再発行
「ーーってのが、現魔王と元魔王との出会いだな。」
「へー、そうなんすか。」
あれから魔王のことは噂になって無かったけどユリ坊大丈夫かな?
「あのー、先輩。話が変わるんすけど。」
「何だ?」
俺が感傷に浸っていると、ヒカルが口を開いた。
「思ったんすけど、ここに来てから結構時間が経ってると思ってんすけど、未だに人来ないっすね。」
「お前は何を言っているんだ?今日は入学式だぞ?」
「へ?」
ヒカルの頭の中には?マークがたくさん出ているだろう。
この世界には体育館は無い。変わりに道場や闘技場がある。この学校には闘技場が全部で5つある。本日の入学式は第1闘技場で行われる。
俺は転生する度にこの学校に通っているが、なんども校長の長話を聞けるほど俺は意欲的にはなれない。だから俺は先に教室に行って時間を潰している。
「本当は教室には向かわずに入学式の会場に向かわなければならなかったんだ。」
「聞いて無いっすよ!何で教えてくれ無かったんすか!」
「聞かれなかったから。」
「ぐっ!!」
「それに普通、それくらい覚えないといけないだろうに。」
「ぐふっ!」
「でもまあ、あと少しで終わるから今更って感じだけどな!」
「ぐふうっっ!」
俺の言葉にヒカルはおかしな返事をする。
その後数分くらいして入学式が終わったのか続々とクラスの人が入って来た。
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「みんなおはよう。今日からこのクラスの担任になったキューピーだ。これから俺のことは軍曹とよべ。得意魔術系統は水系統だ。」
名前、マヨネーズかよ!っと思ったが、言わないでおこう。ヒカルは横で笑いを堪えて肩が震えている。
キューピーと名乗った先生は身長190くらいで丸刈り。強面でスーツの上からでもわかるガタイの良さ。そしてサングラスという何処のヤクザだよ!という格好だ。何故あの名前なのか謎だ。
「さて、これからお前たちは一年生と二年生の後半までで魔術についての基礎を学び、一年生の中盤から卒業まで応用を学ぶ。そして最高学年で固有魔術を創る。これがお前たちのこれからだ。」
「まずはこれから一年を共にする仲間たちに自己紹介だ。じゃあ、お前から。」
「は、はい!今日からこの学園に通うことになりました!レオ・リアム!得意魔術系統は火系統であります!軍曹!」
レオと名乗った子は赤髪で活発そうな男の子だ。
次々と自己紹介が過ぎてゆく中、自分はなんと紹介しようかなと考えていると、あっという間に自分の番が来ようとしていた。
「ヒカルです。得意魔術系統は火系統です。よろしくお願いします。」
「リリア・クラネルです。得意魔術系統は無属性の系統です。あと、治癒魔術が第2まで使えます。」
「だ、第2階級だと・・・。その年で?いや、しかし・・・分かった。」
この学校では何かあった時のために治癒魔術が使えるならそれを報告する義務がある。本当は特急まで使えるが、第1ですら信じてくれそうもなかったので第2階級くらいにした。しかし信じてくれたかな?
その後も自己紹介は暫く続いた。
「よし、今日は自己紹介だけで終わるか。明日から講義が始まるから、筆記用具忘れるなよ。じゃあ解散!」
「「「有難うございました。」」」
先生はそう言うとさっさと教室から出て行った。
「さて、と。ヒカルはこれからどうする?」
「何もすること無いっすよ。」
「んー。ギルドにでも行くか。ヒカルもくるか?」
カードの再発行も必要だからな。
「面白そうっす!行ってみるっす!」
俺たちは冒険者ギルドへむかった。
「すみません。カードの再発行をしたいんですが。」
「はい。カードをご提出ください。」
俺たちは冒険者ギルドに着くと、俺は再発行のカウンターへ、ヒカルは新規登録のカウンターへ向かった。
「どうぞ。」
俺は虹色のギルドカードを提出した。
「え?・・・お嬢ちゃん、これホントに貴女の?」
「そうですよ。」
「ち、ちょっと待っててね?」
そう言うと受付のお姉さんは奥の方へ入って行った。
今俺が渡した虹色のカード。これは最高ランクの証だ。
ギルドのランクは一般的に白、銅、銀、金の4つしか無いとされているが、実際はその上に虹色がある。
この域に達した者は皆、国を1人で消せるほどの力があると言われている。
虹色のギルドカードを持った冒険者がいる国は他の国から攻められにくいと言う。誰だってそうだ。国を1人で滅ぼす力がある者がいる国なんか狙わない。反撃が怖いからな。
暫くして受付のお姉さんが戻ってきた。その後ろには60過ぎのおじさんが付いている。
「こんにちはお嬢ちゃん。私はこのギルドのギルド長をしているイーサンという者だ。」
「どうも。リリアです。」
「このカードはお嬢ちゃんのと聞いたけど、本当かい?」
「本当ですけど。」
「二つ名は?」
ギルドカードの所有者には二つ名が付けられる。何故からはわからんが。
「百面相のウロボロス」
これは再発行する度に姿が変わるおれに付けられた二つ名だ。
「百面相のウロボロス・・・本当に居たとは。」
「それで?再発行して貰えないんですか?」
「あ、ああ。分かったよ。少しだけ待っていてくれ。」
おじさんはカウンターの奥へ行って直ぐに戻ってきた。
「はい。」
「ありがとう。」
「お嬢ちゃんはこの国にずっと居るのかい?」
「学園を卒業するまでは確実に居ます。でも、その後の事はまだ分かりません。」
ユリ坊の事も気になるからな。
「そうかい。分かったよ、ありがとう。」
そう言っておじさんはカウンターの奥へ入って行った。
「先輩、登録終わりました。」
ヒカルが白いカードを掲げながら戻ってきた。それを周りの冒険者が微笑ましそうに見ていた。
「どうする?今日は登録だけにする?筆記用具は?持ってる?」
「先輩はオカンすか?」
「何でだよ?失礼な。」
「筆記用具は大丈夫っす。それに今日は依頼も受けません。帰りましょう。」
「そうだな、帰ろうか。」
俺たちは赤くなり始めた空の下、学園への道を歩いて行った。