天才の片鱗と廃れない心
身体中に穴が開いた二匹のトードは、少しの間固まっていた。
ネイルストーンのあまりにも早い攻撃により、穴が開いた事以外の影響が遅れてやってくる。
そこまで大きくない石とはいえ、あの数が一斉に打ち込まれたらそれなりの質量となってトードの身体を襲うため、無数の穴が開いた身体が後ろに時間差で吹き飛ぶ。
10メートルほど後ろに吹き飛んだ後に、空中で紫色の煙となって消えていく。
トードをこんな目に合わせた張本人であるエイゼは、その光景を見てそれが当たり前かのように何も驚く様子もなく見つめる。
逆に、特に何もしてない俺たちはその光景を見て驚かずにはいられなかった。
近接攻撃が効かない、水属性魔法も効かない、それに加えて大きな体躯を兼ね備えたトードを二匹同時に瞬殺したのだ。
そんな常人には到底できないことを当たり前かのようにやってのける。
それが彼女が『天才』と呼ばれる所以であり、俺たちはその『天才』の実力の片鱗を見せつけられたのだ。
この世界での有名な言葉の一つとしてこんなものがある。
『天才とは、常人に比べて何か一つでも卓越した能力を備えている者のことを言う』
ここでの卓越した能力とは、エイゼにとっての魔法操作技術のことを指す。
俺たちは魔法が使えるという他者とは違うものを持って生まれてきて、その魔法をさらに上手く使うために、もっと魔法に関するいろいろなことを学ぶためにこの学園にやってきたのだ。
それなのに、最初の時点で自分の理想に近いものが目の前にいる現実。
この先どれだけ努力しても決して埋めることのできない差。
こんな物を見せつけられたら、誰しも心が折れたり、激しく嫉妬したり、憎んだりするのも無理は無いと思う。
でも、俺はそれだけはしたく無いと思っている。
俺は頑張ればエイゼを抜かせる、全人類最強の魔法使いになれると信じている。
世間は、そんな奴に対して冷たく当たる。
俺も何度もそんな扱いを受けた。
でも、夢や希望を失った人間はそんな叶いまもしない夢を見ているやつより下だと俺は思う。
この世界、結局負けるのは最初に何か一つでも諦めたやつだ。
何か一つでも諦めれば、その後も何度も諦める事となるだろう。
でも、俺はそんなのには絶対なりたく無い。
だからこそ、勇気を持って一歩踏み出す。
すぐ目の前にいる天才、エイゼの元に。
どうもMontyです。
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