音がしていないので、あの闘牛も今は動けずにいるのだろう。


というか、煙によって視界が確保できないのならこの煙を晴らしてしまえばいいのではないか。


この部屋に最初に入るときにそうしたように。


近場にいたリーザに魔法を使ってもらおうとするが、さすがにあんなすごそうな魔法を使ったあとだと厳しいと考え、状況確認もかねてケルフィンの回復に当たっていたエイゼたちに声を掛ける。


「お~い!エイゼかリヤ、聞こえるか!」


この静かな空間に、俺の大きな声が響き渡る。


多少うるさくても聞こえそうな声だったが、一切返事がない。


そのまま十数秒が経ち、俺の周りで変化が起きる。


はっきりとは聞き取れはしなかったが、おそらくエイゼのものだと思われる声が聞こえた。


直後、俺の周囲の少しの範囲の煙が吹き飛ばされる。


急なことだったため驚いて目を瞑ってしまったが、すぐさま目を開けるとそこにはエイゼが立っていた。


この煙を晴らしたのはやはりエイゼだったらしく、右手に杖を構えいていた。


「ラクト君!」


俺と一瞬目が会うと、急いでこちらに駆け寄ってくる。


「大丈夫だった?!私が治療に集中しすぎたせいで、あの攻撃を受けちゃったんじゃないかと思って心配したんだよ!あんな攻撃正面から受けたら耐えられるわけないのに!」


エイゼは近寄ってくると、少し涙目になりながらしゃべり始めた。


普段はあんなに気が強そうで頼りになるのに、今はその影もない。


ただの、1人の女の子だった。


「俺は大丈夫だよ...」


軽く微笑みながらそう返してあげると、上がっていた肩が少し下がる。


どうやら、少し落ち着いたようだった。


「よ、よかったー...あっ!」


ここでようやく自分が泣いているのに気が付いたらしく、目に溜まっていた涙を両手でぬぐった。


「本当に心配したんだからね!でも、よかったよ...。そうだ!リーザちゃんは!2人で一緒にいたんでしょ!」


「だ、大丈夫、私は居るよ」


リーザを探しながら辺りを見回していたエイゼに、いきなり俺の後ろから声を掛けながら出てくる。


これに気づくと、すぐさまエイゼはリーザのことを抱きしめた。


そのときのエイゼの目には、さっきぬぐったばかりの涙がもう流れていた。









本当にお久しぶりです。

なかなかやる気が出ずに悩んでいましたが、ようやく次話が書けたので投稿させていただきます。

それと、このマジアカのほうを当分出したいと思います。

その理由に関しては、もう少し先のお話のあとがきで説明いたします。

それでは、また次の話でお会いしましょう。

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