闘牛の力とグッドポーズ
「ケルフィン、大丈夫か!」
あまりにもいきなりなことで全く理解できなかったが、あのケルフィンが一瞬で吹き飛ばされたとなるかなりの衝撃だったことだろう。
今の攻撃を受けたのがケルフィンだったから大きな怪我がなく済んだが、リーザなんかが受けていたら血だらけの大惨事になっていたことだろう。
それにしても、またヤツの攻撃が見えなかった。
これでは、倒すどころか俺たちがまともに攻撃することができずに負けてしまうだろう。
作戦として序盤は様子を伺うつもりでいたが、こう負いつめられてしまった以上多少無理にでも攻撃したい区必要がある。
しかし、ケルフィンの体のことも気になる。
ここは、俺が闘牛の注意を引くのが一番かもしれない。
「エイゼ、リヤ!ケルフィンの状態を確認してくれ。俺はこの闘牛の注意をひきつけるから」
俺は右手に片手剣を持ち走り出す。
「ラクト、私はどうすればいい?」
「リーザは俺のバックアップを。闘牛が攻撃をしてこようとしたら、すぐに妨害できるよう魔法の準備を頼む」
「了解」
俺がリーザに作戦を伝えているうちに、闘牛との距離が10メートルほどまで近づいていた。
そのとき、闘牛は今までとは違いいきなり走り出す。
闘牛は、俺を吹き飛ばそうとする勢いで突進をしてくる。
俺はすぐに立ち止まり、右手に構えていた片手剣を構えてどうにか攻撃を受け流そうと試みる。
つい数秒前に走り出したと思っていた闘牛は、俺が剣を構え終わったときには目の前に迫っていた。
刹那、突進してきた闘牛の角と、俺が構えていた剣がぶつかり合いすさまじい金属音が鳴り響く。
直後に手に物凄い衝撃が伝わってきて、バランスを一気に崩された。
同じ衝撃が伝わったはずなのに、闘牛の勢いは全く衰えることなくさらに突っ込んでくる。
どうにか直撃だけは避けようと無理やり体制を変えようとしたとき、剣を通して感じていた闘牛の重さが一気に抜けていった。
俺は、そのせいでさらにバランスを崩されて前に倒れた。
まあ、闘牛の一撃をまともに受けていたらもっと痛かっただろうけど。
俺は急に軽くなった要因であろうリーザのほうに首だけ向ける。
そこには、右手で持っていた杖を闘牛のほうに向け、左手でグッドポーズを作ってかっこつけていたリーザが立っていた。
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